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シン・映画日記『離ればなれになっても』

TOHOシネマズ シャンテシネにてイタリア映画『離ればなれになっても』を見てきた。


監督は『幸せのちから』や『7つの贈りもの』のガブリエレ・ムッチーノ。

1982年に16歳だったパオロ、ジュリオ、リッカルド、そして紅一点のジェンマ。
4人は友情の中でパオロとジェンマが惹かれ合い、恋仲になるが、ある行き違いから友情が破綻し、離ればなれに。
パオロは国語教師、
ジュリオは国選弁護人、
リッカルドはライター、
ジェンマは飲食業、
といった形でそれぞれ違う職種に就きながら、
恋愛、不倫、裏切り、仕事や家族仲での成功・失敗をしながら、4人の友情はギリギリの線で切れそうで切れない。
タイプとしてはベルナルド・ベルトリッチ監督の『1900年』やマルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督の『輝ける青春』といった現代イタリア史と歩む青春絵巻。本作はその時代、その時代の出来事を最小限にし、4人の友情・人生を軸に40年を見せる。
日本映画で言えば阿部寛主演の『とんび』が一番近いが、『とんび』は阿部寛が演じる主人公一人を軸にしたのに対して、
本作は4人の人生を群像的に見せたのがミソ。

5時間以上ある『1900年』や6時間以上ある『輝ける青春』と比べると135分の『離ればなれになっても』は非常にシャープでテンポがいい。
やや急ぎ足だったり、フライヤーの女性ジェンマのシーンが少な目だったりする。
確かにジェンマを軸にすればクロード・ルルーシュ監督の『男と女』的な要素はありはするが、もっとそういう恋愛メインなのかと思ったら、
どちらかというとパオロ、ジュリオ、リッカルドの野郎たちの友情の方がメインとなっている。

一見、塾年たちの友情で泣かせに入りはするが、
一人一人を見ると後半になるにつれ淡白になる。
そうなると、一見シャープでテンポがいい135分が物足りないというか、『1900年』や『輝ける青春』に比べるとダイジェスト感が強い作品に感じられてしまう。
せめて、4時間ぐらいあれば丹念な時代描写や個々の物語ももっともっと深掘り出来ただけに惜しくあり、逆に『1900年』や『輝ける青春』の長さが伊達ではなかったことを痛感した。

これだったら、終盤のパブのシーンのみを90分ぐらいでやった方がシャープだし、
終盤のパオロとジェンマのバスのシーンから90分ぐらいを切り取ればリチャード・リンクレイターの『ビフォア・サンセット』みたいなシャープな作品になった。

いくらでも案が出せた熟年青春群像を
短縮版『輝ける青春』ガブリエレ・ムッチーノ版でまとめてしまったのは考えれば考えるほど安直かつ愚直。
まあ、ある意味ワールドカップ2大会連続ヨーロッパ予選敗退しているサッカーイタリア代表=イタリアの国力が如実に表れていると思うと味わいが深くなるかも。

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