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大学中退して独立したら独立なんて必要なかった話⑬

ライブハウスの前につき、意を決してライブハウスの扉を開く。扉を開けると音漏れするライブの演奏の音と談笑する声が聞こえてきた。入るとすぐに階段があり、下に降りられるようになっている。上から見ると、降りた先に受付とBARカウンターがある。

僕は階段を踏み離さないように慎重へおり、受付に向かった。受付の女性に鳥部からもらったチケットを渡すと、何度も言って、言い慣れた様子で

「はーい。チケットの半券とこちらチラシとドリンクチケットになります。」

とチケットを半券をちぎりながら、チラシとドリンクチケットを取り、まとめて僕に渡した。荷物になるなと思いながら、片手でチラシを持ち、ドリンクチケットをポケットに入れた。受付を終え、辺りを見回すと、BARカウンターで4、5人が楽しそうに話しながら飲んでいた。BARカウンターの反対の壁には扉があった。その扉から音漏れした重低音とかすかな空気の振動を感じる。なるほど。ここはBARスペースとLIVEするエリアが分かれているのだと理解した。

携帯電話の時計を見るが、鳥部が出ると言っていた時間よりまだ早い。BARカウンターで楽しく談笑している人がいる中、ポツンと立っているのはなんとも寂しい。孤独は人が集まっているところに存在するのだ。そのようなことを思いながら、BARスペースで待つより幾許かマシなLIVEスペースに逃げ込むことにした。

どんどんと振動している黒い扉を開けると、スポットライトを浴びて演奏するバントが目に入った。僕はそそくさと後ろの方で、人が集まっていないところへ行った。歩きながら周りに目をやると、それほど人は入っていなかった。15名程度といったところだろうか。今日、別の時間に演奏するバンドもいるだろうから実質の客数は4、5人といったところだろう。そのようなことを思いながら、お目当ての場所につくと、顔をステージの方に向けた。

知らない曲だ。知らない曲をライブで初めて聴くと、なんともしようがない。CDのようにきれいに調整された音でないので、なんと歌っているか聞き取れやしない。しばらくボーッと見ていると、僕が入ってきた時の曲が最後だったらしく、ありがとうございましたと言いながらギターをジャカジャカと鳴らし始めた。ジャンと音を合わせて演奏を終えるとまばらな拍手。すっとステージの明かりが暗くなった。

暗がりのステージで演奏を終え、楽器を片付けるバンドマン。お客がいるフロアでは、4、5人がライブスペースから出るため、BARスペースに向かっていた。やはりバンドのお客さんは4、5人だったのだろう。そんな推察をしていると、次の演奏のため鳥部たちが用意をするために、ステージ横から出てくる。

いよいよ鳥部のバンドの出番が始まるのだ。



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