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【ツノがある東館】#毎週ショートショートnote
歪んだ一族と呼ばれても仕方がない。
「ツノがある東館家」
東館の本家を継ぐにはツノがなくてはならない。
本家にはツノのない者は生まれない。
が、番いとなる者にもツノがなくてはならない。
東館の一族のどこかに赤ん坊が生まれるたびにツノの有無を調べられる。
初めから表にツノが出ている者は、本家筋でしか見られない。
ツノがあるとわかると、乳飲子のうちから本家預かりとなる。
一本ツノは人の心を読み、二本ツノは未来を読むとされている。
「此度は二本ツノの男児でございます」
十八代当主がチラリと此方を見る。
僕は黙って頷く。
相手の言葉に嘘偽りはない。
ツノを持つ者は本家の館から出ることなく育てられる。
この子は僕の娘の婿となるかもしれない。
まだ生まれてはいない僕の娘。
二本ツノを持つ母と、同じく二本ツノを持つ妻が安心したように互いの顔を見ていた。
二本ツノが知り得る未来は自分たちが死ぬまでの未来だ。
もうしばらく東館は続くようだ。
僕はそっと部屋を出た。