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青色が好きだ。 青色は夕暮れの色。 一日のうち、その色が見られるにはわずかな時間でしかない…
「おやおや。随分と懐かしい名前で呼ばれたものだ」 老女はこちらを向くと歯のない口で笑った…
歪んだ一族と呼ばれても仕方がない。 「ツノがある東館家」 東館の本家を継ぐにはツノがなくて…
布団からいろんなものが出てくる。 片方だけの靴下。揃った靴下。百円玉。レシート。潰れたテ…
布団から手を伸ばして、触れた本を読む。 休みの日はそうすることに決めている。 そしてそれを…
街中が奇妙な噂で持ちきりだった。 一斉に広まった噂を、聞かないフリで店に入る。 鼠が「いら…
Kさんはまた出張のようだ。 東ヨーロッパに近いうちに行くという話を聞いていたような気がする。 Kさんに会うのは、たいてい土曜日。 僕のバイト帰りと、Kさんが買い物やトレーニングから帰って来るのとが、たまたま一緒になった時。 僕はパン屋でバイトをしている。 早朝に店に行きパンを焼く。時折前の日の夜に仕込みも手伝うことがあるが、たいていは4時に店に行きパンを焼き、翌日の下準備をして11時に店を出る。日曜日は休み。パン屋の主人はクリスチャンで、日曜日は朝から礼拝に行く。 Kさんと毎
土曜の夜。友人の豊洲の店で酒を飲む。 店の奥では豊洲の娘さんがタロットカードで占いをして…
私が10歳ぐらいの時だったと思う。ある抽斗を開けたら中からビニル袋に入ったたくさんのマッ…
日本ではアメリカ製の車がなかなか売れないというので、日本向けの新たな商品が提示された。そ…
「待たせた」 Mがコーヒーを淹れて部屋に戻ってきた。 「いいのかい?水物なんて」 とKが言う…
雪化粧をしたところでその場所の黒さは隠れようがない。 曇空の下。渡り祭祀は真っ白な封鎖地…
「やれやれ」 目の前の惨憺たる状況を見てFは手にしていた銃をホルダーに戻した。 「遅かった…
課題というのはそれをこなすのも大変だけど、出す側も大変だと、高校の教師になってつくづく思う。 そして自分はなにゆえ「現国」を選んだのだろう?同じ国語でも古典ならこんな苦労はなかったに違いない。 生徒たちの小論文の課題を採点・添削しながらぶつぶつ呟く。 800字。400字原稿用紙2枚。 夏休みの読書感想文など原稿用紙5枚とか書かされていたはずが、何故2枚書けないのか?途中で力尽きているものも多くある。 どこかの何かをまるまるパクった内容で、最後だけ、テーマに寄せて結論を書いては