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#本

御本拝読「雀の手帖」幸田文

時代が変わっても

 文豪・幸田露伴の次女で作家の幸田文さんの随筆集。エッセイですね。書かれたのは昭和三十四年一月から五月までの、百日間。ちょうどこの時期から始まってますので選んでみました。この本も学生時代からの愛読書で、中身が分かっていて何度読んでも面白い。
 昭和三十四年といえば、まだ戦後の色が少し残っていたかもしれません。日本も文さんご自身も、身辺のバタバタが少し落ち着いたころだったのでしょ

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御本拝読「さらに・大人問題」五味太郎

表記まで自由だ

 まず、約四半世紀前に五味さんが書かれた「大人問題」という本がありまして、こちらはその続編です。1999年刊、なのにまったく古さを感じず、むしろ今こそ必要なのでは?という五味さんの意見がいっぱい。
 そもそもこの本、検索かけたりデータつけたりするときは「大人問題」って打つんですけど、現物の表紙等では「大人」と「問題」のあいだに「は・が・の」も助詞が入っていて、五味さんの自由さが炸

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御本拝読「私のマトカ」片桐はいり

寒い日の本、旅編

 大雪の中を出勤し、無事に転びもせず生きております。私自身は雪の降る山陰の生まれ育ち&生まれついての立派な骨格にどっしりした下半身故、黙々と京都市内の混乱をやり過ごしました。しかし電車は止まるしそもそも通勤できない人が続出、連絡便や本の納品も壊滅状態。あんな時は、二日三日図書館閉めといていいと思います。誰も来なかったし。
 さて、そんな大雪吹雪の中、いつもの倍の時間かかって通勤

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御本拝読・「神さまたちの遊ぶ庭」宮下奈都

寒い時には寒い土地の話を

 大寒波到来ということで、寒い寒い北海道のど真ん中での一年のお話の本を。寒い時は、おうちで温かいモノを飲みながらこたつにでも入って本を読み、体と心をあたたかく。
 作家・宮下奈都さんが、山村留学制度を使って北海道の十勝地方・トムラウシ(アイヌの言葉で「花の多い場所」)でご家族五人で暮らした一年分のエッセイ。なぜトムラウシに行くことになったのか、という導入から、一年で本来

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御本拝読「誰でも美しくなれる10の法則」ティム・ガン/ケイト・モロニー著

ちょっとしたつまづきに

 体調が悪いとまではいかなくても、ちょっと元気がない時。アクティブに動いてストレス発散とか、マッサージやごちそうで贅沢とか、そこまでは要らないけどなんとなくもやもやする時。私には、そういう時に読んでくすっと笑って気持ちをリフレッシュさせる本が何冊かある。その一冊が、「誰でも美しくなれる10の法則」である。
 何を隠そうって別に隠してはないが、私は「ファッション」が好きだ。

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御本拝読・宮部みゆき

ずっと第一線

 私が小学生の時から、アラフォーにならんとしている今に至るまで、出す本出す本売れているすごい人。そんなくだらない言葉で表現してしまうほど、第一線にいらっしゃる作家さん。
 もちろん昔からお名前はよく存じ上げていたものの、本を読むよりも実写化された作品に先に触れることが多かったからか、大学卒業するくらいまで読んでませんでした。愚か者。
 多作で、色んなことに造詣が深い作家さん。何より

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御本拝読「フローラ逍遥」澁澤龍彦

耽美、幻想、フランス

 澁澤龍彦、と聞くとやはりこの三つの単語。私が法学部生だった時、出版物の表現にかかわる裁判でその名を知って、作品を読んでみたがいまいち大好き!とはならなかった作家。元々、エロやグロに耐性の低い私の悲劇である。
 しかし、その後、彼の小説ではないコラムやエッセイ、フランスにかかわる読み物を読んで理解を深めた。彼の表現は実はとても冷静で端的、人間の欲や性からは一番遠い。飄々とし

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御本拝読・小川洋子

私の心の月

 小さい頃の絵本や児童文学を除いて、私は大人になるまであまり存命の作家に興味が持てなかった。好き嫌いではなく、特にティーンから大学生時代は学校の図書館で日本近代文学全集やいわゆる文豪と呼ばれる人たちの全集を古い順に片っ端から読んでいたから、現代の作家までは間に合わなかっただけである。そんな私が初めて好きになった作家が、小川洋子だった。
 ちょうど本屋大賞が設立されて「博士の愛した数

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