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大学中退して独立したら独立なんて必要なかった話㉕

アルバイトが終わり、そそくさと帰る準備を始める。

「あれ?まこっちゃん早いね。何か予定あるの?」
と社員が声をかけてくる。

「いや、特に何もないですけど、早く帰ろうかなと思って。お疲れ様です。」

と会話が続かないように答えた。

「お疲れ様。」

「お疲れ様です。」

というとスタッフルームの扉を開けた。


原付に乗り家に帰る。玄関の扉を開けた。玄関を入って右手にある下駄箱に段ボールが置かれてあった。待っていた荷物が届いていた。届いている嬉しさを抑えながらリビングへ向かう。

リビングルームの扉を開けると、いつも変わらず父と母がいた。

「おかえり。ご飯どうする?」と母がいつものように尋ねる。

「あとで食べようかな。」

「あらそうね。冷蔵庫に入れとくけん、チンして食べなさい。」

と少し残念そうに母が言った。

「まこ、荷物届いとったぞ。」と父が言った。

「うん。ありがとう。」

「何買ったんか?」

「大したものじゃないよ。」

と嬉しくて飛び上がりそうな気持ちを隠すように僕は答えた。リビングを出て玄関の下駄箱の上に置かれた段ボールを手に取り、二階にある自分の部屋に駆け上がった。

段ボールを開けるをカッターナイフで開けゆっくりと開くと、何度もネットでみた白と赤の化粧箱が見えた。やっと一眼レフカメラを手に入れることが出来たのだ。これからの映像制作に必要な機材だ。

イベントをしていた時YouTubeに動画をアップしていた。その時はバイクのツーリング用に買った安いコンパクトデジタルカメラを使い、パソコンで編集して動画を上げていた。撮影して編集する一連の作業はできるようになったが、一つ問題があった。コンパクトデジタルカメラの画質がとても悪かったのだ。画質の悪さは編集ではどうにもならない。ちょうど民生用カメラが画質がSDからHDに移行しはじめている時代だった。HDの画質を見たあとSDの画像を見ると、カメラのことを知らない人でも画質の差をわかるレベルの違いだ。新しくカメラを買おうと思い、どのカメラを買うか悩んでいた。

そこで見つけたのが一眼レフカメラだ。一眼レフカメラで撮る動画は、カメラのレンズを自由に変えることができ、業務用カメラより安いにもかかわらず、業務用カメラに引けを取らないと有名になっていた。

アルバイトをして、お金を貯めやっと一眼レフカメラを手に入れることが出来たのだ。今までの人生で高かった買い物の中で3本の指に入るだろう。新しいものを手に入れた喜びに加え、期待感がつのる。これで動画のクオリティを上げることができる。

これからだ、これからだとカメラを握りしめ、自分を鼓舞した。


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