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小説探訪記12:歴史小説をもっと読む

 名刺代わりのSF小説10選に関する解説記事をやっと書き終えた。今後も、歴史・時代小説部門や幻想小説部門というようにシリーズ化していくつもりだ。とはいえ、その前に一息つくつもりで、今回は小説に関連する記事を雑多に書いてみる。

歴史小説・時代小説をもっと読む

 日本人作家の歴史小説や時代物をあまり読んだことがない。2023年1月19日、千早茜『しろがねの葉』と小川哲『地図と拳』が直木賞を同時に獲る運びとなった。前者は戦国時代末期から江戸時代初期の石見銀山を少女の視点から描いており、後者は日清戦争直後から太平洋戦争後(~1955)までの満州を『百年の孤独』のような群像劇として綿密に描写している。

第169回直木賞候補5作品。受賞作は赤枠

 どちらも歴史物に近い小説なのだが、私は両作品をまだ読んでいない。(これから読むことになる。)歴史小説・時代小説は伝統がある分、数も多く、名作を集めて読むだけでも一苦労である。吉川英治や司馬遼太郎、池波正太郎だけでなく、山田風太郎、山本周五郎、子母澤寛、陳舜臣、北方健三、塩野七生も読まねばならない。(読んでおけばよかった。)

 最近では、戦国武将や英雄、宗教者を扱った歴史小説だけでなく、音楽や絵画を題材にした歴史小説も出てきている。町田康『告白』は「河内十人斬り」という1893年の事件と事件の記憶を踊りとして継承した河内音頭に取材している。また、原田マハは、自身もキュレーターとして勤務してきた経歴から、バーナード・リーチをモデルとした『リーチ先生』、ゴッホの人生を題材にした『たゆたえども沈まず』といった作品を執筆した。

 純文学やミステリ出身の作家も歴史小説を書いていることが多い。辻邦夫や井上靖、松本清張、吉村昭、宮部みゆき、遠藤周作の『沈黙』や『侍』、井上ひさし『四千万歩の男』などだ。決して歴史小説家だけが歴史小説を書くわけではない。楽しくもあり(量が多くなって)苦しくもなる部分だ。

 評伝文学を含めれば、さらに広がっていくことだろう。たとえば、大岡昇平や武田泰淳、福永武彦、白洲正子はそういった評伝文学の名手である。とはいえ、ここまで読んでいく余力は残っていないかと思われる。

海外作家の歴史小説

 海外作家の歴史小説は、個人的によく分かっていない部分が多い。歴史に関するノンフィクション作家は多く存在しているが、小説家になると限られてくるのではないかと思われる。普通の小説家のキャリアの一部として歴史小説が書かれるというのが通例なのかもしれない。そもそも歴史小説というジャンル分け自体が存在しているのだろうか?[要検証]

 一応、歴史小説に近いものを挙げることはできそうだ。トーマス・マン『ワイマルのロッテ』、オルハン・パムク『わたしの名はあか』、莫言『白檀びゃくだんの刑』、ローラン・ビネ『HHhH』、バルガス・リョサ『楽園への道』などがそうだろうか。各作品のあらすじを説明するには余白が足りないので、説明は控えるが、どの作品も面白いのは確かだ。

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