マガジンのカバー画像

テキストカラテ私論

27
サイバーパンクニンジャアクション小説「ニンジャスレイヤー」の構造・形式面について、素人なりに独自見解を述べます。また、「逆噴射文体」についても考えてみます。
運営しているクリエイター

#DHTPOST

ラブとかリスペクトとかカボチャとニシンのパイについて書け

ラブとかリスペクトとかカボチャとニシンのパイについて書け

はいどうもー! 早速だけど、みんなちゃんとつかんでる? って聞かれても大半のひとはつかんでる自信がないし、中には自分の作品を読んでもらったら「しょっぱなからつかんでないのでだめ」みたいなダメ出しをズバリくらったひともいるだろう。

でもね、俺は自信を持って断言するけど、コツさえ分かってれば作品の冒頭出だしの短い部分だけでちゃんと観客とか読者とかをバッチリつかむのは朝飯前になるし、ここが分かってるだ

もっとみる
今こそ名文を装備する時だ

今こそ名文を装備する時だ

ストーリーテリングとは、ある約束を受け手と交わすことだ。しっかり耳を傾けてくれるなら、驚きを与え、想像もつかないレベルと方向で人生の痛みや喜びをお見せする、という約束である。何より大事なのは、それをさりげなく、ごく自然にやってのけることで、観客がみずから発見したかのように仕向けなくてはならない。(中略)洞察は観客が注意を傾けたことで得られる報酬であり、巧みに設計されたストーリーはシーンにつぐシーン

もっとみる
展開に困ったら取り敢えず月を割れ

展開に困ったら取り敢えず月を割れ

はいどうもー。いやー、去年のパルプの盛り上がりはちょっとしたどころじゃない歴史的事件でしたね。言うまでもなく、第1回逆噴射小説大賞のことですよ。平成最後の逆噴射小説大賞にふさわしい盛り上がり。選考したダイハードテイルズの皆様も逆噴射先生も、そして応募した異能者の皆様、本当にお疲れ様でした。というか、急に1000人単位とかで大量発生した異能者が気軽に原稿を投げつけてる様子を見てて、審査する先生方がマ

もっとみる
シャード・オブ・マッポーカリプス(冬):ネオサイタマ・コン

シャード・オブ・マッポーカリプス(冬):ネオサイタマ・コン

 ネオサイタマ沿岸部に広大な面積を占めるコンベンションセンター「オオキイ・ゲンバ」。その敷地には、早朝にもかかわらず入場待ちの行列が形成されている。単純な直方体の建物であることを執拗に拒絶するトラペゾへドロンじみたメインホールへと歩を進めていたシキベの足が、突如止まった。そして、前方に見える待機列を半ば虚脱した状態で見つめた。直前までシキベに並んで進んでいたオレンジ色の髪の少女が振り返った。

もっとみる
「ふかふか」が必要だ

「ふかふか」が必要だ

(ヘッダー画像は「フカフカ」に紐づけられたイメージ画像です。深い意味はありません)

 暗く狭苦しい檻。赤い火明かりが鉄格子の隙間に昏く差し込む。檻の中に鎖に巻かれて囚われているのは、ソーだ。髭は長く伸び、衣服は綻んでいる。荒々しくも色あせたその外見はさながら年季の入った路上生活者。彼は一つ身じろぎして目を覚まし、辺りを見回してから語りだした。

「貴様の考えなら分かる。『Oh No! ソーが捕ま

もっとみる
【2018年エイプリルフール企画】 エミリー・ウィズ・アイアンドレス ~センパイポカリプス・ナウ!~ 第2048話

【2018年エイプリルフール企画】 エミリー・ウィズ・アイアンドレス ~センパイポカリプス・ナウ!~ 第2048話

 もう時間がない。アイアンドレスの敗北と私の孤独な死は目の前に迫っていた。今このコクピットにセンパイがいないことはもちろん悲しいけど、そのことは私の心に悲しみよりもずっと大きな安らぎをもたらしていた。これまで多くの、けれどかけがえのない時間をいっしょに過ごしたセンパイ……パートナーの私と手を重ねて共に運命重騎兵アイアンドレスを操縦しカイジュウとの絶望的な戦いに身をささげてきたオニヤシャ=センパイは

もっとみる
【ペケロッパ・カルト】 破 # 10、急

【ペケロッパ・カルト】 破 # 10、急

(承前)

# 10
「Wasshoi!」 

 何やらアルケミーと会話していたニンジャスレイヤーが突如として咆哮し、一瞬姿を消した。再び姿を現したニンジャスレイヤーは右手でアルケミーの顔面をわしづかみにし、その頭部をコンクリート柱に叩きつけていた。そしてニンジャスレイヤーの背に何本もの結晶の槍が突き刺さった。ヒロコの視界が露光過多になった。

