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大人扱いすること

techners株式会社 CEO じゃっきーです。

個人的に隔週でメンターと対話の機会を持っています。テーマはその時々自分自身が関心があることですが、彼のこれまでの組織開発や人の成長に向き合った経験からは学べることがとても多く、毎回楽しみにしている時間です。

その対話から「相手を大人扱いする」ということについて、時間をかけて学んでいます。

まだ自分自身も実践しきれているものではないですが、価値観としては非常に成熟しており好きです。今回は大人扱いをする、ということについて自分自身が学んできたこと、そして今後どのようにありたいかを少しだけ書いていきたいと思います。

大人扱いするとは何か

「相手を大人扱いするとは何か?」というテーマは、意外と難しい内容だと思います。個々人が考えている大人像は案外多様なもので、これが大人!といったものは実はありません。その人の育ってきた環境に影響を強く受けますし、また年齢を重ねれば大人といったものでもありません。

まだ僕自身も正確に言語化はできていないのですが、大人扱いするにはいくつかの要素があると思います。

①自立した個人として、本人の内発的な意志(Willパワー)からの動きを期待すること

大前提はこれに尽きます。当たり前のように聞こえますが、100%実践しきれているかと言われると本当に難しいテーマだと思います。

ここから言えることは、個人も会社も上下はなく対等な関係ということです。あくまでも多様な個人が、1つの目的に向かって協働していくものが会社であり、そのために個人が犠牲になるようなことはあってはならないと思います。

また、個人の考えを尊重し、本人の内発的な意志から行動が引き起こされるべきという点も共感が深い箇所です。

対極にある考え方としては、立場や権威のようなポジショナルパワーから相手の行動を引き起こそうとしたり、アメとムチのような外的なインセンティブ設計から行動を誘導することが挙げられます。

ポジショナルパワーからの話は論外として(しかし実態ではこれがなんと多いことか…と思います)、インセンティブ設計による行動誘発も危険を孕んでいると感じます。

裏を返せば、インセンティブがなければ行動しないと、そう考えられて取り扱われているのです。自分の意志ではなく、インセンティブにしか沿えないと。

本当に価値あるものを作り出したいときには、人は外的なインセンティブに沿って行動するものではないと思います。

自分自身が取り組みたいから、自分が成し遂げたいことがそこにあるから死力を尽くします。それは自分自身の中から湧き上がる何かであると思います。

②極端な単純化をせず、矛盾を受け入れてもらうこと

大人扱いの特徴には、そこに矛盾があると受け入れてもらうことを期待しているという点があります。

矛盾をなんでも受け入れれば良い、ということではありません。向かっていきたい方向、目指している目標に対しては、必ずしも毎回白黒決着がつくわけではない、ということを理解してもらいたいのです。言い換えれば原理原則から外れないで欲しいということです。

対極の事例を挙げてみると、厳格なルールを敷くことで統制を取ろうとすることはその1つかと思います。軍隊的な統率と言っても良いかもしれません。

ルールがないと原理原則から反してしまうだろう、ルールから逸脱することはNGと取り扱うことはまさに大人扱いではないでしょう。マイクロマネジメントに徹している営業管理などは典型例です。

例えば昨今話題のリモートワークか、出社か、といった話もまさにこれに当てはまります。

働き方は目的そのものではありません。会社それぞれの目指している山があり、それに登るために働き方の手段があります。目的達成のため、個々人が最適だと考える働き方を選択すれば良いと思います。

チームで前に進むことを大切にしているのであれば、当然出社が必要になるでしょう。一方で開発の佳境のタイミングで、特に集中して作業を行いたいのであればチームは通勤の時間も惜しんで作業に集中するでしょう。

どちらか1つが正しいわけではないのです。一見すると矛盾した状態をなぜそうあるべきかと、個々人が判断できることを期待しています

③大人扱いをし続けること

当たり前のようで取りこぼしがちなのですが、大人扱いをするためには大人扱いをあらゆる面でし続ける必要があります。都合が良い時だけ「大人なんだから!」と言うことは決してできません

つまり、一切のポジショナルパワーも使えず、そして単純化もせず、一貫して本人に大人としての立ち振る舞いを期待し続けることになります。

何かの拍子に大人扱いを中断し、子供のように取り扱ってから、またどこかで大人扱いしよう…と考えていたら、それは確実に間違いだと断言できます。

相手はそんなに馬鹿ではありません。あなたの振る舞いを良く見て、観察し、そして覚えています。そんなに都合よく"矛盾"を受け入れてはくれません。

常に相手を大人扱いすると決めたら、裏を返せば自分自身がそう立ち振る舞うことを決めるしかないのです。

この辺りはリーダーシップ論などにあるような、リーダーとしての振る舞いにも似ているかもしれません。

なぜ大人扱いをしたいのか?

大人扱いについて3つだけ要素を取り上げてみましたが、非常に成熟している人が実践できているような立ち振る舞いかと思います。

※余談:人の成熟などにより関心がある方は「成人発達理論」の入門書などを読んでみるとより理解が深まるかもしれません…!

