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最近注目している本・3選

※※ヘッド画像は ききどん さんより

 1か月程度、記事を書いてこなかった。しかし、読書は続けていた。1か月間読書に専念してきた中で、読んでおくと役に立ちそうな本を見つけたので、3冊紹介しておきたい。

アレックス・ペントランド『ソーシャル物理学「良いアイディアはいかに広がるか」の新しい科学』

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 この本(以下、『ソーシャル物理学』とする。)を好む・好まなざるにかかわらず、『ソーシャル物理学』は2020年以降の必読書になるだろうと確信している。この本は、「アイディアや情報がSNSや組織の中でいかに流れていくのか?」をビッグデータ解析により論じた書であり、情報収集の方法を問う啓発書としても、組織論についてのビジネス書としても、社会問題を考える上での教養書としても重要になるだろうと思っているからだ。

 私もこの分野に関しては門外漢であるが、『ソーシャル物理学』は重点的に扱いたい。何個か記事を用意したいと思っているほどだ。ちなみに、この記事では単行本の表紙を張り付けているが、文庫版(草思社文庫)も存在する。文庫版の方が軽く、読みやすいだろう。

ジェイコブ・ソール『帳簿の世界史』

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「帳簿がいかに歴史(西洋史)を動かしてきたか」を論じた書。ヴェネツィアやオランダの繁栄も、フランス革命も、その裏では会計が重要な役を演じていたということを指摘する。読んでいく上で、簿記・会計学の知識は不要であるが、高校世界史程度の西洋史を身に着けているとスムーズに読めるのではないかと思う。

 ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』をメタ的に読んでいく上でも、本書は役に立つであろう。人文系の学問に取り組む学生には、学術書ではないからと侮らず、ぜひ読んでいただきたい。

ジリアン・テッド『サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠』

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 サイロ・エフェクトというのは、いわゆる「タコツボ化現象」のことである。「タコツボ化」問題を、欧米ではサイロに喩えるらしい。サイロというのは、農産物や家畜の飼料を貯蔵しておくための塔のことである。北海道などで、牧場の牛舎などに併設されている銀色の塔を見たことはないだろうか。あれがサイロである。ともあれ、サイロ・エフェクトというのは、欧米流に「縦割り組織の機能不全問題」を言い表したものである。

 本書では、文化人類学の視点から、この「タコツボ化」問題について考察している。組織の文化、その特徴、組織運営の構造を明らかにしたうえで、タコツボ化の原因を探っていくのだ。

 また、本書ではSONYの事例も登場する。社長がいかに社内の交流を促そうとしても、うまくいかなかった旨が書かれているのだ。特に、社長が社員に対して他の部署と交流するように命じたときに、一応は了承するものの、実行に移されることはなかったという話は面白かった。と同時に、日本人の組織の湿っぽいリアルを見せられているようで、耳が痛い部分もある。

 組織論と教養書、それぞれの視点から読み込んでみるべき書である。

まとめ

 この3冊は、最近出版されたものであるものの、興味深い本であった。また、会計や組織の機能不全というのは、ビジネスに限った問題ではない。政治を考えていく上でも重要な視点となるだろう。その点から、この3冊を取り上げることにした。

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