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ひらのゆき
2022年4月27日 08:42
前回はこちら*****ロボさんは、他愛もない会話をしても「そうなんですね」としか言わない。アドバイスも無いし、感想も言わない。最初はつまんないな、と思ったけど、だんだん、そのジャッジされない聞き方が心地よくなってきた。わたしはギターを弾くのが好きだけど、これまで人前で弾いたことがない。家族にだって聞かせていない。だけど、その日はなんだかできる気がした。「ロボさん、ちょっといい?」
2022年4月25日 22:51
前回はこちら*****私が赤木さん家のロボットのパイロットになって早ひと月。赤木さんは4人家族。ご両親は仕事で忙しく、高校生の息子さんは部活で毎日遅くまで頑張っています。中学生の娘さんは、昼間こっそり帰宅して、部屋から出てこない日もあります。私はそんな家族に代わり、ロボットとして日夜、家事のアレコレをしています。このお宅では「ロボさん」と呼ばれて頼りにされているのです。ロボット
2022年4月24日 23:56
ここはロボット会社です。家庭用ロボットを作っています。近年、各家庭に1台はロボットがいて、家事をしたり、子供や老人の見守り役として家にいます。人型をしていて、重たい荷物を運ぶとか、おじいちゃんをお風呂に入れるとか、子供の宿題をみるとか、大方のことはできます。会話もできるので、家族に頼むように話しかければ動いてくれます。弊社のロボットはリーズナブルな価格帯なので、一般家庭に人気です。難し
2022年4月23日 17:46
ここは「記念日銀行」。ただの銀行ではない。預けるのは「記念日」だ。記念日を預けることを「預日」と呼ぶ。預日すると、預けた記念日は普通の日になり、あとで記念日として引き出すことができる。誰でも預けられるわけではない。ごくごく一部の幸運な人間だけ。ある街の、ある路地の占い師の元で、ある占い結果が出た者だけが、この銀行にたどり着く。預日をすると、記念日を共有する全員の記憶から、記念日が消され
2022年4月22日 09:14
ある街に天才彫刻師がいた。彼が彫る作品は匂いがするのだ。ばななを彫れば、ばななの匂い。鹿を彫れば、鹿の匂い。彫った彫刻が実物に近いほど、その匂いは強くなる。写真を見せて彫刻をお願いすれば、そっくりに彫ってくれ、なつかしい匂いも蘇る。思い出の匂いを残しておきたい人々が、連日写真を手に彼の元へ訪れた。とある富豪は、南国で食べた名も知らない果実を。とある女性は、愛する人からもらったバラを。
2022年4月20日 21:01
前編はこちらです。*****「ねえ、もっと話してちょうだいよ。今日何があったの?」「ええっと、今日は午前中、部屋の掃除をしていたら掃除機が壊れちゃって…」A子が切りの良いところまで話すと、掃除機は良いタイミングで言葉を吸い込む。そして興味深そうに相槌をうつ。A子はだんだん、話をするのが楽しくなってきた。そうだ、普段の会話といえば、職場での当たり障りない話か、コンビニやスーパーの店員
2022年4月20日 00:03
A子は都会で働く女性。毎日、朝から晩まで、決して高くはない給料で頑張って働いている。都会にでてきて三年目。一人暮らしにも慣れてきたが、仕事が忙しくて友人も恋人もできず、ちょっぴりさみしい気持ちで暮らしていた。ある日の日曜日。1Kの部屋を掃除していると、掃除機がうんともすんとも言わなくなった。最新型の掃除機を買うからあげるわよ、なんて実家の母からもらってきた古いタイプの掃除機。大きなため息をつき