#74 『バカヤロー、コノヤロー。』
2024年10月某日
とある地方中核都市で、施設の再整備に関するプロジェクトに関わることになった。そのため、最近は、人口30万人ほどの都市を定期的に訪問している。駅前から広がる商店街・繁華街は世の地方都市らしく、ほどほどに盛り上がっており、昼から夜にかけて賑わいを増す。「酒と肴」の暖簾に惹かれて道草を食いたくなることもしばしばである。嗚呼、仕事をしなければ。
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さて、先日、目的の施設の周辺環境を把握しようと、少し街の中を歩いていたときに、不思議な出来事に直面した。とある、ショッピングモールの外周を歩いていると、モールの裏側、つまりは清掃車や搬入車が出入りするような「裏口」と公道が交差するような場所があった。ちょうどそのとき、「○○市」と表示のある清掃車が公道からやってきて、歩道を乗り越えて、モールの搬入口に入っていった。筆者はちょうど、歩道を歩いていたため、清掃車が入っていくタイミングでは、少し立ち止まって、車の移動が完了するのを待っていた。
ふたたび歩き出すと、筆者の進路と反対側からこちら側に体が向いている女性がいた。おそらくシニア世代で、自転車にのっている。前カゴが「子供がのれるイス仕様」になっていることから、お孫さんの世話にもご活躍なのだろう。さて、彼女も清掃車が移動するに際して、筆者同様に歩道で少し立ち止まっていたと思われるのだが、なかなか進み出さない(自転車を漕ぎ出さない)。顔は、清掃車の方向を向いている。不思議に思いながらも、彼女が立っている地点を追い越さんとするその時、こんな声が聞こえた。「待たせんじゃねーよ、バカヤロー、コノヤロー」と。
…
もちろん、その女性も大きな声で、清掃車に対して威嚇するように発していたわけではなく、「ひとりごと」のレベルであるに過ぎないのだが、筆者にとっては、色々と考えさせられる一幕となった。きっとご自宅では、お孫さんとも親しくふれあい、仲睦まじい「おばあちゃん」であるだろうし、それなりにお年を召した淑女である方が、「バカヤロー、コノヤロー」は、ワードチョイスがおかしい。筆者としては「あらやだ、迷惑しちゃうわね。マッタク、ワタクシ、憤慨しちゃうわ。」とかのほうがしっくりくる。そういう問題なのである。それと、地域の交通政策にも一定関心がある筆者からは、「自転車は原則として車道を走るもの」ということも付言しておきたい。
地域社会というのは多様である。ほんとうに多様である。そして、行政サービスなどは特に、「ターゲットとする顧客」などはおらず、あらゆる住民がカスタマーになるという、なかなかに大変な仕事なのである。ゆえに、地域政策や選挙など、「民意を反映させる」といった仕事は難しいのである。足元、「地域活性化」がこれまで以上に盛り上がりを見せているが、「ローカルスタートアップ」とか「マルシェ」みたいなものはごく一部で、多くの政策領域は、地味でキツいテーマや議論を、コツコツ調整していくこととなる。公務員のみなさんありがとうございます。
そんなわけで、日常の一幕から住民の多様性を感じ、パブリック・サービスの難しさの本質に触れたような気がした。みなさん、上品にいきましょう。
ほなら。
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