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エッセイ

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実体験や、日々の気づき。思ったことなど。
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2023年5月の記事一覧

「てつと」と「キネ」。

「てつと」と「キネ」。

実は、おれは名前を2つ持っている。

一つは本名である「てつと」。
もう一つが「キネ」だ。

何もふざけている訳ではない。
本当の話なのだ。

うちの「望月家」には、昔から家族ぐるみで仲良くしている「藤井家」という一家がいる。
元々住んでいた家が近所だったことが、きっかけで付き合いが始まった。

趣味や空気感が似ていたのと、何よりお互い同じような年頃の子供が3人ずついたことで、もうかれこれ30年以

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大人のキレ方。

大人のキレ方。

おれはニーマルニーマル年、いやコロナで一年延期になったのでニーマルニーイチ年に「TOKYO」で開催された某国際的スポーツ大会のスタッフとして一週間ほどアルバイトをした。
そして、そこで「リさん」というおじさんと出会った。

このエッセイは彼に向けた感謝の手紙的な気持ちで書いた。
願わくば、おれがリさんに教えてもらった「大人のキレ方」が誰かの役に立てば嬉しいと思う。

2020年4月7日、それは日本

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M-1に出て、「趣味」について考えたこと。

M-1に出て、「趣味」について考えたこと。

25歳のとき、一度だけ軽いテンションでM-1グランプリに出たことがある。

高校の先輩にたまたまお笑い芸人の「しょうへいさん」という先輩がいたので、その人に声を掛けて即席のコンビを組んだ。
しょうへいさんは当時『クロマンボウ』という漫才コンビを組んでいたが、実はM-1は別の人と別のコンビを組んでエントリーさえすれば、その大会に同じ人が何度出ても良いルールになっているのだ。

M-1に出ようと思った

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四月の井の頭線の住宅街の戦場のメリークリスマス。

四月の井の頭線の住宅街の戦場のメリークリスマス。

2023年3月28日、坂本龍一さんが亡くなった。
享年71歳だった。

はじめに言っておくが、おれは決して坂本龍一さんのファンではないと思う。
有名なものを除き、最近までおれは彼の作った音楽をほとんど知らなかったからだ。

おれにとって坂本龍一さんは、ほとんど「ヨノイ大尉」だった。
“ヨノイ”は大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』の登場人物で、この役を演じたのが坂本龍一さんだった。

この映画の

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西荻窪のボロアパートの思い出。

西荻窪のボロアパートの思い出。

関東にいた10年間で4、5回引っ越しをしたが、最後に3年ほど住んだのが西荻窪だった。
会社員を辞めてお金がなかったので、家賃の安いボロアパートを選んだ。

売れないマンガ家が執筆をするのには十分な部屋だと思った。

引っ越しが完了した日、コンビニに行く為部屋を出ると、隣の部屋のおじさんがバイクを洗っていた。
目が合ってしまったので、おれは形式的に軽く会釈をした。

「あ、引っ越して来た人?」
会釈

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体育寮の「解散掃」。

体育寮の「解散掃」。

地元札幌の高校を卒業したおれは、関東の大学へ進学した。
小学校からやっていたアイスホッケーを続ける為だ。

初めて実家を出て住んだのは、進学先の大学の「体育寮」だった。
築40年のボロボロの建物だった。

体育寮には、アイスホッケー部以外の体育会の部活も入っている。

「レスリング部」、「ボクシング部」、「柔道部」などゴツめの部活がたくさんいた。
寮の風呂に行くとこいつらの巨大な背中とお尻がたくさ

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「日曜日の夜」が好きだった。

「日曜日の夜」が好きだった。

「日曜日の夜」はお父さんとふたりでお風呂に入る、というのが子供の頃の何となくの決まり事だった。

日曜日は、お父さんの仕事が唯一休みだったのだ。

当時、『笑点』、『まる子ちゃん』、『サザエさん』の後は、19時から『こち亀』が放送されてた。
それが2000年代前半の日曜日の夜の風景だ。

おれはサザエさんまで観れば満足だったのだが、こち亀はお父さんの週末の楽しみの一つであった。
EDの『葛飾ラプソ

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書くことで点が線になる。

書くことで点が線になる。

“読む”ことで点が線になる、と思う。

人はそれぞれ、その人だけの考え、感じ方、体験、哲学、物事の見方、感情などをいくつも持っている。
おれも多くの人と同じように、世界の大小あらゆることに対し、「自分の考え」みたいなものを持っている。

これら一つ一つのことを、「一つの点」だとする。

22歳の頃、おれは鬱になった。
休日は友達と遊ぶことも出来なくなり独りになった。

その頃、おれは読書をし始めた

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