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記事一覧

『#ThEDPS/Three Hundred Emotional Piece Sence_キミの落書き』

 言葉が欲しいと思う。紡げる人はすごい。あたしも書くけど、紡げているとは言えない。せいぜいSNSのつぶやきか、誰の目にも触れずに一定期間でクローゼットの奥にしまい込まれる日記、程度だ。紡げる人っていうのは、きっともっと他にいる。
 だからあたしは、大切な人に大切なことを伝えることすら、できていないだろう。自覚があるだけ、自惚れないですむからまだそこはマシだ。
 ただ誰かの目に触れた時に不意にプラス

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『T.h.E Daily P.S.ver.1.0_太陽が奪うキミ』

 どこであろうと関係ない。
 けど、下着はつけるし、ってことを考えるとその感覚を享受できる面積は下半身の方が広い。
 素肌のまま、毛布の下に潜り込んだ時の感覚。キミにも、これの真似はできない。けど、そんな毛布でもキミみたいに抱きしめることはできない。
 だから隣にいないという現実は、そんな毛布のせいで寂しく感じるし、潜り込んだ毛布は自分の体温でしか暖まらないから、朝まで必死で眠りに行くんだ。
 少

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色彩の権利{R/G/B/A:1.0.3}

{R/G/B/A:1.0.3}

 放課後部が、24日金曜日のクリスマスパーティ開催を決定したその翌日以降、その面々は午前中にexamのResult Review、昼からは24日の準備を押し進める日々が続いた。真燈は全体進行を仕切りつつ、明吏と奏慧が飾り付けの資材や食料などの手配班、都と更叉は手配班の準備した資材で飾り付けや小道具(?)の製作担当となり全体で準備を進めていった。時折、2年の部員であ

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色彩の権利{R/G/B/A:1.0.2}

{R/G/B/A:1.0.2}

 篠坂明吏と天崎奏慧は、中学2年に進級した時のクラス再編で初めて同じクラスになったことがきっかけで出会ったと言って差し支えないだろう。出席番号でソートされた席順で新学期が始まったのだが、当時の担任が天然なのか、特殊だったのか、はたまた馬鹿だったのかはわからないが新学期初日、担任の自己紹介の直後に「出席番号順に並ばれてると席の位置で名前覚えちゃって顔と名前一致させら

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色彩の権利{R/G/B/A:1.0.1}

{R/G/B/A:1.0.1}

「と、いうわけで」
「いやスルーできませんって。何ですかさっきの激辛顔面パイって」
「まあ冗談よ」
「ならノートに記録しないでください怖いなぁ」
「ん?顔面パイ?」
 先ほど到着したばかりの都が席について首を傾げる。
「都くん、気にしない。で、当日に向けての準備の打ち合わせなんだけど、奏慧、今日更叉ちゃんは?」
「来るって言ってたけど、さっき担任によばれてたからも

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色彩の権利{R/G/B/A:1.0.0}

{R/G/B/A:1.0.0}

 その日は、東京でも寒波の可能性が予報されていた。
 12月も下旬に差し掛かりつつある中での寒波の予報は、例年に比べれば少し早い。師走で天気も何かを急いでいるのだろうか。もしかするとホワイトクリスマスが訪れるかも知れない、と各局の天気予報は年末商船への演出を連日囃し立てていた。
 そんな中、とある学園に属する高等部は、冬休み前の考査最終日を迎えていた。横文字の好き

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色彩の権利 [-Characters-]

Male:篠坂 明吏 / しのさか あかり
Class:epsilon(1年) / 16歳 / 身長:170cm / 一人称:僕
主人公格の1人。
温厚で人当たりが良く友人関係は広いが、特に仲良い人間は絞られる性格。
基本所属は帰宅部だったが、天崎奏慧の誘いで放課後部に入部することになる。

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Female:天崎 奏慧 / あまさき かな

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[Synopsis]色彩の権利[あらすじ]

