「完璧じゃない」が「正解」
column vol.597
実は、昨年末からとある商業施設で子育てママたちのコミュニティデザインに取り組んでおり、子育てママの日常の大変さ、課題をお聞きする機会が増えています。
そんな中、男女平等が進むフィンランドで、「悪いお母さん」の支持が広がっているというニュースを目にし、釘付けになりました。
〈AMP / 2022年3月12日〉
一体、どういうことなのでしょうか…?
「完璧」は時に刃となる
実は「悪いお母さん」の正体はママさんのためのコミュニティ。今や15万人を超えるフォロワーを持つほどの人気となっています。
「Huono Äiti(悪いお母さん)」の創業者は2児の母親でもあるサリ・ヘリンさん。
コミュニティをつくった経緯をこのように話します。
「すべての母親は、私は子どもにとって十分な母親なのか、家庭の責任と仕事やその他の活動とのバランスをどう取ればいいのか、といった普遍的な疑問を抱えていると思います。さらに、十分でない自分や生活に劣等感を持ってしまうんです」
母親が抱きやすい「劣等感」を共有する。
「完璧である必要はない」というメッセージを伝え、ネガティブな気持ちを癒やす場として機能しているそうです。
フィンランドと言えば、男女平等の意識が高く、子育てしやすい国として知られており、男女平等ランキング2021では2位を獲得。
首都のヘルシンキはワーク・ライフバランスが良い都市2021で1位に選ばれていますが、育児休暇を取得するのは多くが女性であり、子どもの習い事や学校の活動に関与する割合も母親が多いとのこと。
大変な状況にも関わらず、責任感から心に負担を感じてしまう。
それを「完璧ではなくても良い」と想いをシェアすることで、仕事や家事、育児に前向きに向かえるような一助になっているということですね。
「悪いお母さん」と企業がコラボ
面白いと思ったのが、同コミュニティは15万人というフォロワー数の影響力を活かし、インフルエンサー事業を行っているそうです。
ノルウェーのシューズブランド「Viking Outdoor Footwear」とは、6年間にわたりコラボレーションを継続。
「悪いお母さん」が商品をPRするコンテンツを作成し、コミュニティのメンバー向けに発信しているのです。
他にも、さまざまな企業とコラボレーションした自社ブランド製品を販売。
現在、シャンパン、チョコレート、魚の缶詰、レトルト食品、ビタミン剤を扱い、フィンランド国内のスーパーマーケットなどで販売されています。
「製品をつくるときに配慮するのは、原材料です。新鮮で健康的な食品であることを心がけ、地元の食材をメインとして、国内で手作業によって作られています。また、環境にも気を配り、リサイクル素材で梱包されています」
まさに「悪いお母さん」は「素晴らしいお母さん」。
社会に貢献しているのです。
改めて語る「共創価値」の時代
少し話は逸れてしまうかもしれませんが、「完璧ではない」というのは今の時代において非常に重要なキーワードであると思います。
未完成な商品をあえて世に送り出し、ユーザーの声を活かして完成させることを「共創価値」と言います。
自分が参加した(関わった)ことがロイヤリティを生む。
一緒に創り上げたことがファン心理をくすぐるわけです。
この考え方は【「未完」が「完成」を凌駕する時代】など、何度か紹介させていただきました。
最近の事例で言いますと、ドコモの「少し先の未来とデザイン『想像する余白』展」でしょう。
〈FASHIONSNAP.COM / 2022年3月14日〉
大きな特徴は、あえて未完成のプロトタイプを展示すること。
併せて、着想に関連したキーワードや構想の過程でのスケッチ、デザイン画、素材などで空間を構成・展示するそうです。
未完成のプロトタイプとアイデアの過程を提示することで“想像する余白”をつくり、見る人の想像力を喚起しようというわけです。
「余白」を参加者の想像力が彩り、完成する。
非常に今の時代らしい取り組みですね。
六本木の「21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3」で、3月19日(土)~27日(日)の期間で開催しているので、要チェックしたいと思います。
「完璧じゃない」が、キーワードです。
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