「起業大国」のつくり方
column vol.712
本日は朝いちで選挙に行って参りました。
今回は、特に経済政策(賃上げ・減税)、改憲(防衛)について、大きな争点となりました。
日本の新しい政治体制に期待しつつ、一方で政治だけでは国(社会)は変わらない。
民間の努力も同時に必要だと考えております。
賃上げ1つとっても、政治家の努力と同様に企業経営陣の努力も求められる。
経営を司る者としては、政治に期待するなら自分にも…と背筋が伸びる想いです…(汗)
結局は一人一人の意識が社会を変えていく。
私個人の理想を一つだけ語らせていただくと、日本がもっと「起業をしやすい国」になると良いと願っております。
行政による金銭的な支援や情報提供の強化だけではなく、リカレントも含めた教育、そして民間企業でも起業家採用(一定の生活の安定を生む)を推進するなど、社会全体でチャレンジしやすい環境づくりを行えると良い。
ちなみに起業と言えば、中村幸一郎さんの著書『スタートアップ投資のセオリー 米国のベンチャー・キャピタリストは何を見ているのか』に注目が集まっています。
〈DIAMOND online / 2022年7月9日〉
スタートアップやイノベーションという言葉とは縁遠かったスウェーデンでしたが、アメリカ式のナレッジを取り込み、スポティファイが成功したことで、その後、欧州のスタートアップ文化を大きく変えたことは有名な話です。
ロールモデルが1つできると、社会は大きく変容する。
その好事例を紹介した本なのですが、もう1つ私が最近面白いなぁと思ったのがイスラエルの事例です。
条件が違いすぎるアメリカより学べることは多いという話なのです。
世界一の起業大国「イスラエル」
イスラエルでは国民1600人に1人が起業家であり、1人当たりのベンチャーキャピタル資金獲得額が世界一。
国民1人当たりユニコーン企業輩出率においても、アメリカを抜いてイスラエルは世界一となっております。
〈東洋経済オンライン / 2022年6月29日〉
また、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツさん、アップル創業者のスティーブ・ジョブズさん、グーグル共同創業者のラリー・ペイジさんとセルゲイ・ブリンさん、フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグさんなど、アメリカの大富豪にもイスラエルと同祖のユダヤ系が多いことが知られています。
しかも、驚くべきことに、イスラエルは起業環境において日本に並んで「最悪」と評価されるのにもかかわらず、この偉業を成し遂げているのです。
一方、日本は世界47ヵ国を対象とした起業家精神調査「Global Entrepreneurship Monitor(GEM)2021/2022年版」によれば、起業家精神に関する6つの項目のうち、日本は
「周囲に起業家の知人がいる」
「自分には起業の機会があると思う」
「自分には起業の能力や技能があると思う」
の3項目で断トツの最下位、「起業志向」の項目では46位となっています。
もちろん、裏を返せば「大企業や公共団体など安定的な就労先が無数にある」とも言えますが、それでも比較的豊かな国のみを対象とした場合にも、日本はほとんどの起業家精神指標で断トツの最下位となっています。
「社会的・文化的規範」の不足
一般的な会社員・公務員の家庭で育った人は、起業や経営を身近に感じることは無いのではないでしょうか?
逆に周りで起業している人の多くは、親が経営者(そこまでいかなくても個人事業主)であることが多い気がします。
イスラエルの企業家精神は「家庭」で育まれる
逆にイスラエルでは「社会的・文化的規範」が突出していると言われています。
社会的インフラで見れば、政府の支援も大学での起業教育も十分でなく、新規参入への政府の規制や市場の評価もシビアという、厳しい起業環境にあります。
しかし、イスラエルの家庭は、日常の問題を経営教育の場として捉えており、「起業や企業経営が身近に感じられる」という社会的・文化的な規範を持っているのです。
例えば、「金魚を飼いたい」4歳児と、「金魚を飼ってくれない」親の意見が対立した場合、同国では「経営教育の場」と捉えるそうです。
両者の共通目標は「親子で仲よくする」で一致している。
ですから、対立を「より高次なレベルで両立させるというゲーム」と位置付け、落とし所を探り合います。
子供の要望は「金魚を見たい」、親の要望は「金魚の世話をしたくない」ということがお互いに分かると、子供から
「じゃあ、幼稚園の帰りに金魚屋さんに連れてって」
という解決策を自ら考え、提案するのです。
また、1990年には、イスラエルにおいて、Ofra Segevという教育者と教育省が主導して、幼児に対して対立する要求を高次の要望と区別させる教育を行いました。
その結果、幼児たちは他者との衝突を論理的に解決できるようになり、暴力はほとんど無くなったそうです。
起業を含む広い意味での「経営」は、2人以上の人間が集まった時に必要となります。
そのためには、他者との対立を高いレベルで解消し、自分の目標に対して他者の協力を得なければいけない。
イスラエル国民やユダヤ系移民たちは、こうした、起業家教育よりも広い意味での「経営」教育を家庭内で日常的に行っているというわけです。
そして、慶應義塾大学准教授の岩尾俊兵さんは、イスラエル家庭教育についての結論としてこのように語っています。
「人は誰しも自分の人生の経営者だ」という意識を持てば、日常生活の全てが経営教育の素材に変わるということだ。まずは、大人がそうした考えで経営を日々実践することがカギとなるだろう。
まさに人生経営の時代。
それは大人だって何歳になっても学び直せる。いくつになっても起業家精神、経営者マインドは育むことができるのだということでしょう。
三度も破産して諦めなかった男とは?
