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『郷土趣味』でなく『郷土と趣味』という雑誌があるらしい

 田中緑紅が発行していた雑誌『郷土趣味』は復刻版も出版されており、初期の民俗学雑誌の中では比較的知られていると思われる。しかしながら、似たような雑誌名で『郷土と趣味』という雑誌もあるが、こちらはあまり知られていない。この雑誌は、大阪の堺市にある郷土事報社から発行されていた民俗学・郷土研究の雑誌である。国会図書館サーチで確認すると、『郷土と趣味』は和泉時報社の発行していた『和泉』の後継雑誌であり、19号(1938年3月)から『郷土と趣味』という雑誌名になったようだ。『和泉』は1936年11月に発行が開始されたようである。『郷土と趣味』は全国の図書館にもほとんど所蔵されていないようで、私が調べたところ堺市立中央図書館など大阪の一部の図書館にしか所蔵が確認できなかった。めずらしい雑誌であるように思われるので、以下に写真を掲載したい。

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表紙や奥付からこの雑誌は高橋松南が主宰、高橋辰三郎が編集・発行していたことが分かる。両者は同一人物であろうか。私の手元に何冊かあるが、以下に目次を掲載したい。

第4年第1月号(通巻29号、1939年1月)

南宋寺と家康廟 鷲見桃逸 / 石津のよこね地域 蛸軟 / 百舌鳥精進について 辻尾法水 / 伊勢鰕のはなし 吉村直方 / 蛇祭 南要 / 神南邊道新師(一) 池永晃 / 河内の歌まくら(六) / 久世街道を行く 松本壮吉 / 正月の玩具 / 大阪の春の行事 / 俳句

第4年第6月号(通巻34号、1939年6月)

楠公精神の研究(一) 土橋眞吉 / 鍋冠日親の大説法 鷲見桃逸 / 金石文の泉南(四) 相澤正彦 / 府下の町村行脚 山田静波 / 堺の小西党余聞 池永晃 / 蝉の方言 南要 / 落合川の古戦場 泉朱婁迂人 / 大人形と涼み按摩 人魚洞

第5年第4月号(通巻43号、1940年4月)

楠公精神の研究(九) 土橋眞吉 / 大阪府下の織業史 中村重治 / 浪速の夢(一) 茅海漁人 / 露艦の大阪湾来航 南要 / 大和絵の名手冷泉為恭 池永晃 / 近畿郷土料理 泉朱婁仁 / 九艘小路と祥雲寺の松 鷲見桃逸 / 松の浜寺と大久保利通卿 西田七之助 / 梅史の句に就いて(五) 虚公

第5年第6月号(通巻45号、1940年6月)

楠公精神の研究(十) 土橋眞吉 / 和泉国と井 小谷方明 / 干珠満珠と飯匙堀の事 鷲見桃逸 / 露艦の大阪湾来航(下) 南要 / 花と哀史の吉野山(一) 山村静波 / 大和絵の名手冷泉為恭(二) 池永晃

第5年第7月号(通巻46号、1940年7月)

楠公精神の研究(十一) 土橋眞吉 / 聖武帝の偉業と大仏殿 山村静波 / 『技添の松』の行方? 鷲見桃逸 / 大和絵の名手冷泉為恭(三) 池永晃 / 梅史の句に就いて(六) 虚公 / わ行音の姿 南要 / 方言雑感 藤野春男

上記の目次から『郷土と趣味』は大阪を中心とした地域の民俗学、郷土史を主に取り扱った雑誌であることが分かるだろう。投稿者の中で私の聞いたことがあるのは、鷲見桃逸、小谷方明、人魚洞(川崎巨泉)くらいだろうか。他の投稿者の詳細も気になるところである。


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