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2/20 【米1月CPI予想上振れ、米1月小売売上高も力強い】

●米1月CPI 事前予想上振れ

2月14日に米労働省が発表した1月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比の上昇率が6.4%となり、7カ月連続で鈍化したものの市場予想を上回った。また前月比は0.5%の上昇となった。

(米CPI前年比推移、出所:Investing.com)

変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前月比で0.4%、前年同月比では5.6%それぞれ上昇。インフレトレンドを見る上では、総合CPIよりコアCPIが重視される場合もある。

インフレの内訳を見ると、住居費は前月比の伸びの半分近くを占め、群を抜いて最大の寄与度となっている。一方でここ数カ月のディスインフレの流れで主要な役割を果たしている中古車価格は7カ月連続で下落。エネルギー価格は3カ月ぶりに上昇。

サービス分野で最大の寄与度を誇り、総合CPIの約3分の1を占める住居費は前月比0.7%上昇した。帰属家賃と家賃は共に前月比0.7%上昇し、ホテル宿泊費も上昇した。住居費用は算出方法の関係から足元のデータよりも遅行する。

●米1月小売売上高は力強さ示す

2月15日、米商務省から発表された1月の米小売売上高はほぼ2年ぶりの大幅増となり、堅調な消費需要を示した。

1月は13カテゴリー全てが増加。自動車や家具、レストランなどの伸びが目立った。自動車の売上高は5.9%増で、こちらも約2年ぶりの高い伸び。ガソリンスタンドの売上高はほぼ変わらずだった。

今回の統計は米個人消費が昨年末(11月・12月)の減速から持ち直し、2023年は好調にスタートしたことを示している。失業率が歴史的な低水準にある中で、底堅い労働市場や堅調な賃金の伸びに支えられ、借り入れコスト上昇やインフレ高止まりにもかかわらず財やサービスへの支出は強い。

また小売売上高が増加した背景について、雇用市場の堅調さや賃金の増加に加えて、インフレ率の緩やかな低下、2月前に暖冬傾向が続いていたことが寄与したとする見方もある。

更に社会保障費の大幅な調整により、社会保障受給者がより多くのお金を使えるようになったほか、依然として多くの消費者が(新型コロナウイルスの)パンデミックの間に積み立てた貯蓄を利用しているとの指摘もある。

●タカ派発言を続ける2人の総裁

米金融当局において、もっともタカ派に位置付けられる2人であるメスタークリーブランド連銀総裁及びブラードセントルイス連銀総裁からはタカ派発言が続く。

メスター総裁は、前回(1/31-2/1)FOMCにて政策金利を0.50%引き上げる論拠はあったと指摘し、ブラード総裁も同様の見解を示した。

メスター総裁は、新たに発表されるデータをみても、政策金利を5%超に引き上げその水準でしばらく維持する必要があるとの自身の見解は変化していないと発言。「金融市場参加者が当局に期待する行動はともかくとして、私としては50ベーシスポイント引き上げる説得力ある経済的論拠があると考えていた」と話した。

またブラード総裁は、「成長と強い労働市場が続く現在の状況においても、政策金利の継続的な引き上げはインフレ期待を低く維持することにより、23年にディスインフレ傾向を定着させるのに寄与するだろう」と語った。

尚、両総裁はFOMC会合の審議には参加するが、今年は投票権を持っていない。

(クリーブランド連銀メスター総裁、出所:Bloomberg)

●債券市場の反応及び市場の利上げ見通し

米10年金利は、年初からのCPIの伸び鈍化につられる形で2月上旬まで下落を続けて来たものの足元では「強すぎる雇用」及びインフレの伸び鈍化が想定程進んでいないため、再び上昇に転じている。

(米10年金利推移、出所Trading View)

米10年金利上昇に伴いドル高が進行。ドル円は2月頭には1ドル=130円を切る水準まで下落したものの、足元では134円第前半まで戻している。

(出所:Trading View)

斯かる状況下、市場の政策金利見通しにも変化が生じている。1月下旬までは米政策金利は3月FOMC会合にて4.75-5.00%まで引き上げられた後利上げ停止。もしくは5月会合で5.00-5.25%まで引き上げられた後、利上げ停止となる見方がメインシナリオであった。

(市場の米政策金利見通し、出所:CME Fed watch)

然しながら、現時点では6月会合まで利上げは継続されターミナルレートは5.25-5.50%への到達がメインシナリオだ。債券市場とFRBの見解のズレはかなり解消され、現時点ではほぼ一致しているといえるだろう。

では株式市場はどうか。SP500は年初来から約5.9%上昇し、米金利が上昇を足元で続ける中でも依然として底堅く推移している。つまり、FRBの見解と株式市場の見解には依然として開きがあるのではないか。

(出所:Trading View)

最近「ノーランディング」という言葉を頻繁に耳にするようになった。ノーランディングとは、市場は金融当局がより長期にわたって景気抑制的な政策を推進する一方で経済成長が持続するというものだ。

株式市場は正しいのか、それとも楽観的すぎるのか。変遷を丁寧に追いかける必要がある。

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