そして、大人扱いと呼んでいることのエッセンスの多くが、technersの目指しているあり方に非常に有用だと感じています。

technersでは非常に長い時間軸でも成立するようなあり方を模索しています。100年以上続く組織、そして時代や前提条件が変わってもそのあり方の根底が変わらないことは何か、と創業期から考えていました。

現在の事業ドメインである美容業界についても、数年で変革できるとは思っていません。非常に長い時間とエネルギーが必要な領域だと考えています(だからこそtechnersで取り組むべき領域とも感じています)。

そして、この長い時間軸で組織を成立させるには、1人のカリスマに率いられるやり方は向いていません。カリスマにも寿命があり、衰えもあります。

その代わりに組織としての成熟を手段として取るべきだと考えています。時代背景や環境要因が変化しても、成熟している大人の集まっている集団であればそれを乗り越えていけると信じています。

また同時に、大人扱いされることの方がより人間的で幸福度も高いのではないか?と個人的には考えています。

自分の内発的な意志が尊重され、湧き出てくるようなエネルギーに素直に従いながら日々全力で頑張れる、周囲もそう頑張っている集団は魅力的ではないでしょうか?そのような組織にしていきたいし、そうありたいと感じます。

まだ「大人扱いすること」が正確に言語化できているわけでもなく、組織に浸透しきっているわけでもないのですが、これが文化の根底に根付いてくる何かであって欲しいと思います。

大人な組織実現のために取り組んでいることと、今後の課題

最後に現在僕たちが取り組んでいること、そして今後の課題として感じていることをいくつか書いてみます。

すでに実践をしていること

①ポジショナルパワーではなく対話を元に意思決定を行う

これは日々のプロダクト開発の意思決定から、経営の大きな意思決定まで徹底してできていることです。必要な情報は全員に共有しチーム全体での意思決定となるように対話を進めています

現在PdMが不在、今後もしばらくは専任のPdMではなくチームでプロダクト開発を担っていきたいとの気概にもこちらが影響しているかと思います。

②全ての社内情報を開示し、コミュニケーションをオープンに取る

自分で自立的に判断することを期待している以上、情報の非対称性はポジショナルパワーの源泉となってしまいます。

そうならないためにも、全ての情報は社内に開示され、そして気になることがあればオンライン/オフラインどちらでもコミュニケーションをオープンにとっています。

今後もこのスタンスを変えず、情報を透明化し全てを追いかけられるからこその矛盾にも、個々人に向き合ってもらいたいと願っています。

※余談:キャッシュフローも事業KPIも全て公開されているので、プロダクト開発が事業にどんなインパクトを与えているか、なども頭を抱えるテーマですね

今後の課題と感じていること

①適切な評価体制を設計すること

大人扱いすることは、強烈な性善説に依存しているとも言えます。

理想的にはこうだったが、、、と現実的に望む成果が出なかった時にどう対処するのか?や、ライフステージの変化にも合わせて待遇の変化をどのように準備するかなど、適切な評価体制が必要だと感じます。

しかし、評価制度はどうしてもアメムチ構造になってしまいがちだとも感じます。一般的な評価制度をそのまま導入するべきとは感じられません。

自分たちが望む評価体制を、今後対話を通じて作り込んでいく必要があります。何を評価するのか、なぜその待遇になるのかなど、矛盾しそうなテーマも勇気を持って踏み込みたいです。

性善だからと評価から目を背けるわけではなく、より性善が強化されるような形を作っていきたいと思います

②大人扱いのグラデーション

大人扱いすることにも適切なガイドが必要だと最近感じることが増えました。完全な自由・自立を提供すると、実はそれが混乱につながりフラストレーションにつながるという経験を何度かしました。

理想は掲げていくものの、どのようにその理想状態に近づくのが良いかはまだまだ手探りです。ここもチームの中での試行錯誤を経て、何かしらのグラデーション毎の寄り添い方を見つけていく必要があると感じています。

そのためにも、全員を巻き込んだ上での対話的な議論の場を多く持つことや、今回のnote記事のようないつでも見返せる発信コンテンツ、そして何より日々実践を通じて相手を大人扱いしていくことを継続していきたいと思います。

おわりに

今回はまだ個人的にも学習の途中にいるテーマについて書いてみたので、いつも以上に乱文が目立ってしまっています、ご容赦ください….!!!

個人的に関心が高い人と組織の成長・発達に関連するテーマでもあり、日々多くの事例から学習が進んでいる実感があります。成人発達論や組織論、そしてリーダーシップ論にも重なりを持つような内容です。

人も組織も、そんなに単純化できるものではないと思います。個人的には善意を前提に、その可能性を信じながら、複雑な人と組織をマネージしていきたいなと思います。

もう少し掘り下げた話を聞いてみたいな…と感じられた方は、ご遠慮なくじゃっきーのtwitterまでDMください!大歓迎です!

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