 何もかもが白くなったヒロコの視界の中で、ニンジャス

もっとみる
【ペケロッパ・カルト】 破 # 7~9

【ペケロッパ・カルト】 破 # 7~9

(承前)

# 7
 生まれて初めて足を踏み入れるヤクザバーの店内は、想像していたよりもずっと清潔で、そして無機質だった。腹に響く重低音のビートに乗せたエンカの店内BGM。左手から奥にかけての壁際に並んだボックス席はすべて人数比1対2のヤクザとゲイシャで埋まっている。ミラーボールで照らされるフロアには金属ポール。

 店内に数歩足を踏み入れたところで、突然コトブキが立ち止まった。ヒロコはコトブキの

もっとみる
【ペケロッパ・カルト】 破 #4~6

【ペケロッパ・カルト】 破 #4~6

(承前)

# 4 
 先制アイサツを決めたニンジャスレイヤーの隣にコルヴェットが並び立ち、傾げた帽子の鍔の先端を右手でつまみ、アイサツした。「ドーモ。コルヴェットです」二人のニンジャは、新たにピザタキにエントリーしたロボットじみた外見の異様な二人のニンジャと対峙した。ペケロッパ・カルトの手の者であることは、状況のみならずあの外見からも明白だ。

 「ヒロコ=サン、こっちへ」コトブキはソネを小脇に

もっとみる
【ペケロッパ・カルト】 破 #1~3

【ペケロッパ・カルト】 破 #1~3

(承前)



# 1
 場末の薄汚い外観のピザ屋「ピザタキ」に連れてこられたことで、ヒロコの困惑はこの日の頂点に達した。

 もう4度目になる今朝、哀れなペケロッパ・カルト信者を「保護」しようと悪戦苦闘していたところで助太刀に現れたのは、あの変わった、綺麗な人だった。その人は、見た目からは想像もつかない腕力を発揮して、たちまちペケロッパ信者の手首を縛りあげた。その時は驚きよりも嬉しさがはるかに

もっとみる
【ペケロッパ・カルト】 序

【ペケロッパ・カルト】 序

 晴れ間を覗かせる早朝のネオサイタマ東部、オールド・カメ・ストリート。そのメインストリートは、ストリートの中央に公園を兼ねた幅広の緑地帯を備えた、ネオサイタマの典型的なマーケットストリートである。緑地帯を挟んで南北に伸びる細い二本の舗装路に新鮮な食材をメインとした露店が並び、多くの買い物客が行き交う。舗装路に面した店舗のいくつかは軽食堂で、通勤通学途中にそこで朝食を済ませる者も多い。

 緑地帯に

もっとみる
めんどくさいから、過去作の再掲で済ませたい

めんどくさいから、過去作の再掲で済ませたい

(承前)

はいどうもー。モンハンもそれなりにやったんで、そろそろ再始動します。前回は忍殺のテキストについて理屈っぽい話に終始しちゃったんで、今回は実践編。どうやって書くかのその先、どういうプラクティスしたら書けるようになるのかについて私見ですけど色々話していきたいと思います。

ところで先日行われた「ニンジャスレイヤー222」コン、以前よりも小説作品が増えてて喜ばしい限りです。だけどね、正直、全

もっとみる
我々はそろそろ、真剣に嘘松について考えるべきではないか

我々はそろそろ、真剣に嘘松について考えるべきではないか

文体とは、「作者の流儀、彼独特の抑揚、彼の語彙、ある文章に直面したとき、これはオースティンのものであって、ディケンズのものではないと、読者に叫ばせるような何ものか」のことであるーーウラジーミル・ナボコフ

はいどうもー。前任者解任とか色々あって間が空いちゃいましたが、今回も忍殺文体の構造や技巧なんかの面について解説です。忍殺や逆噴射文体の表面的な言葉遣いはマネできても、なんか本家のようなグルーヴに

もっとみる
ウォーカラウンド・ネオサイタマ・ソウルフウード ( 冬 ) : フライドチキン

ウォーカラウンド・ネオサイタマ・ソウルフウード ( 冬 ) : フライドチキン



「シマッテコーゼ! エーリアス=サン!」

 店主のアキモト=サンがキアイのこもったイタマエシャウトで二人だけのささやかな開店前ミーティングを締めくくった。アキモト=サンは清潔なジュー・ウェアと前掛けを着用し、頭には白い房と白い起毛の縁取りをあしらった赤いナイトキャップを被って既に臨戦態勢だ。老いたとはいえ背筋は綺麗に伸びている。俺はアキモト=サンと同様の服装に加え、長い純白の付け髭まで装着

もっとみる