見出し画像

酒好きになり店を出したら人に騙され人に救われた話⑮

大学卒業後の3月
休む間もなく
次なるステージに向けた準備が始まった。

就職先に選んだ"灯楼"の
移店が決まっていた。
薬院の店から親不孝通りに移転をするのだ。

そして灯楼から店名も変わる

「夢酒場ラット」

「ジャパハリネットの"とある曲"いいよね」
酒井智矢の唐突な一言から決まった店名だった。

飲食店なのにラット…。
いいのだろうかと気持ちもありながら
ワクワクの方が勝っていた。

年末くらいから店を探すうちの
ひとつだった親不孝のとあるテナント。

この店を選んでくれたことが
先の人生を大きく変えることになるとは
当時は知る由もなかった。
 
「店の売りは何にする?」
新店舗会議は続く。

いろいろ話した中で"おでん"を
売りにすることが決まった。

「で、スタッフの人選は?」
当たり前のように質問した私の疑問は
すぐに打ち砕かれた。

「嘉松1人だよ!」
当然のように言い放たれた一言に
言葉を失った。


飲食経験ど素人の自分だけの店。
何せ、"雇われ店長"として働くのだ。

「無理でしょ!」
成功のイメージが湧かず、
すぐにこの言葉を返した。

「んー、じゃあ1人入れるか!」
すごく適当な感じの酒井さんの言葉に
とても不安を覚えた。

数日後
1人の男性が現れた。
その男の名は吉田憲正

空手家らしい。
しかも、道場を自分で開いているという。

元飲食経験者とはいえ、
片手間で仕事をするということは
基本は自分1人の店ということだ。

もう、やるしかない!

そんな気持ちしかなかった。

なぜ、酒井さんが店長ではないのだろうか?
すごく疑問だったので聞いてみた。

「俺、海外行ってくる!」

飲食店ど素人を残し
店を経営し、世界旅行。

その時は"すごいチャレンジャー"だなぁ。
と感心していた。

そのような、やりとりを経て
新たな店への引越しが開始した。

ワンフロアに3テナント入るビルだった。


ラットが入る店の他に
同じフロアのドアの入口には
"ecstasy"

"Z"

とそれぞれ書かれている。
一体、何の店かわからない。

親不孝通りの雑居ビルの一角である
少し恐怖すら感じた。

しかし、そのようなことに
余裕はなかった。

準備が忙しくてバタバタしていた。
そんな中、夜になると
ecstasyが開いたようだ。
しかし、深夜12時にオープンするという
信じられない営業スタイルだった。

すると、身体中に響く重低音と爆音が鳴り響いた。

「!?」

ヤバイ店の隣に来てしまった。
それが直感で感じた気持ちだった。
挨拶しないとヤバイだろうな。
そんなことが頭の隅によぎった。

しかし、その日は爆音で
中に入ることが出来ず
翌日に持ち越された。

そして翌日
夕方まで、準備を進めていると
Zの店主が来たようだ。

パッとその人気のほうに
顔を向けると白いスーツを着た
おじちゃんがいた。


そのおじちゃんは
こっちに気づかなかったようだが
白いスーツにインパクトを受けた。

なんだ、このフロアは⁇

そんな気持ちが、親不孝での飲食のスタートだった!



この記事が参加している募集

自己紹介

スキしてみて

最後まで読んでいただきありがとうございました。記事が気に入ったらシェアやいいねをしてもらえると嬉しいです。