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15秒で読める小説

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15秒で読める!140字創作小説
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#毎日note

【140字小説】社長が来る

【140字小説】社長が来る

「社長が身分を隠して現場に潜入!従業員達のリアルな姿を視察!」
そんな番組を見て以来、俺の職場にも社長がお忍びでやって来るんじゃないかと常に緊張感を持って働いてる。
…あれから30年。社長、来なかったな。てゆーか社長って実はそんな暇じゃないよな。俺、社長になってやっと分かったよ。

【140字小説】顔で笑って心で泣く

【140字小説】顔で笑って心で泣く

“顔で笑って心で泣く”
そんな器用なこと、人間は本当にできるのだろうか。
僕はいつも気持ちが顔に出てしまって、級友から「なんか嫌そう」「少しは空気読めよ、ムカつく」と虐められた。もう長い間学校に行けてない。
「大丈夫、いつかまた行けるわ」母は毎日優しい笑顔でそんな僕を励ましてくれる。

【140字小説】不意に覚醒

【140字小説】不意に覚醒

TVから流行りの切ないラブソングが流れた。自分の苦しい恋と重ね合わせため息を一つ。
…でもちょっと待って。
私の部屋ってこの曲のMVほど綺麗じゃないし、私だってこの女優さんを百回ぶん殴ったみたいな顔だし。彼氏だって…。
なんだかどうでも良くなって笑えてきた。いっそ今年は新しい恋見つけよ!

【140字小説】エモかった

【140字小説】エモかった

骨董品が趣味の夫は「エモいから」と言っては骨董屋であれこれと買ってくる。
冬のボーナスで「狙ってた大皿を買ってくる」と言うので「大皿だけだからね!」と念押しして送り出した。
…なのに帰ってきた夫は大皿の他に絵も抱えていた。「なんでよ!」と怒る私に夫は気まずそうに一言。
「絵も買った…」

【140字小説】ラップバトル5

【140字小説】ラップバトル5

引き籠り中急にライムが降りてきた。

「生き残りかけた引き籠り
悲喜こもごも自室にお籠り
子守りは不要
一人でいくよ
さながら岩屋に籠るアマテラス
バーチャルゲームで名を馳せてます
対戦相手は大抵泣いて
許しを乞う俺孤高のKING!」

ラップバトルと勘違いして部屋の外に人集りができたので…たまには外に出てみるか。

【140字小説】ラップバトル4

【140字小説】ラップバトル4

残業帰り、思わず溢れる愚痴。

「増えぬ年収
どうすんねんYOU?
サラリー生活
クラリ脆弱
終電帰り暗い静寂!
ハイソな話題に愛想の笑い
行き当たりばったりかますハッタリ
引き攣る顔面もう勘弁!
捨てるネクタイもう寝たい!
get down」

ラップバトルと勘違いして人集りはでき…なかった。だってもう深夜だから。

【140字小説】ラップバトル3

【140字小説】ラップバトル3

憧れの路上ライブしてみた。

「ha!袖擦り合うも他生の縁、
今かき鳴らすバンジョーの弦!
奏でるメロディー聴くのがセオリー
雑踏を急襲して殺到する群衆!
ドームのライブも近いムード!」

ラップバトルと勘違いして人集りはできたが、レーベルのスカウトは来なかった。
やっぱバンジョーよりギターがセオリーかな。

【140字小説】ラップバトル2

【140字小説】ラップバトル2

繰り返しの毎日。駅のホームで嫌気がさし気付けば心の声が漏れ出た。

「基本は健康!積むは善行!
電光掲示板に自殺者のNews!
空元気出して飛び乗るトレイン、
天気は生憎Rain Rain Rain!」

ラップバトルと勘違いして人集りが出来たので、乗るはずの快速が来たが逃げるように立ち去る。
so bad…

【140字小説】ラップバトル

【140字小説】ラップバトル

出先で旦那と喧嘩した。
「は?そこまで言う?あんたの理由、意味わからん上筋通らん。そんな態度に毎度閉口。heyこのバトルどう収める?あんたの態度に私は冷める!」
私の怒りのライムが炸裂し、ラップバトルと勘違いして人集りが出来た。
さあ旦那どう出る?
To be continued…いや続かんわ!

【140字小説】ラス1の悩み

【140字小説】ラス1の悩み

「私が死んだら誰か泣いてくれるかな」
最近暇な時間がありすぎて、本気でそんな事を考えてみた。
…結局誰の顔も、私の錆びついた脳裏には浮かばなかった。
当たり前だよね。
私なんて可愛くも優しくもないし、何の才能もないし。
それに何よりもう、地球上には、私しか、いないし。

【140字小説】Twitter終了 ※終わってません

【140字小説】Twitter終了 ※終わってません

Twitter終了のお知らせ___

なぁ、あの青い鳥が僕らに運んできた物は結局何だったんだろうな。
交流、友人、情報、時間の浪費…。
善悪はともかく単なる呟き以上の物だった事は確かだ。

…なんて呟いてみる。勿論いいねは付かない。インプレッション数0。

なぁ、本当に終わっちゃったんだな。

☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆

終わってないもん…Twitter…終わらないもん…(泣)

【140字小説】トンボと少女

【140字小説】トンボと少女

ツルツルの金属の棒に上手く留まれないトンボ。すぐ横に本物の木がある事、なんで気付かないのかなぁ。なんならちょっと頑張って飛んで行けば野原も林もそこら辺に沢山あるのにさ。

…そんな事を思いながら私は、上手く馴染めない教室の窓から今日もじっと外を見ている。

【140字小説】期

【140字小説】期

壁にぽっかり空いた穴。
その前に力なく座り込み、母は呆然と呟いた。

「ああ…ついにこの地にも伝説の悪鬼が現れ異次元への扉を開けてしまった。伝説の悪鬼…忌まわしきその名は…反抗鬼」

「るせーババア!ふざけてんじゃねーよ!」

廊下の壁に穴を開けた張本人である兄は、そう叫んで玄関を飛び出した。

【140字小説】たそがれ

【140字小説】たそがれ

昔から辛い時には海へ行った。
防波堤に座り、海岸で遊ぶ人々や彼方を行く船を一日中眺めていると気持ちが落ち着くのだ。

ポンポン。
急に肩を叩かれ振り向くと警官が立っている。
「あー君、通報が入ったんだけどね。ここで朝から一体何してるの?」

…どうやら黄昏れる事も許されぬ時代らしい。