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「出世」はなぜ必要か?

column vol.174

昨年末に社会人学生えぬけいさんの【『出世には興味がありません』その先に待つ現実】という記事を拝見して、とても共感いたしました。

えぬけいさんは、報酬や責任、時間などの理由で敬遠する方の気持ちを理解されながらも、「プレイヤーとしてずっと生きていく」難しさを指摘されています。

えぬけいさんが仰る通り、プレイヤーとしてバリバリ現場で働くというのは30代が一つのピークだと思います。

私は今の会社でアルバイトから副社長まで経験してこれたので、その経験を元に、今日は「出世」についてお話ししたいと思います。

一生プレイヤーでいると、どうなるのか?

どこの会社もプレイヤーとしての役割はどうしても限定的です。ある程度のキャリアに到達すると、プレイヤー業務において社歴の差は無くなってきます

会社によってOJT期間は異なると思いますが、例えば、入社3年で一人立ちしたら、プレイヤーでいる限り、3年目も10年目も、20年目もやることはそこまで変わらないのです。

もちろん、年数によって得られる経験や能力の向上はありますが、恐らく成長は年々鈍化していってしまいます。例えば、10年選手がこの1年の成長と、入社1年目の成長と比べてみたら…、ということです。

1年目5年目では明らかに差がありますが、5年目10年目はどうでしょう?10年目15年目は?15年目20年目は?プレイヤーとしてそこまで差があるでしょうか?

そうなると、給料を年数分上げられなくなってしまいます

いやいや、「自分は同じプレイヤーの中でも社歴分突出しているはずだ」と思っている方がいるかもしれません。もしも、そうだとしたら、その人は独立してもやっていけるような凄い人。今の会社に不満があるなら、飛び出した方が賢明です。

「出世したクライアント」の相談相手になれるか?

今度はクライアントとの関係で考えたいと思います。

ウチの会社を例に出すと、商業施設のクライアントが多いので、当社のプレイヤーはそちらの会社の販促担当の方とお仕事をします。

例えば、同世代のクライアントがいて、最初は当然、広告物や販促企画の担当となるので、クリエイターなら広告物の話をします。コピーライターだった私もそうでした。

ところが、その方は販促課の課長になれば、単体の施策ではなく販促全体の戦略や計画、成果を考えるようになります。そして、営業部の部長になれば、販促だけではなく、テナントに対する営業推進にも責任を持つことになります。

そして、さらに店長クラスになれば、開発部マネージメント部にも責任を持つようになります。もしも、私がコピーライター(プレイヤー)に固執してしてしまうと、その方の相談相手としては非常に限定されてしまいます。

多分、私がその方に広告物の提案をしようとしたら、「だったら、担当につなぎますよ」と会話がそこで終わってしまうでしょう。

そうなると、折角つながりがあるのに、しかも決裁権のあるポジションにいらっしゃるのに、その方のブレーンになることは難しいと思います。

もちろん、ブランディングなどのクリエイティブワークについては店長も関与するでしょう。でも、ブランディングを担える方は、グランドデザインができるクリエイティブディレクターのはず。いちプレイヤーとしてのクリエイターとはスタンス知識の幅が異なります。

店長がブレーンにしたいコンサルタントまたはクリエイティブディレクターに成長するか、販促担当に良い提案ができるプレイヤーでいるべきか?20年選手、30年選手がとるべき道はどちらの方が良いのでしょうか?

「成果を出しているのに出世しない」はなぜ?

クライアントとの関係で触れましたが、出世すると新しい役割を担うことになります。もちろん、課長、部長、役員と職位が上がるごとに携わるメンバーは増えますし、関わる業務も幅広くなります。

私のこれは個人的な感覚なのですが、職位が上がるごとに上に上がっているというよりは輪が広がっている感じがします。要するに積み上がっているというより、広がっているという感覚です

もしも、「がんばっているし、成果を出しているのに出世ができない」という方がいたとしたら、恐らく、次の職位の役割がイメージができてないか、評価する上司からまだその役割は任せられないと思われているかもしれません。

昇格は、それまでの実績「次の職位を担えるはずという期待で決まるからです。

しかし、他に人がいないからとか、年功序列ということによって、本人に次の職位を担う力と意識が無いのに昇格させてしまうことが往々にあります。

すると、ハンコを押すなどの業務上の仕事以外にやることが無くなってしまいます。なぜなら、本来担うべき役割が分かっていないか、できないからです。そうなると、「あの人、何しているんだろう?」という典型的な上司のイメージが出来上がってしまいます。

出世するとは「新しい役割を担うこと」

そうならないためにも、出世について立ち止まって考える必要があります。私は出世とは、「キャリア、年齢によって、自分に求められる役割を把握し、その役割を自ら担い、全うしていくこと」だと認識しています。

役職は後から付いてくるものだとも思っています。

例えば、酒造会社の課長がいて、同期が部長に昇進したとします。しかし、その課長はコスメ関係に強くて、麹の力を活かした化粧品を開発したとします。それが社内と社会に認められれば、コスメ事業部が誕生し、その方は部長になります。

そして、同期が会社の社長になったとしても、コスメ事業部を発展させていけば、関連事業会社に成長させることができ、社長になります。ちなみに、その方がお酒よりもコスメの方が好きで得意分野だそしたら、どうでしょう。私だったら、コスメ関係の仕事を全うしたいです。

これは極端な話ですが、社会の中で、そして会社の中で、自分が貢献できる役割を自分で見つけてその役割を全うすることで、その人の存在価値が出ること「出世」だと思います。

私は、「自分よりもコピーの上手い後輩が出てきたな」と思い、ディレクターになり、「この後輩を早くディレクター経験させてあげたいな」と思い、プロデューサーに上がるなど、職位ごとに「このままだと自分は要らない人になっちゃうな」という危機感から、次の役割を目指し、気がついたら副社長になっていたという感じです。

だから、立ち止まっても大変、職位が上がっても大変。基本的にはキャリア(社歴)が長くなればなるほど、大変になることは同じだと思います…。

であるとしたら、どちらの道を選ぶべきか?

不安定な世の中において、今の会社がずっと存続するかどうかは怪しいものです。であるとしたら、プレイヤーの立場にこだわるのか?それとも、出世を目指してさまざまな挑戦と経験を積むべきか?

それが、私の思う「出世がなぜ必要か」の答えです。

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