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下中弥三郎の研究誌『芳岳』について―ついでに水野葉舟のことも

 ある人物に関する専門の研究誌は多くあるが、たまにこのような人物専門の研究誌があったのかと思う雑誌もある。その中のひとつに教育者、平凡社の創業者として知られている下中弥三郎の研究誌『芳岳  やさぶろ探究雑誌』下中弥三郎伝刊行会がある。私の古本市で入手したのは、『芳岳』No.4である。以下にこの雑誌の写真をいくつか紹介したい。

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下中の伝記的な事実の紹介、下中に対する関係者の回想、関係者の分析、下中のテキストの紹介を通した思想の検討が中心となっている。国会図書館サーチで検索してみると、『芳岳  やさぶろ探究雑誌』は1961~1963年にかけて24号まで発行されていて国会図書館には15号以外は所蔵されており、マイクロフィルムで閲覧ができるようである。

 ところで、『芳岳』No.4にひとつ個人的に興味深い話があったので紹介したい。この号に秋田雨雀が「清純な理想主義」という文章を投稿しているが、この文章によると、作家・水野葉舟は児童教育に大きな関心を持っていたようだ。水野は、『遠野物語』の著者である柳田国男とこの本の元になった話を提供した佐々木喜善を引き合わせた人物として知られているが、心霊主義、方言研究、綴り方運動(注1)など多様な関心を持っていた。様々な領域で貴重な資料になっている『秋田雨雀日記』(未来社)にも度々水野は登場する。NDL ONLINEで水野の書誌情報を調べてみると、少年、少女、青年向けの雑誌に多く文章を投稿している。雑誌への投稿も児童教育への取り組みの一環であったのだろう。

(注1)水野葉舟と方言研究に関しては、以下の記事を参照。


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