Webマーケティングは次の時代へ
column vol.588
ここ最近、広告業界に大きなニュースがありました。
電通は毎年、前年の日本の広告費を推計して発表しているのですが、ついに、インターネット広告費が2兆7052億円(前年比21%増)となり、「マスコミ4媒体」(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の2兆4538億円を初めて超えました。
〈東洋経済オンライン / 2022年3月3日〉
私が社会人になったのは、今から20年以上前になりますが、当時マス4媒体は完全なる四天王で、テレビ広告はまさに王様。花形でした。
ところが、2009年に新聞広告がネット広告に抜かされ、そして10年後の2019年には、ついに王様であるテレビ広告も抜かされてしまいました…。
そして、四天王が揃っても勝てなくなったのが、昨年…。
もちろん、マーケティング業界にいるので、この推移は感じているものの、このように結果を改めて見ると、何とも複雑な気持ちになりますね…。
そして、王様が変わったことで、最近、メディアミックスの形も変わってきました。
「雑誌広告」が注目の的に
広告媒体は、競争しつつも、協調する。さまざまな媒体を組み合わせることで相乗効果が生まれます。
業界的には「メディアミックス」と呼ばれるのですが、これは「王様」を軸に展開されます。
今まではテレビ広告を中心に、テレビ広告では説明仕切れない情報を新聞広告などが補完してきました。
しかし、2年前にネット広告が王様になったことで注目されるようになった広告媒体があります。
それが「雑誌広告」です。
新聞や雑誌などはデジタル化もされているので、電通は2018年からインターネット広告費の中に「マスコミ4媒体由来のデジタル広告費」という項目を設けたのですが、2021年版では新聞213億円、雑誌580億円、ラジオ14億円、テレビ254億円と、雑誌広告が突出しているのです。
(ちなみに、雑誌の紙媒体は1224億円)
なぜ、雑誌由来広告(ネット×雑誌)が多いかというと、お互いがセグメントメディアであるということです。
特定のジャンル、特定の興味範囲を明示し、そのカテゴリーに興味がある人を集めるので、上手くいけばコミュニティを形成することもできます。
これだけ市場(嗜好)が細分化した世の中なので、よりターゲットのプロフィールが明らかでピンポイントでアプローチできるのは、非常に効果的です。
ネット×雑誌というのは、今後ますます熱くなっていくでしょう。
「プライバシー保護」が厳しい時代の着眼点
それから、ターゲッティングということで、もう一つ注目すべきトピックがあります。
個人情報保護法が2020年に改正され、今年4月1日から施行されるからです。
〈ITmediaビジネスオンライン / 2022年3月3日〉
Cookieなどのオンライン識別子の利用に同意取得などが必要になったり、自国の中に個人情報を置く「データローカライゼーション規制」が定められるように。
サードパーティーCookieの利用制限や、モバイル広告IDの利用制限などが行われるなど、規制が厳しくなるのです。
例えば現状、私がサイトAにアクセスすると(ファーストパーティーCookieの発行)、たくさんの広告バナーが貼られており、広告に紐づいたサイトBにもアクセスしていることになります(サードパーティーCookieの発行)。
要する改正個人情報保護法は、不本意な「個人情報」の取得や提供を防ぐための方策なのです。
これにより、IT企業に大きな変化をもたらすと言われます。
サードパーティーCookieを利用して急成長してきた企業は今後厳しくなりますし、逆に、自ら顧客に同意を取った上でデータを集められる企業は大きく発展していくでしょう。
つまり、IT企業の選別化が進行する。
データ収集や管理を得意とするCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)や、顧客へのレコメンドやプッシュ通知などを最適化するMA(マーケティング・オートメーション)ツールなど、ファーストパーティデータを活用するためのSaaS(クラウドで提供されるソフトウェア)が非常に伸びていると見受けられます。
Webマーケティングは、次の時代へ走り出しています。
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