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60歳からの「楽しい仕事」

column vol.683

先月、【「プラチナエイジ」の新しい挑戦】という記事で、「70代」の仕事検索数は、2017年2月~2022年2月の間に、53.7倍に急増していると書きましたが、最近、100年人生時代の新たなキャリア形成が広がっていると感じます。

65歳以上の就労で見ても、総務省が2021年に発表した高齢者に関する統計によると、2020年は906万人で過去最高となりました。

帝国データバンクの調査では、いま、正社員も非正規社員も人手不足が懸念されており(2022年2月時点)、今後、プラチナ世代(シルバーに変わる新たな表現)へのニーズが高まりそうです。

プラチナ就労の代表格が「シルバー人材センター」でしょう。

まずは同センターの現状についてご紹介させていただきます。

105才にして現役!生きがいに

シルバー人材センターとは60才以上を対象に仕事を紹介している団体です。

全国の市区町村の8割約1300団体(2022年3月現在)が設置され、60才以上の会員に臨時的・短期的・軽易な就業を提供。

中には、105才にして現役で働いている人もいるそうですよ…(驚)

〈介護ポストセブン / 2022年6月7日〉

過去に、ギネス世界記録に認定された92歳の現役総務部員玉置泰子さんについてコラムでお話しさせていただきましたが、それ以来の驚きです。

シルバー人材センターがマッチングする仕事も

●空き家の維持管理業務
●故郷にいる親御さんの話し相手になる仕事
●パソコンが使えない高齢者に代わり、ネットスーパーの買い物やワクチン接種のネット予約を行う仕事
●要介護者宅の掃除や食事づくり
●放課後児童クラブや保育所での子供の世話

などなど、多岐にわたってあるそうで、「これだったらやれそう」「これだったらやりたい」という業務に出会える可能性が高くなっています。

また、スキルアップ支援にパソコン講習などを開催しているそうです。

また、センターごとに企画しているサークル活動も盛んで、働くだけでなく “プラチナ世代の居場所”としての役割もセンターが担っています。

業務時間も、概ね月10日程度以内の臨時的・短期的業務または概ね週20時間を超えない軽易な業務というルールで、無理せず、楽しく就労できる環境づくりを行っています。

60歳からの「事業創造」も可能に

また、興味深いと思ったのが「独自事業」というプロジェクトです。

これは、各センターの地域色を生かした事業を独自の裁量で創出し、運営する取り組み。

例えば兵庫県芦屋市では、会員が3人集まれば新たな独自事業を提案でき、センターの承認を経て事業化できるそうです。

それで立ち上げた「小町カフェ」では年間延べ1200人「キッチンカフェなりひら」では年間延べ3000人の就業が実現したそうです。

また、独自事業で抜きに出ているのが福井県の大野市シルバー人材センター

2002年に野菜直売所「ねんりんの里」を開設し、女性を中心とした高齢者の雇用を創出しています。

〈NEWSポストセブン / 2022年6月10日〉

その後も事業を発展させ、農産物の生産→加工→流通・販売という6次産業化の仕組みを確立。

長年の取り組みが評価され、2021年には内閣府男女共同参画局「女性のチャレンジ支援賞」を受賞しています。

同センター事業課長の山田歩弓さんのお言葉に非常に感銘を受けます。

福井県の面積の20%を占める大野市は、おいしい食材の宝庫。そこで直売所『ねんりんの里』を開いたのですが、会員であれば誰でも野菜の持ち込みができるという点が、当時としては画期的なシステムでした。その後、残った野菜を無駄にしないため、旧小学校の給食室を利用して梅干しなどの加工品をつくりました。
この活動を評価してくださった大野市から、使われていない会議室を有効活用してほしいと要請を受け、お休み処『ねんりん茶屋 のーそん』をつくり、さらに新事業の弁当店『まごころ食堂』も始動。今あるものをより良くするために行動した結果、事業が拡大していました。

「独自事業」の運営は同センターが支援してくれるので、そこも安心なところ。

こういう取り組みがあると、60歳以降の人生に楽しみが湧いてきますね。

民間の高齢者派遣が活況に

民間でも高齢者限定の派遣会社が活躍しています。

「高齢社」社長の村関不三夫さんは

現役世代の人手が足りていない業務や、時期を埋めることができて、人生経験も豊か。高齢者へのニーズは、今後も高まると思います。

と、これからの時代を見通しています。

〈介護ポストセブン / 2022年6月4日〉

もともと同社は東京ガスのOB25人でスタート。

ガス機器の使用説明や点検作業は休日に行うことが多く、これまでは正社員が本業の合間に担務していたそうです。

そこで、経験も豊富で気力もあるOBの方々の力を借りようと同社を設立。

今は事務作業スーパーの店員制服の洗濯・アイロンがけビル屋上緑化の維持管理など、他分野の仕事が4割に拡大しているそうです。

高齢社では1つの業務を複数人で分け合うワークシェアリングを基盤としており、基本は週3日自分の都合のよい時間に働くという形。

ユニークなところでは、家電機器の修理サービス車に同乗して駐車違反を防ぐという業務もあり、人気の仕事の1つとのこと。

しばらく働いていないという主婦の登録も受け入れているそうです。

「受け入れ」ということで言えば、「All about」【経営者側は「60歳定年後も働く人」をどう考えている?】という記事が参考になります。

〈All about / 2022年5月12日〉

厚生労働省「令和2年 高年齢者の雇用状況(6月1日現在)」によると、65歳定年制の企業が増加

「66歳以上が働ける制度のある企業」33.4%「70歳以上が働ける制度のある企業」31.5%で、大企業・中小企業を問わず前年より3ポイント程度増加しています。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構が2019年5~6月に行ったアンケート調査「高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」でも、半数近くの企業は65歳以降の雇用にも条件付きで取り組んでいるそうです。

雇用確保措置が必要と考える理由についても

●意欲と能力があれば特に労働者の年齢は関係がないため…76.3%
●高年齢者の身に付けた能力・知識などを活用したいため…61.1%
●まじめに働いてもらえるため…27.3%
●若年者を採用できないため…25.7%
●若年者に技術や仕事姿勢への教育効果を期待できるため…24.6%

というように、歳を重ねて培った経験に期待する声も多いようです。

経験に甘んじることなく、常に自分磨きを続けていたら、セカンドキャリアの可能性もグググっと広がっていきそうです。

これからの人生にも期待を持って歩んでいきたいと思うプラチナ世代の取り組みでした。

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