質問115:全日本レベルの相手に安定した返球ができない
回答
▶「テイクバックを早くしよう」とするから遅れる
速さについていけなくなるのは、ボールに集中し始めるのが遅いからです。
ボールが近づいてきてから、集中しようとしています。
その前は「何をしているか」というと、ご承知のとおりです。
これが、「遅れる原因」になっています。
▶最長時間を「すべて」費やす
相手のインパクトから、いえもっと、自分が打った直後からボールに集中し始めると、「テイクバックを早く準備する」とは意識しなくても、遅れなくなります。
いえ意識しないから、遅れなくなるのです。
もちろん、自分が対応できる速度と距離の閾値を超えれば、どうしても間に合いません。
届かないボールは届かないのです。
ですが、ボールには追いつくけれど打球タイミングがズレる、おもには遅れる問題についてここでは俎上に載せるのが現実的ですね。
もちろん、逆に相手が全日本レベルではなくて、そこまで飛んで来るボールが速くないのであれば、相手に打たれてからボールに集中し始めても間に合うかもしれません。
とはいえどんな速さや遠さのボールが飛んで来るかは分かりませんから、基本的には自分が打ったボールが往復して返ってくるまでの最長時間を「すべて」費やして、集中を絶やさないようにします。
▶「早く引いた形」は取れるけど……
「テイクバックを早く準備しよう」と意識すると、確かに「早く引いた形」は取れるかもしれません。
というよりも、取れます。
今日からテニスを始めたばかり初心者であっても、「サッと引くテイクバック」はできます。
しかしそれで打球タイミングが(間に)合うわけではないのです。
スイングには、そのプレーヤーにとって、状況に応じた「固有のテンポ」がありますから、早く引いても、テンポが合わなければ振り遅れたり、逆に遅れないようにと逸るため、打ち急いだりもします。
テニスのミスは、2つにひとつが唯一の原因。
すなわち打球タイミングが早いか、遅いか、だけです。
つまり、テイクバックが早いか遅いかは、ミスする原因ではありません。
またテイクバックが大きいか小さいかも、ミスする原因ではありません。
そういった「フォーム」に原因を求めるのが、これまでの常識的なテニス指導だったのですけれども、そのせい(テイクバックなどについて考えさせるせい)で、ボールに集中できなくなってむしろ、テニスが上手くいかずに苦しむプレーヤーを量産してきたのです。
▶引き始めるタイミングに「正解」はない
昔は(今も?)、相手から飛んで来るボールがネットを越える時点では、ラケットを引き終えていなければならないという指導が一般的でした。
しかし実際には、選手は相手のボールがネットを越えてくる時点では、まだラケットを引いていないか、引き始める段階あたりの傾向です。
だからといって、そのタイミングでテイクバックすることを、「意識」するのではありません。
先述したとおりそのプレーヤーにとっての、固有で状況に応じたスイングのテンポがありますから、テイクバックを引き始めるタイミングに関する、全プレーヤーに当てはまる正解はないのです。
むしろ飛んで来るボールがネットを越えたら、あるいはバウンドしたら、テイクバックしようなどと「頭で考える」と、思考と感覚はトレードオフの相関ですから、体は適切に反応してくれなくなるのです。
▶これが正解「ボールと同調」
テイクバックを含め、動きが遅すぎても上手くいかないし、早すぎても、あるいは速すぎても、やはり上手くいきません。
早い、あるいは速いぶんには余裕ができるというわけではないのです。
あくまでも、「ボールと同調」することがテニスを上手くプレーするうえでは大事。
テニスは、ダンスやオーケストラの楽器演奏などと同じで、「早い、あるいは速いぶんには余裕ができる」とばかりに、音楽よりも先に動いてしまうのはNGです。
早く、あるいは速く引こうと意識しません。
ネットを越えたら引き終えるとも意識しません。
バウンドに合わせて引くなどとも考えません。
ボールと同調するそのためには、言い換えれば上手くダンスを踊ったり、楽器を演奏したリするためには、音楽に乗る「リズム感」が必要なのです。
テニスゼロの読者には、「テニスは楽器演奏」とたとえる方もいます。
テニスに運動神経は必要ありません。
ですからスポーツというより「ゲーム」であり、「楽器演奏」にも近いものがあります。
▶イメージは揺らぐよ、どこまでも
相手ボールの速さについていけない場合に、もっと簡単に対処するには、ポジションを下げて構えることです。
ご自身が全日本レベルと打ち合えるプレーヤーであったとしても、イメージは揺らぐのであり、対戦相手によっては「現実に対するイメージのズレ」が生じます。
コートサーフェスの種類や、風の有無、飛んで来るショットの弾道、あるいは対戦相手の印象などによっても、イメージは揺らぎます。
何でもないようなボールなのに、ロジャー・フェデラーも、ラファエル・ナダルも、ノバク・ジョコビッチも、カルロス・アルカラスも、ミスします。
彼らレベルですら、イメージは揺らぐからです。
動画最初のフェデラーの例などは、典型的なイメージが揺らいだミスです。
錦織圭の「スマッシュ空振り」はイメージの揺らぎではく、解説者の言うとおり「太陽が重なった」例です。
▶立ち位置は「ボール」に合わせる
念のためさらっておくと、多くのテニスプレーヤーはベースラインを基準に立ち位置を定めます。
ラインのない空き地でボールを打ち合うわけではないですからね。
しかし立ち位置は、飛んで来るボールの深さに合わせてその都度、1球ごとに定め直さなければなりません。
つまりあたかも、ラインのない空き地で打ち合うような感覚でプレーするのですけれども、たまたまラインを設けた場合に、それを超えたか超えなかったかでポイントを得失するルールを定めたのがテニスです。
▶テニスコートの「横幅」は狭いけれど……
テニスはおもに、ネットの高さとベースラインの横線とが、生命線です。
イメージが揺らいだ場合は、先の動画でも散見されたようにサイドアウトも皆無ではないけれど、テニスコートは縦よりも横幅のほうがよっぽど狭いにも関わらず、左右のコントロールはあまり問題になりません。
深さへの対応こそが、テニスゲームの巧拙と言えます。
▶「ランディングショット」を試してみる
相手のボールが速かったり深かったりする場合、今いるポジションよりも(プレーヤーによるのでおおよそ)1~2メートルほど下がって構えると、対処しやすくなります。
端的にいえば、1バウンドして、2バウンド目にさしかかるボールというのは、初速はどんなに速かったとしても、球威は落ちています。
もちろん下がって構えれば、相手の浅いボールには一所懸命走らなければなりませんけれども、そうしてポジションをボールによって変化させられるフットワークが、対応力のあるプレーを実現するポイントです。
先述したとおり、深さへの対応こそが、テニスゲーム競技の巧拙だからです。
またフットワークのよいプレーヤーである証明です。
こちらでお伝えしている「ランディングショット」、お試しいただくとイメージの構築にお役立ていただけると思います。
※「ランディングショット」は有料記事ですが、期間限定で無料公開しています。
よろしければ早めのお目通しを。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
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