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「小売業」の革新の本質

池 辰彦

column vol.739

これまでも度々コラムで取り上げておりますが、小売業はコロナ禍で急速に変化しています。

最近も革新的取り組みについての記事が多かったので、本日はその内にいくつかをご紹介したいと思います。

ヘルスケア市場への参入が進む米小売業

まずは、アメリカのトレンドからご紹介いたします。

最近ではお馴染みになって参りましたが、小売企業が続々とヘルスケア市場への参入を強めています。

中でも直近のトピックと言えば、Amazonが先月21日、メディカルケア企業「One Medical」の買収(推定39億ドル、およそ5,200億円)を発表したことでしょう。

〈ビジネス+IT / 2022年7月30日〉※無料会員記事

すでに同社は、Amazon CareAmazon Pharmacyを展開しており、今回の買収で同社のヘルスケアサービスはさらに強化されます。

リアル店舗の王者として君臨するウォルマートでも医療やヘルスケアにデジタル技術を活用する「デジタルヘルス」の分野を成長の柱にしています。

〈ビジネス+IT / 2022年4月21日〉※無料会員記事

同社は全米に5000店舗以上を展開し、その多くが薬局を併設

この利点を生かし、エリア顧客に処方箋薬のデリバリーサービスを計画し、自動運転ロボットによる「注文から30分以内の薬の宅配」なども目指しています。

全米どこにでもあるウォルマートのような店舗に、薬局だけではなく簡単なケアを行う施設にて医療活動処方箋薬の提供を同時に行うことで、アメリカの医療制度を改革できるという期待があります。

特に安売りを“ウリ”とする同店ではアメリカのマイノリティーへの浸透が強い

そのことに鑑みても、現在のアメリカの医療による人種的不平等を解決できる可能性があると見られているのです。

ウォルマートだけではなくベストバイターゲットなどの大手企業が「黒人コミュニティへの改革を目指す同盟」をつくり、主にデジタルヘルスによる安価で手軽な医療ケア提供を試みているのです。

アメリカの医療サービスは年間で3兆ドル規模

この巨大産業に対して、いかに小売企業が力を発揮していくのか?

ますます目が離せない展開になっております。

地方創生のためのビジネストレーニング

国の課題を小売業をステージにし解決しようとする試みは日本でも見られておりまして、最近では「地方創生」における好事例がありますので、そちらをご紹介させていただきます。

三菱地所中川政七商店は今月2日、東京駅日本橋口前の「TOKYO TORCH」街区の銭瓶町ビルディング1階「ぜにがめプレイス」に、「アナザー・ジャパン」の第1期店舗をオープン。

学生に経営のトレーニングの場を提供しています。

〈流通ニュース / 2022年7月27日〉

アナザー・ジャパンは、店舗運営に関わる全ての業務を18人の学生が担い、全国6ブロック×2ヵ月ごとの企画展を展開。

地方の魅力的な産品を紹介する体験型店舗を運営するプロジェクトとなります。

初回企画展として、九州・沖縄出身の学生が企画した「アナザー・キュウシュウ展」を実施。

九州・沖縄地域産品約350点が揃います。

同プロジェクトは、三菱地所がプラットフォームを提供し、中川政七商店が小売業のノウハウを教育およびメンターとして学生の経営に伴走。

アナザー・ジャパンを通して地域・経営を学び、将来自分の働く場所として地元を選択肢の一つにするなど、地方に若い世代が戻ることによって、地方創生に繋げようとしているのです。

アナザー・ジャパンは、約5年の歳月をかけ育てていく中長期型プロジェクトで、2027年度には第2期店舗Torch Towerに開業予定。

中川政七商店中川政七会長は

地元奈良の大学で学生を教えるうちに、若い世代のポテンシャルの高さに驚き、その力を生かしたいと思った。

と学生たちに期待。

地方創生には人が重要で、そのための人財を育てようと意気込んでいらっしゃいます。

この機会に学んだ若き力が今後どのように地方の力になっていくのか。

こちらも目の離せない展開ですね。

異業種からも小売業への参画

最後は、逆に異業種から小売業へと領域を広げている事例を1つ挙げて締め括りたいと思います。

都内11店舗調剤薬局などを経営する田辺薬品が2020年にオープンした「薬局ランタン千歳烏山店」は、数ある薬局の中でも異色の存在感を放っております。

何と、軒先には、独自に見つけてきた契約農家から毎日届けられる新鮮な野菜が並び、温かみのある照明と木目調のインテリアに彩られた店内には、カフェのようなゆったりとした空間が広がっているのです。

〈Wedge ONLINE  / 2022年8月6日〉

処方箋がないと薬局に入れない

そう敷居が高く感じてしまう人もまだまだ多い中、そういったイメージを払拭し、ただ薬を渡す〝以上〟のコミュニケーションを通じて、患者と信頼関係を築いていこうとしています。

実際、に関しては『専門家』『患者』という関係性ができてしまいますが、野菜は多くの人にとってフラットに話せる〝共通言語〟であるため、目線の合った会話ができるとのこと。

事実、野菜の調理法などで話が盛り上がり、そこから健康相談の話に繋がることも多いようです。

同店では他にも、管理栄養士による無料の栄養相談や、野菜摂取の充足度を測定することができる機器「ベジチェック」による健康サポート、おむつ交換充電場所の提供など多種多様なサービスを提供

顧客との対話のチャネルを多く持つことで、他の薬局との差別化を図ることに成功しています。

考えてみると、小売業は「顧客接点業」とも言えます。

そこに魅力を感じて実店舗を持つメーカーも多くあるわけで、今回の事例はそんな小売業の本質に改めて気付かされるきっかけとなりました。

いかに顧客と対話し、ニーズを商品に変え提供していけるのか。

アメリカの小売業はコングロマリット経営(多業種複合企業経営)にシフトしていますが、まさにこの小売業の本質を体現していることに他ならないと感じます。

日本の小売業もこの点にどのように向き合えるかが肝要となるでしょう。

私も革新の核を見失わないようにしながら、日々のマーケティング活動に力を注いでいきたいと思います。




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池 辰彦
株式会社ジャパンライフデザインシステムズ/副社長/小売業協会・生活者委員会コーディネーター/小売業を中心に、マーケティング・コンサルタントとして企業のビジョン策定、中長期戦略、顧客調査、販促立案、広告戦略などを行う。Web:http://www.jlds.co.jp/