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#57 『バランス感覚』の誤解

2024年4月某日

ベンチャー企業の方と名刺交換などすると、肩書きの欄にカタカナが書いてあるケースもしばしばあり、どの程度の職位の方なのか、打ち合わせ中にコッソリとググっていたりする。着座直後、まだ会議が始まってもいないのに、なにやらパソコンをカタカタしている人物がいたら、それは筆者である。

さて、組織の形態は様々に進化している。筆者の周辺では、まだまだ「部署」ごとに組織を分けた「機能別組織」を採用している企業が多い印象だが、「○○事業部」といった、事業ベースで組織分化する「事業部制組織」もチラチラ見かけるようになった。ただし、未だに「マトリクス型組織」や「ティール組織」などを、本当の意味で実装している企業とのご縁はない。

比較的前衛的な企業文化を持つ会社ほど、新しい組織形態も採用している印象だが、実際、そのような企業の「中間管理職」的な仕事いうのは、伝統的企業のそれとは異なるものなのだろうか。今をときめくスタートアップ企業の「ミドルマネージャー」みたいな役職の人が、週末の居酒屋でキンミヤホッピー片手にくだをまいているイメージはない。

「中間管理職」にしろ「ミドルマネージャー」にしろ、役割として「成果管理と集団維持」の双方を担うことが期待される。そして、その能力を表現するキーワードとして、しばしば「バランス感覚」という言葉が使用される。はて、「バランス感覚」とはなんだろうか。おそらく、一般的な組織における解釈としては、「①成果を牽引すること」「②関係を円滑化すること」を高次元でバランスさせることが理想とされるのだろう。しかし、実際の現場においては①と②とは全然異なることが、「バランス」と表現されているケースもありそうだ。

例えば、上司・同僚・部下とあたりさわりないコミュニケーションに時間を使い、「嫌われない」代わりに「何も生まれない」状況で時間を過ごすようなケースがある。これは、「バランス」とは言わない。やたらとお菓子を配ればなんとかなると思っている人は危険である。この場合、長期的課題への対応が手付かずのまま、時間の経過とともに、「うまくいかない」という状況の色が濃くなり、メンバーの不満が増していく。そして、その不満に一時的に対応するために「より高級なお菓子」を処方するのだが、最終的に「不満」は「お菓子」の効能を上回り、どこかでうまくいかなくなる。

要するに、「バランス感覚」という言葉は、「"成果"と"組織基盤"」などの「因果関係」にあるものをバランスよく育むことや、「"短期的成果"と"長期的成果"」など、「緊急度と重要度」の取捨選択をバランスよく行うことにほかならないともいえよう。漫然と火消しに回ることは、バランスのそれとは違う話なのである。

意味ある2要素があって初めて「バランス感覚」は成立するのでしょう。
ほなら。

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