結局は一人一人の当事者意識が社会を変えていく。
選挙と同じです。
そして、何歳になっても諦めず、夢を抱く大切さは知る上での欠かせないのが、カーネル・サンダースさんの人生です。
〈PRESIDENT Online / 2022年6月26日〉
母の再婚により、10代で家を飛び出したサンダースさんは、職を転々としてきました。
陸軍、機関車の灰さらい、機関士、路面電車の車掌、ペンキ塗り、弁護士、保険外交員、フェリー会社の経営、商工会議所の秘書、ガスランプの製造販売、タイヤのセールスマン。
そして、30代でガソリンスタンドを経営し始めてからは、まじめで一生懸命な性格を全開させ、ホスピタリティ溢れる店舗を築き上げていきました。
その甲斐あって、40歳手前にして、ようやく商売が軌道に乗り始めたのですが、その後、人生が暗転…。
1929年、アメリカの株価暴落をきっかけとして世界的な大恐慌が発生し、全財産を失います…(汗)
ちなみに、この時の破産は2回目だったそうです…(汗)(汗)
しかし、それでも諦めず、別のスポンサーを見つけ、ケンタッキー州の別の場所で再びガソリンスタンドを開きます。
前のお店とは一つだけ違う点がありまして、それはカフェを併設したこと。
そして、ここのメニューとして出し、人気を博していたのが、後の人生を変える「フライドチキン」。
フライドチキンがヒットしたことで、カフェは大繁盛。
それを見たサンダースさんはガソリンスタンド事業を辞め、カフェ一本でやっていくことにし、支店をいくつか出すほど大成功を収めました。
このとき45歳。
しかし、65歳の時、近くに高速道路ができ、一般道を車が走らなくなったことから売り上げが低迷し、三度目の破産…(涙)
それでもサンダースさんは人生を諦めなかったそうです。
65歳から世界中で愛される伝説の人に
自分には母から受け継ぎ、カフェで成功した「フライドチキン」がある。
お金はなく店は持てないけど、レシピを売ることはできると考えたサンダースさんは、レシピを売り、フランチャイズで儲けることを考案。
そして、車でレストランを回り、門前払いを受け続けながらも、初年度は何とか7件の契約を獲得。
しかし、その7件のフライドチキンの評判が広がり、翌年からは爆発的にフランチャイズが拡大。
あっという間に数百店の規模に広がったそうです。
全米の店舗数が600を超えた時、サンダースさんは74歳に。
そして1980年、ケンタッキーフライドチキンの店舗数が世界で6000を超えた頃、90歳で生涯を終えたのです。
サンダースに限らず、歴史上の偉人は多くが遅咲きです。
ガンディー、孔子、劉邦も、桓武天皇、ヘンリー・フォード、ネルソン・マンデラ、安藤百福(日清食品創業者)、そして今年映画化された伊能忠敬も、皆遅咲き。
と考えると、人生いくつになっても「まだまだこれから」。
そういったマインドが起業大国の精神としては必要なのではないかと感じます。
結局は一人一人の当事者意識が社会を変えていく。
一人一人の成功が、社会の中で大きなうねりとなって、革新が生まれていく姿は、冒頭のスポティファイの話と通ずるところがありますね。
本日は参議院選挙に日。
私は選挙の日とは、政治に希望を託しながらも、一人の人間としての希望とこれからの行動を見つめ直す日でもあるかなと感じております。
もっと自分の人生を、自分事化できるように。
今日という一日をそのきっかけにしていきたいと思います。
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