40歳からの脳トレ学
column vol.574
昨日は【「思考力」を育む「傾聴力」】にて、自分と異なる考えに対して柔軟になることの大切さをお話しさせていただきました。
この時は心構えのような話でしたが、今日は科学的な根拠を少し補足させていただきたいと考えております。
特に私と同じ40代の方、上の世代の方には聞いていただきたい話です。
…なぜなら40代は「脳の曲がり角」だからです…。
「前頭葉」の老化を防ぐためには
40代になったら、まず認識しておきたいのが、前頭葉の老化が一気に進行します…(汗)
〈PRESIDENT Online / 2022年2月19日〉
前頭葉とは思考、自発性(やる気)、感情、性格、理性などの中心。人間が人間たる存在であるために必要な部分とも言われています。
40代になり、以前よりも「やる気が出なくなった」「新しいことが億劫になった」「まっ、いっかと思うことが多くなった」など、心に変化が生まれることが多々ありますが、これはまさに前頭葉の萎縮が影響していると考えられます。
ただし、もちろん、老化のスピードを遅らせる手立てはあり、大切なのは「新しい刺激」を与え続けることです。
日常的にも、いつもと違う道を通ったり、知らない場所に行ったり、普段食べないメニューを食べるだけでも効果があるそうです。
そして、国際医療福祉大学大学院教授の和田秀樹先生は、もう少し知的な前頭葉の鍛え方として、自分の思想とは真逆の、相容れない意見の記事や本をあえて読んでみることをお勧めしています。
自分とは相容れない意見やイデオロギーに触れたとき、人はついつい斜に構えてしまうものですが、それでも真正面から向き合ってみれば、意外な発見の1つや2つはあるかもしれません。仮にそうした発見が何もなかったとしても、「それは違うぞ」などと心の中で「ツッコミ」を入れながら読むことになりますから、前頭葉にはとても良い刺激になる、というわけです。
まさに、昨日のコラムに通ずるお考えですね。
中高年を勇気づける「神経可塑性」
また、日経ビジネスでも、我々中高年に希望の光を射す科学的知見が紹介されています。
〈日経ビジネス / 2022年2月15日〉
これまで、「脳は小児期を過ぎると変化しなくなり、 大人になる頃には固まってしまう」と言われてきましたが、この10年でその定説を覆すような研究結果が生まれています。
脳は生涯を通じて変化できる、プラスチックのように柔軟なものであるという新しい見解です。
つまりは、筋肉と同じで、神経細胞はよく使うことで機能を維持し、人生の後半になっても十分な認知能力を発揮できる。これを「神経可塑性」と言います。
神経学者マーセル・メスラムによると、年齢を重ねても認知機能の低下がほとんど見られない「スーパーエイジャー」と呼ばれる人たちには、頭をフル回転して難しい課題に取り組んでいるという共通点があったそうです。
人は死ぬまで学んだことに応じて脳が進化する。
スイスの神経科学者ルッツ・ジャンケルは楽器を習っている人を対象に調査を行ったところ、習い始めて5ヵ月が過ぎると聴覚、記憶、手の動きなどを司る脳の領域に大きな変化が見られたそうです。
それは65歳以上の方も例外ではなかったとのことで、「神経可塑性」を証明する研究結果となっています。
ドラッカーは60代で大ブレイク
日経ビジネスの記事では、史上最も偉大なマネジメント理論家と言えるピーター・ドラッカーの晩年の活躍に触れています。
実はドラッカーは大器晩成型のスーパースターなのです。
45冊ある著書のうち65歳以降に執筆したものは、何と全体の3分の2にも及ぶのです。
ドラッカーは95歳まで生きましたが、人生の後半で成功できた要因の1つは、好奇心のままに好きなテーマを研究したことだと言われています。
数年に一度、仕事とは全く関係のない、日本の華道や中世の戦法など、さまざまなテーマについて調べ、いつかその好奇心が「パラレルキャリア」の形成につながると考えていたとのこと。
ドラッカーのみならず、成功している科学者の多くが「多才」、つまり特定の分野の専門知識に加え、芸術、文学、音楽など、別分野の趣味を持っていることが判明しています。
年を重ねた人の脳は、多様な感覚や知識の刺激により才能が花開くということですね。
何より大切なのは、「認知の凝り固まり」を防ぐこと。
ここでも、やはり冒頭の「自分と異なる考えに対して柔軟になること」の大切さに繋がる話かと思います。
今の自分を全て正しいと思わず、上手に崩す。
それが、歳を重ねても輝き続けるためのポイントということですね。
人生の後半戦の大切なマインドセットにしたいと思います。
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