テレワークゆり物語 (178)40代後半で知った「法律のチカラ」
「お母さんは生まれ変わったら法学部に行きたい」
15年ぐらい前、当時高校生の長女に、そう語ったことを覚えている。
大学ではスペイン語を専攻し「法律」とは縁のない人生を歩んでいた私が、どうして「生まれ変わったら法律を学びたい」と思ったのか。
そこに至る人生を振り返る。(また長いよ)
「語学」が合わないと気付いたのは大学時代
大学進学にあたり「外国語学部」を選んだ理由は、深くない。
高校時代にあこがれていた人が英語の先生だったから。
先生に質問したいがために英語をひたすら勉強した結果、進路の選択はそれしかなかっただけのことだ。
そしてスペイン語を選んだ理由も安易だ。20か国で話されているので、
1粒(言語)で、20度(国)、美味しい(旅行できる)と思ったから。
そんなことなので、勉強は落ちこぼれ、スペイン語は身に付かず、
大学生時代は、コンピューターに夢中になり、
億万長者になり損ねたりしたww。
フタを開けてみると、「語学」とは畑違いの企業に就職した。
「開発」が合わないと気付いたのはOL時代
男女雇用機会均等法が成立した1985年、コンピューターの仕事をするために、シャープ株式会社に入社した。
時は法律施行の前年、大手企業が4年生大学卒業の女子を採用してみよう、という最初の波に、うまく乗ることができたのだ。
最初に配属されたのは、製品を開発する「技術部」のソフトウェアグループ。ここで一生働き続けたいと思った。
はじめて採用した4大卒の文系女子をプログラミング要員と育てるべく、「AIプログラミング研修」で、はじめての東京出張をさせてもらった。
しかし、当時の最先端を学ばせてもらったにも関わらず、何の技術も身に付かず、私の頭は「文系」だとあらためて認識しただけだった。
「企画」が合うと気付いたのに退職したのが30歳
20代後半まで「ライフワーク」に出会えなかった私だったが、
「ものづくり」の面白さを知り、ようやく「商品を企画する」仕事が、自分に合っていることに気づいた。
しかし、これからというときに、結婚・出産・夫の転勤という人生の波に流され、大好きだった会社を泣く泣く退職することになる。
これから家族と仕事、両方を大事にしたかった欲張りな私は、
「家で働く」しかないと考えた。(当時は両立することが"欲張り"の時代)
自ら実践することで、私の人生における「ミッション」を見つけた。
テレワークを日本に普及させたい
これが私の「テレワーク推し」人生の始まりだった。
1992年頃のことである。(長女が生まれた年なので忘れない)
「法律」のチカラに気づいたのは40代後半
2008年46歳のとき、その10年前に起業したワイズスタッフとは別に、日本初のテレワーク専門のコンサルティング会社を立ち上げた。
しかし、順風満帆とはいかなかった。
ビジネスコンサルから
「市場も無ければニーズも無い」
と言われ、
融資をお願いする銀行員から
「テレワークなんて、夢物語」
と言われ、
長いトンネルの出口を見失いはじめていた。
国はテレワークの重要性を認識し、推進してくれているものの、企業がなかなか動かない。
どうしてだろう。
育児休業の取得や、短時間勤務制度などはの「休む」施策は、広がってきているのに、「働く」施策であるテレワークは、注目されない。
企業は、社員が「休む」より「働く」ほうが良いのではないのか。
その答えは「法律」だった。
育児休業の取得も、短時間勤務制度も、「育児・介護休業法」という法律で定められている。
日本は「法治国家」であると、小学校で習ったではないか。
「法律のチカラ」ってすごい。40代後半でやっと気づいた。
変えられないなら、変えられる人にささやこう
しかし、せっかちな私が「生まれ変わる」まで待てるはずがない。
私は、国会議員でも、官僚でもないが、その人たちにささやくことはできる。
テレワークの必要性を伝え、施策を実施し、いつか法律に入れてほしい。
そうすれば、推進のための政策は続くし、予算もつくし、多くの企業が動くはずだ。
すべての国会議員事務所に「テレワーク本質論」を献本したり、
国会議員さんを直接訪問する「テレワーク行脚」をしたり、
総裁選のタウンミーティングに参加したり、
それ以外にも、いろんなところに顔を出して、いろんな人にささやいた。
ただ、多くの人が、こうアドバイスしてくれた。
法律を作ったり変えたりするのは、それはそれは大変なこと。
動きが起こったとしても、何年もかかる。
さすがに、難しいのではないか。
私のささやきは、無力だった。
テレワークに関連する2つの法律が成立
しかし、私のささやきとは比べものにならない、大きな大きな「追い風」が吹いた。
コロナ禍を経て、テレワークをする人が倍増したのだ。
デジタル田園都市国家構想や、異次元の少子化対策において、「テレワーク」は重要かつ現実的なソリューションとなった。
その結果、第213回国会で、以下のテレワークに関連する2つの法律が成立した。
「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律」
前者は、テレワークの普及で現実的になった「二地域居住」で、地方創生を推し進める。
後者は、企業が子育中の社員に「テレワーク」という選択肢を可能にするよう促す。
「法律のチカラ」に気づいてからも、10年以上の月日が流れていた。
でも、大切なのは、ここから。
法律で決まったことが、社会に浸透し、世の中を変えるには、まだまだ年月がかかる。
でもこの舞台(ステージ)なら、私の得意な「企画」が活かせるのではないか。
生まれ変わって「法律」を学ぶより、確実に近道である。
※冒頭の写真は、2021年1月「テレワーク行脚」で、議員会館から撮影した国会議事堂
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