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何光さんの話

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日記的な話ですが、何暗さんの話ではありません。 何光さんの話です。 虚実入り乱れています。
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2019年3月の記事一覧

体への信頼

学区指定の小学校は体育の研究指定校で、わたしはとても体育が苦手だった。
ぼんやりしてるし、何をしても遅いし、体もそんなに強くない。声が高いのが恥ずかしくって、大きな声を出せなかった。
そんなだから学校の行事や体罰だらけの方針にはいっこうついていけなくて、わたしは自分の体への不信感を根強く持っていた。

その小学校や先生のことが大嫌いだったもので、お前らの生徒はお前らのおかげでこんなに不健全で体を動

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空は高かった/汐月しゅうさんにまつわるいくつか

汐月しゅうさんのファンになったことは、たぶん、一つの転機だった。

汐月しゅうさんのお名前は、美少女戦士セーラームーンのミュージカル経由で知った。わたしはセーラームーン世代であり、大学生の頃からは海王みちるさんの信奉者である。セーラームーン25周年の諸企画がターゲットとしていた中の一人だろう。

ただ、わたしにはわたしの愛し方があり、タイミングがある。舞台がそのとき、その場所だけのものだとは承知し

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時間がすぎていってしまう。こわい。

さまよっていたレンズが不意に焦点にゆきあたる。手さぐりで時刻は5時35分、天窓はまだ暗いが、足元の窓には曙光の末がある。

ベッドからずり落ちかけたデニムを掴み、上体を起こす。朝一番に着替えることができるかどうか。これがいのちの明暗を決める。衣服、これこそが人間を人間として生かした最大のものだ。
火、二足歩行、そんなものはどうだっていい。自分の身体のテクスチャを自分で加工できる。自分の身体を自分の

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避春

2017年の3月13日、わたしはわたしが非常になついている先輩と富山の雨晴海岸——家持や芭蕉の眺めた海に行った。
早春に立山連峰を海の向こうに見れることはあまりないんだそうだが、晴れ女ですわたくし。
海から幻のように雪山が生えている。不思議な景色であった。
けっこうすぐ満足した。

先輩とわたしは、春に霞んだ立山連峰、やわらかな水平線そっちのけでヤドカリ探しに興じ、藻の美しさに喜んで動画を撮ってた

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言葉と恋の話

長年好きだった人がいたけれど、突然ふっきれた。

付き合ったのは期間にしておよそ1年弱。その後、2年ほど片思いをした。

相性が悪いのは重々わかっていた。しかしそれは一番上のぼたんをかけ違えたシャツはその下をどう頑張ってもうまく着られないというような話であって、その一番上のぼたんを最初にかけ違えたというそれだけのために、諦めないといけないなんてのはあんまりひどい。

だってかの人は、わたしが知って

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抑鬱状態にあったらしい一年から学んだこと

2017年のわたしはいう。抑鬱状態にあったらしい1年間から学んだことがあると。2017年のわたしは下書きに何やら書き残していた。今から見れば、随分元気なことだ。ある程度とはいえ回復できて、よほど嬉しかったのだろう。物言いもこびている。

ただ、それでも何の役に立たないわけでもないだろう。今のわたしだって、危なくないわけではない。

とりあえず今の時点でこの文章はろくでもない。ただ、これからその「学

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