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『銀河鉄道の父』(門井慶喜 著)

※ネタバレします。

【内容】
童話作家の宮沢賢治を、父親の視点から描いた作品。

第158回直木賞受賞作。


【感想】
受賞時から気になっていたのですが、やっと読んでみることにしました。 

ここからはネタバレとか、それ言っちゃうの野暮なのでは的な話も織り交ぜて書きていこうかと思います。

そもそもこのタイトル、キャッチーでありながら今まで考えもしなかったタイトルで、記憶に残る良いタイトルだなあと…
小学校の教科書にも載っている『銀河鉄道の夜』をもじって、その父からの視点の小説というのが伝わるし、ちょっと今までになかった視点からの小説であるという予感がして、読んでみたくなる。
『銀河鉄道』という賢治の作り出した言葉の中でも最もキャッチーで強い言葉と、強引に『父』を結びつけることで生じる違和感と語呂の良さ。

多分こんな感じの小説になるのだろうなあと思ったイメージから逸脱せず、良い意味できっちりと書き上げられた小説でした。

内向的でモラトリアム傾向にある子供を叱咤激励しながら、根底では甘やかすというある種現代的な父親像を描くことで、現代の人間に響くようなチューニングされているとも取れる作風とかも、今の読者に響く作りになっていると感じました。

どんな経緯で書かれたのかと思いWikipediaを見てみたら、息子のために買った宮沢賢治の学習マンガを見て書いてみようと思ったのだそうてす。
自分の子供のために買った本を見て、書きたいと思った父親からの視点で、主人公を書こうという、それはそれで面白いエピソードですね。

そういう面を含めて、歳取ってしか書けないような、書きたいものが溜まってきて、書いているという感じが伝わってきました。

多分、その子ども向けの本には、賢治の国柱会や法華経への信仰やそれに伴う奇行などは書かれていなかったはずで、著者はそこら辺に今、賢治を描くことの意味や意義を見出したのではないかと思ったりしました。
国柱会に入信した後、地元で後ろ指さされていたりしたエピソードもなども、妙に生々しく感じられるエピソードでした。
不勉強で知らなかったのですが、国柱会のことをスマホで調べてみたら、また国柱会自体存在するらしいことがわかりました。現在も(?)国柱会のホームページが存在して、その中でも賢治に関する項目が大きくあって、国柱会の宣伝塔となっていることを知りました。

あと、とにかくわかりやすく、読みやすくしようと配慮されているとも感じました。
凄く何度も何度も過去の記述を振り返って説明するとか、より平易な表現にしようとしていて、途中間隔が空いてしまっても、問題なく読めるような工夫がなされていて、普段本を読まない人にも取っ付きやすい本だなあと思いました。

https://kodanshabunko.com/gingatetsudounochichi/

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