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自粛中の欝々とした気分を逆転!伊坂幸太郎「逆ソクラテス」

自粛長期戦、今この作品に出会えてよかった。

この作品が山積みされた本屋さん。そのすぐ近くにちんまりと置かれた伊坂先生からのメッセージ「読者の皆さまへ」。この作品に対する思い、「大変な現実」を前にした時に作家としてできること、について記載されていて、そのメッセージも手に取って、他の単行本も数冊手に取って、人との間隔を空けて、レジへ並んだ。そうそう、単行本は通勤には非常に骨が折れるのですが、とりあえず自粛期間中は通勤気にしなくていいし、まとめて単行本を買ったのです。

デビュー20周年となる今回の伊坂作品のテーマは、「先入観」と「逆転」。
短編にも関わらず、勧善懲悪的な爽快感と、きれいな伏線回収はやはりお見事。
また、短編集ではありますが、それぞれが少しずつ重なり合っている連作短編集です。

爽快感で満たされる。いつも一気読みだ。
伊坂作品の一気読みは、内容の面白さだけではなく、時間の経過という点でも言える。
一つの作品の中に、瞬間の積み重ねが、詰まってる。瞬間の中での仕草、会話一つ一つの描写がとても丁寧で、緻密。
ドラゴンボールに例えると、「ナメック星の爆発まであと5分!」と言っておきながら、そこから何話も続いていって、その5分が異様に長く、その中で何か奇跡が起きてほしい、あーもう5分経っちゃう、いやでもまだ終わってほしくない、むしろここで終わられたら困る、どうなるのどうなるの、そんな気持ちで結局ラストまでぐいぐい読まされる。ものすごいドキドキして、身体中の血液がごうごうと動き回り、それに伴って心臓も早鐘をうつ。その瞬間が終わるとゴールテープを切ったかのような爽快感と疾走感。そこで今まで呼吸が浅くなっていたことに気付かされる。

今回は全編、小学生が主人公です。
でもわたしが全編を通して好きなキャラクターは磯憲(先生)です。なのであとがきは感動ものでした。
小学生の時に素敵な先生と巡り合うというのは、本当に素晴らしい体験だと思う。羨ましい。
一番好きなお話は、「スロウではない」。ラストで思わず泣いてしまって。ちなみに、ラストが一番すっきりしたのは「非オプティマス」。

最近はメンタリストDaiGoさんの動画ばかり見ているのですが、その中で、今回伊坂先生が敵として取り上げている、先入観や圧力で人を侮辱してくる人たちが結構出てくるんですね。わたしもよく被害に遭うので、動画を観ながら対策を勉強しているのですが。まさか伊坂作品でこうして出会うとは思っておりませんでした。普段から人の顔色ばかり窺っている、という人には、とてつもない爽快感と、少しの勇気をもらえます。カバーに記載されている「伊坂幸太郎史上、最高の読後感」。期待を裏切らないよ。ちょっと欝々としてきたこの自粛の日々に、これほどまでに気持ちを高めてくれる作品に出会えて、本当に幸せ。

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