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掌編2024

169
2024年の創作物です
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2024年1月の記事一覧

【59夕日】#100のシリーズ

青色が好きだ。 青色は夕暮れの色。 一日のうち、その色が見られるにはわずかな時間でしかない…

たつきち
4か月前
9

【58春告げ鳥】#100のシリーズ

「おやおや。随分と懐かしい名前で呼ばれたものだ」 老女はこちらを向くと歯のない口で笑った…

たつきち
4か月前
13

【ツノがある東館】#毎週ショートショートnote

歪んだ一族と呼ばれても仕方がない。 「ツノがある東館家」 東館の本家を継ぐにはツノがなくて…

たつきち
4か月前
30

【布団から】2#シロクマ文芸部

布団からいろんなものが出てくる。 片方だけの靴下。揃った靴下。百円玉。レシート。潰れたテ…

たつきち
4か月前
18

【布団から】#シロクマ文芸部

布団から手を伸ばして、触れた本を読む。 休みの日はそうすることに決めている。 そしてそれを…

たつきち
5か月前
22

噂と狐

街中が奇妙な噂で持ちきりだった。 一斉に広まった噂を、聞かないフリで店に入る。 鼠が「いら…

たつきち
5か月前
12

隣人(003)

Kさんはまた出張のようだ。 東ヨーロッパに近いうちに行くという話を聞いていたような気がする。 Kさんに会うのは、たいてい土曜日。 僕のバイト帰りと、Kさんが買い物やトレーニングから帰って来るのとが、たまたま一緒になった時。 僕はパン屋でバイトをしている。 早朝に店に行きパンを焼く。時折前の日の夜に仕込みも手伝うことがあるが、たいていは4時に店に行きパンを焼き、翌日の下準備をして11時に店を出る。日曜日は休み。パン屋の主人はクリスチャンで、日曜日は朝から礼拝に行く。 Kさんと毎

【57ポーカー】#100のシリーズ

土曜の夜。友人の豊洲の店で酒を飲む。 店の奥では豊洲の娘さんがタロットカードで占いをして…

たつきち
5か月前
17

馬酔木

私が10歳ぐらいの時だったと思う。ある抽斗を開けたら中からビニル袋に入ったたくさんのマッ…

たつきち
5か月前
12

【アメリカ製保健室】#毎週ショートショートnote

日本ではアメリカ製の車がなかなか売れないというので、日本向けの新たな商品が提示された。そ…

たつきち
5か月前
16

暗号解読

「待たせた」 Mがコーヒーを淹れて部屋に戻ってきた。 「いいのかい?水物なんて」 とKが言う…

たつきち
5か月前
11

【雪化粧】#シロクマ文芸部

雪化粧をしたところでその場所の黒さは隠れようがない。 曇空の下。渡り祭祀は真っ白な封鎖地…

たつきち
5か月前
22

笑う暗殺者

「やれやれ」 目の前の惨憺たる状況を見てFは手にしていた銃をホルダーに戻した。 「遅かった…

たつきち
5か月前
15

【56 課題】#100のシリーズ

課題というのはそれをこなすのも大変だけど、出す側も大変だと、高校の教師になってつくづく思う。 そして自分はなにゆえ「現国」を選んだのだろう?同じ国語でも古典ならこんな苦労はなかったに違いない。 生徒たちの小論文の課題を採点・添削しながらぶつぶつ呟く。 800字。400字原稿用紙2枚。 夏休みの読書感想文など原稿用紙5枚とか書かされていたはずが、何故2枚書けないのか?途中で力尽きているものも多くある。 どこかの何かをまるまるパクった内容で、最後だけ、テーマに寄せて結論を書いては