見出し画像

【コンパスヒモ男のヒモ的奉仕ライフ】ヒモ男のラブラブラブホテル

〈あらすじ〉
東京で"自立したヒモ人生"を謳歌するコンパスヒモがつむぐ男と女の数々の物語。
欲望を肥大化させてゆく女たちがのさばる平和な世の中で、一体ヒモ男は何を求められどこへ導かれてゆくのか──。
各話読み切りとしてもお楽しみいただけます。
(約72,000字)

『コンパスヒモのヒモ的奉仕ライフ』

第1話「ヒモ男のラブラブラブホテル」

 俺はコンパスヒモ。今日も欲求不満な有閑マダムたちを相手に、自慢のテクにさらに磨きをかけるぜ。
 エイ子の運転する赤いアウディでいつものホテルにやって来たぜ。

「今日も良かったわ。2時間てあっという間ね」

 俺はエイ子よがってるときに、必死になってあくびをこらえてたんだぜ。でもそんなことはおくびにも出さず、

「そうだね」

と優しく微笑んで、たっぷりタメを作ってからキスをすると、たんまりチップを弾んでくれるんだぜ。
 車に乗ってホテルから出るときに、1台の車が駐車場に入って来たぜ。

「女が運転してるわ」

 乗っているヤツらの顔はよく見えなかったが、男は俺と似たような立場かもしれねえぜ。

 ビイ子の運転する白いレクサスでいつものホテルにやって来たぜ。帰りに駐車場ですれ違った車は、シルエットしか見えなかったが、また女が運転してたぜ。同業者が増えてるのかと不安になったぜ。

 シイ子の運転する黒いベンツでいつものホテルにやって来たぜ。2度あることは3度あるっていうから、また女の運転する車が入って来るんじゃないかと待ち受けてたら、やはり来たぜ。今日はよく目をこらして、助手席に乗っているヤツの顔を見たぜ。

「あれ俺じゃん!」

 そう叫んだ途端、俺はホテルのベッドの上に寝かされて、女王様姿のエイ子、ビイ子、シイ子に囲まれてるぜ。パンツ一丁で手錠と足枷で身動きが取れない上に、猿ぐつわをかまされて、声が出せねえぜ。

「起きたわよ」

「いい気味ね」

「おまえはこれから、何股もかけてた罰を受けるんだよ」

 シイ子はそう言って、俺に黒いアイマスクを被せてきたぜ。共通の敵ができると、女たちは結託するってことが分かったぜ。

「ほら、謝るんだよ!」

 エイ子の声と同時に、腹にムチが飛んで来たぜ。

「おまえも痛みを味わえ」

 ビイ子がそう言い終わると、胸のあたりにロウソクが垂れてきたぜ。女たちはゲラゲラ笑いながら、言葉ではとうてい言い表せない卑猥なことをして俺の体をおもちゃのようにもてあそんでから、ワインを飲み始めたようだぜ。

「楽しいわ」

「たまにはこういうのもいいわね」

「いつもより早く酔えそうよ」

 俺そっちのけで宴が始まったぜ。これは放置プレイかもしれねえぜ。
 30分ばかりも女たちのくだらねえ話を聞かされたあとに、酔いで舌の回らないシイ子の声が耳元で囁いたぜ。

「おい、犬。おまえなんか首にヒモを巻きつけて、ホテルの周りをぐるぐる回ってればいいんだよ」

 そう言っている間に、俺の首にはヒモが取り付けられ、ときどき尻をムチで打たれながら、四つん這いで歩かされて部屋を出たぜ。カツカツと3人分のピンヒールの音が廊下に響くぜ。飼い主1人に犬3匹はときどきあるが、1匹に3人はなかなかお目にかかれねえぜ。

「ほら、出ろ」

 風が気持ちいいぜ。

「歩け! ほえろ!」

 首のヒモを引かれながらホテルの周りを這い回り、命令通りにすると、女たちはこれ以上にないくらい楽しそうに笑うぜ。こういう悦ばせ方もあるなんて目からウロコだぜ。自分のM気質に気づいたってのは、ここだけのナイショだぜ。

(了)

第2話「ヒモ男の帰省」
第3話「ヒモ男の災難」
第4話「ヒモ男の温泉旅行」
第5話「ヒモ男とティーン姉妹」
第6話「ヒモ男と海水浴」
第7話「ヒモ男とコインランドリー」
第8話「ヒモ男、役者デビュー?」
第9話「ヒモ男と歌うたい」
第10話「拝啓、ヒモ男様」
第11話「ヒモ男のとある1日」
第12話「ヒモ男パーティー」
第13話「ヒモ男、寝取られる!?」
第14話「ヒモ男の幕開け」
第15話「ヒモ男トライアングル」
第16話「ヒモ男とツワモノ親子」
第17話「ヒモ男の帰省、秋」
第18話「ジゴ郎の試練」
最終話「さすらいのヒモ男」前編
   「さすらいのヒモ男」後編


この記事が参加している募集

眠れない夜に

ほろ酔い文学

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?