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花について

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花についての記録です。
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花について #08 サンクコストと博打

花について #08 サンクコストと博打

今年は芍薬がうまく咲かない。花屋に行くのは2週間に1度のサイクルだし、よくここに書くように相手は生ものなので花との出会いはそこそこの博打感がある。でも5月下旬になっても好みの芍薬に出会えず、そのまま6月に入ってしまう年は珍しい。今年は、なぜか地域も知り合ったジャンルも全然違う知人たちがInstagramに芍薬の写真を一斉にアップしていて、それもことさらに芍薬を意識させる要因だった。季節的になんか出

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花について #07 ただそこに咲いている

花について #07 ただそこに咲いている

数年前の話。

その電話は月曜の夜にかかってきた。弟からだった。週末に京都出張があり実家に寄るつもりで伝えていたが、母が骨折をしたので迎えなどが難しくなったと言う。よく聞けば、けがは朝のことで、病院での検査や治療、自宅療養の準備と寝床に落ち着くまでのてんやわんやがようやく落ち着いた後らしかった。

家に着くと、玄関の隣の部屋に医療用ベッドが置かれ、簡易の病室ができていた。母は思ったより元気そうだっ

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花について #06 学校の花

花について #06 学校の花

少し前、友達が満開の桜の写真をSNSにアップしていた。東北時代の友達なので桜の満開が東京より1カ月ほど遅い。通っていた小学校の桜(見る人が見たらわかる)は昔と変わらずものすごく派手に咲いていて、当時の懐かしいことをいろいろ思い出した。風に落ちる花びらで校庭の土手がピンクになっていたこととか、葉桜の頃になると友達とたくさん集めた堅いさくらんぼのこととか。

大人になってから、花見に行こうと決めてどこ

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花について #05 地植えと切り花

花について #05 地植えと切り花

「エニシダが大きくなりましたよ」というLINEが実家からきた。添付された写真には文面の通り、庭で大きくなったエニシダが写っていた。元はといえば1年ほど前、ちょっとした入院の後(もうなんともない)で実家の部屋用にとホームセンターで買った鉢植えだった。東京に戻った後で母が地植えにしたらしい。比較的行儀よく咲いていた黄色い花は縦に元気よく伸び、ずいぶんワイルドな印象に変わっていた。「これにミモザとユーカ

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花について #04 選ぶ、選ばないの理由

花について #04 選ぶ、選ばないの理由

知らないうちに花にも好みができていた。意識したことがなかったから、それがいつ頃できたのかわからない。どれも好きになろう、嫌いになろうと決めた覚えなんてないのに、花屋に行くとその好みが無意識のうちにしっかり利いている。

うちには香りがキツいとか見た目が派手だとか言う人はいないので、普段は好きなだけ、好きな花を買うことができる。1回買うとだいたい2週間は保つ上に飽き性なので同じ花を続けて買うことは少

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花について #03 花屋と芍薬

花について #03 花屋と芍薬

これまでにいろんな所で花を買ってきた。大きいチェーン店、小さいチェーン店、駅構内の花の売店、都心も都心にあるおしゃれなものしかない個人店、商店街の花屋、農協の園芸コーナー、ホームセンター、バラしか売っていない妙に安い店、スーパーの花コーナー、種苗店、あれやこれや。そんな風にして買い続けていると、だんだん自分にとって買いやすい店がわかるようになる。「玉子がおいしいのはいい寿司屋」みたいに、ここを見れ

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花について #02 花束と贈り物

花について #02 花束と贈り物

花束をプレゼントにもらったらどう思うか。は、人によって意見がかなりわかれる気がする。

今の時代、男性が女性に喜ばれるプレゼントをすることはなかなか難しい。ちょっといい物をとジュエリーにすれば「好みに合わない」、「(本当に欲しい価格帯のものと比較して)中途半端だからいらない」と言われ、コスメにすれば「好みに合わない」、「使わない」と言われ、雑貨にすればまた「好みに合わない」、「置きたくない」と言わ

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花について #01 花を飾る

花について #01 花を飾る

昔はそれほど気に留めなかった花を、ある時期から飾るようになった。誰とも話さない暮らしは気楽で好きだが、それでもどこか疲れていたのかもしれない。そこそこ生きていると気に入らないこともあるし、ただただ腹が立つこともある。そういう時に花の記憶が入り込んできた。

実家で母が花を飾っている頃はあまり意識しなかった。振り返ると、花に関してはとても恵まれていた気がする。庭には梅(蝋梅から黄緑、紅白も全部あった

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