 
 それまでのなんら変哲もない日常が、突然の変化を起こすことは、人にはよく起こりうることだ。
 それが外部からの要因であれ、自分の中の価値観や気持ちなどの変化であれ、人はその偶然の衝動のようなものを、いずれかの形で受け止めて、変わり、気づき、成長していく。
 
 そこに超常現象や神が起こすような奇跡は必要ない。

 慌ただしく過ぎ去っていく時間、流されるような日常が当たり前になってしまったその世

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欠片の華-⌘3

 ゆっくりと。
 それは次第に洸の意識を、命を育む温かい何かの中に浸すように。
 ゆっくり、ゆっくりと。
 洸の意識は現実から夢との間に揺蕩い始める。
 ゆっくりと染み込むように始まる月息という精神現象は、寂しくて涙する子供を宥めるように、我が子を守るために抱きしめるように、洸の中の月息というその世界とでもいうべき精神世界は、まるで純度が極まった優しさそのものであるかのようにある種の意思を持って振

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欠片の華-⌘2

 その日最後の講義を終えた後の資料室での学習は、かやのから差し入れられたチョコレートの効果だろうか、集中力が単に増していただけか、あっという間に17時半ばを過ぎた。自宅までは30分ちょっとの徒歩と電車の道のりだ。切り上げて帰宅することにした。
 するとまた信号待ちとの戦いが始まる。毎度毎度、往復のそれが憂鬱で仕方ない。自宅の駅まで行って仕舞えば、もっと言えば電車に乗り込んでさえ仕舞えばあとは楽だ。

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欠片の華-⌘1

⌘1
 
 駅から大学に向かうまでの間、いくつかの信号を通ることになるのだが、洸はそれが嫌いだった。ただ黙って目的地に向かって歩いていれば何かを感じることは少ない。ただ進むだけという、集中すべき行動目的が明確で、それによって集中力は乱れることがないからだ。けれど、不意に襲ってくる信号待ちの瞬間は、その集中力を半ば強制的に休ませてくる。別に意識しなければいいだけなのだろうけれども、いつの日からか、彼

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蒼い月-どれだけ忘れてもこの時だけは持って行く-

蒼い月-どれだけ忘れてもこの時だけは持って行く-

 気が付くと、頭上の月が雲の隙間から顔を出していた。
 今日は曇りかと諦めたつもりだったのに、夜空のやつ、お茶目なんだから。
 想いに耽るようなことは数あれど、あたしのこれは、たった15年の人生の中でも目下、現時点最高難易度であり同じく最重要機密課題である。これは絶対にバレてはいけない。自分1人の部屋で考えて、うっかり日記にでも記してみろ。うっかりアイフォンの中にでも残してみろ。それは紙もしくはデ

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Nervous Fairy-32“陽登済々"

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 翌日の朝が来た。
 早めに起床して、結城からのお使いを準備する。自分の準備もして、制服に着替えて、バッグも持って階下に降りると、すでに玲子さんが朝食を準備してくれていた。しかも買ってもらった食器だ。にやけが止まらない。勇気にも見せようと写真を撮ってから早めに済ませる。
 面会時間の直前ぐらいにお父さんの車で病院まで送ってくれた。一旦帰ってからお仕事に行くらしい。車の

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Lifetime Recipe~ & landscape:Page01-4

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「…よし」
 キッチンカーのエンジンをかけ、調理器具に熱を入れて冷蔵庫から食材を出す。今日は鯖の味噌煮と、季節野菜のお吸い物、玄米ご飯、小鉢に豚肉と野菜の黒酢炒め。大皿にサラダを作る。温泉卵もあればよかったな。
 全体的な分量は平均的に少なめ。品数を多く取るメニューにした。そんなに量を食べるメンバーでもなさそうだし。あとお吸い物は出汁を強く感じるくらいに塩分控えめの薄味。
 炊

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