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農業・漁業の技術

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2022年10月の記事一覧

火山灰が栄養に

火山灰が栄養に

海底火山「フンガトンガ・フンガハーパイ」が1月15日、爆発的に噴火した。噴煙は高度数十キロメートルの成層圏まで到達し、大量の火山灰を放出した。

ハワイ大学の研究チームは噴煙が消えた後、人工衛星で海面を観測し、48時間以内という短期間に火山周辺の海域で植物プランクトンが約10倍に急増していたとの分析をまとめた。広範囲に降り注いだ火山灰が栄養分となり、「ブルーム」と呼ばれる植物プランクトンの大増殖が

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魚類の1日毎の経験水温"解明

魚類の1日毎の経験水温"解明

水温は海洋生物の分布を決定する最も重要な環境要素の一つで、今後の地球温暖化による海水温の変化は、多くの海洋生物の分布や資源量の変化に大きな影響を与えると考えられている。
水産資源を今後も持続的に利用していくには、水温変動が魚類の成長や分布・回遊に与える影響を理解することが重要。しかし、海洋を大規模に回遊する魚類の経験環境を詳細に観測する手段には限界があり、魚類の生息環境や生態の理解は進んでいなかっ

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台風でも倒れないイネ

台風でも倒れないイネ

これまで、稲を強風に強くするために、茎を伸びないようにする品種改良が行われてきた。背が低い方が風の影響を受けにくいためで、これにより、米の収穫量は大幅に増えたが、背丈を伸ばさずに育てるのは肥料を与える量を調整する必要があり、育てるのがとても難しかった。

そこで、ゲノム編集技術を使って研究されているのが、味はこれまでの美味しさを保ちながら、茎を太くして強風に強くする、品種改良だ。

写真を見ても明

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食糧危機に備えろ

食糧危機に備えろ

現在、地球規模で環境変化がおこり、干ばつや土壌の荒廃が世界中の農地で起こっています。国内でも、極端な豪雨をはじめ、肥料価格が高騰するなど、農業を取り巻く自然環境や経済状況は大きく変化しています。

農研機構は、将来の不良環境でも育てられる食物の確保にむけ、異常気象を人工的に作り出す気象室を開発しました。

室内で干ばつや冠水・少ない肥料環境を作り出し、作物の成長をカメラで記録。こういった過酷な環境

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天気制御

天気制御

世界各地で気候変動に伴う干ばつ被害が広がっている。そこで「天気制御」人工的に雨を降らせる取り組みが広がっている。中東やアフリカの国が国家計画として今年から相次いで始め、中国も8月に飛行機を約90回飛ばして降雨につながる物質を散布している。干ばつの被害は農作物や水力発電に大きな影響を与える。

人工降雨はヨウ化銀や塩、ドライアイスなどを雲に散布して、雨を降らせる技術だ。

ただ、人工的に雨を降らせる

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トンネル補強技術

トンネル補強技術

山間部に建設された農業用水を運ぶ農業用水路トンネルでは、崩落の事故などによって送水が停止すると、下流地域が断水するため、農業生産に大きな被害が及ぶ。

これを未然に防ぐには、補強などの手当てを行うことが重要になる。しかし、水路トンネルの補強工事には、使用する資材を水路トンネルの内部に搬入するための仮設の道路や設備が必要となる。とても大変な工事になる場合が多い。

そこで、この問題を解決する方法とし

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足元で起きる進化

足元で起きる進化

千葉大学などの研究チームは、これまでに都市と農地の雑草がそれぞれの環境に適応し、急速に形態(草姿)を分化させていることを解明した。

例えば、オヒシバというごく普通の雑草を、都市型環境と農地型環境に置いた場合、都市環境では植物の密度が低いため競争能力が低い地面に這うような草姿になり、農地環境では植物の密度が高いため競争能力が高い直立型の草姿に進化する。

人間は、自然環境に大きな影響を与えているが

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カニの殻

カニの殻

カニの殻は、植物を外敵となる昆虫、根や葉を腐らせる菌やカビから守ってくれることは昔から知られていた。

カニの殻に含まれるキチンという成分が作用するためなのだが、キチンが植物に対し効果を発揮するためには「4~5年が必要」(焼津水産化学工業)だった。自然に分解されるまでに時間がかかるからだ。そこで同社はキチンを植物に反応する分子量にまで分解したLMCという資材が開発された。

トマトの苗の葉に散布す

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