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社員が経営を「自分ごと化」するために

column vol.69

星野リゾート星野佳路さんは尊敬する経営者の一人ですが、今年、自社の「倒産確率」を公表して話題になっています。

〈読売新聞 / 2020年9月21日〉

公表した理由は「会社の施策に共感を持ってもらい、自分が何をすべきかしっかり考え、動いてほしいから」とのこと。この言葉はとても心に響きます。

この記事を受けて、私が副社長になった理由と、それによって行なったことを書きたいと思いましたので、今日はそんな話です。

2期連続の赤字、無駄の多かった旧組織…

以前、このnoteの記事にも書きましたが、当社は私の他、4つ上の先輩が副社長を務めていて、ツートップ体制で経営にあたっています。

二人が40代でありながら急遽副社長になったのには理由があります。実は恥ずかしながら、2016年度、2017年度は2期連続の赤字を出してしまい、改革が必要になりました。

もともと社長のタレント性で食べてきた会社でしたので、当時の役員体制の中でリーディングを他にとれる人がおらず、群雄割拠の競争組織でした。

当然、プロジェクトチームごとの縦割り組織で、ライバル関係でもある各プロジェクトリーダーが手柄と社員の取り合いを繰り返し、非常に生産性の低い状況でした。

例えば、とあるチームに大型案件が舞い込んでも他の役員やマネージャークラスは手伝おうともせず、仕方なく外部スタッフに協力を得たり、場合によっては分割受注(自分たちのできる範囲のことだけを受注)することもありました。

当時からそういった無駄のある体制に反発していた私は、上から見ると面倒臭いヤツ、そして後輩も予算と人を十分にあててくれる役員・マネージャーにつきたい人がその時は多かったので、まさに孤軍奮闘。毎日、酒を浴びるように飲む日々でした。

当社予定になかった私が急遽副社長に就任…

その結果の赤字。それなりに稼いでいるのに浪費経営によっての厳しい結果でした。ちなみに2018年度に入ると、見切りをつける社員が続々と現れ、約3割ぐらいが退職。結果、2018年度は人件費が減った分、黒字に転じることができました。

ただし、改革はその半年前に断行。当時社長は76歳で、社内では徐々に次の世代の背中を押す立場になっていました。社長は、各世代のメンバーと対話し、謙虚に耳を傾け、組織の暗部に迫り、20年、30年先の会社づくりを考えることができる40代・30代を幹部に据えることを決めたのです。

そして、2018年の下期スタート時点で、半年後の幹部体制の変更を発表。私もその中の一人でしたが、副社長は当初は4つ上の先輩だけでした。

先輩はとにかく器が大きく、上からも同世代からも後輩たちからも愛されており、リーダーとしては適任。以前の記事にも書きましたが、誰一人として取り残されることなく引き上げることができる大きな船だと思っています。

一方で半年の準備期間で社長は船に載せるエンジンが必要だと思ったらしく、新しい2019年度が始まる1週間前に副社長の辞令が下り、驚きを隠せないまま新体制がスタートしてしまいました…(汗)

社員の冷ややかな眼差しの中、まず行なったこと

器は大きいが引っ張るタイプではない先輩とパッションだけで生きる私。社長が偉大な存在であるだけに、社内での我々二人に向ける眼差しは厳しいものでした。しかも、それなりの競争組織なだけに、先輩社員や同世代社員は面白くなかったと思います。

前途多難な船出でした。

まずは対話をと思っても「忙しいから」といなされ、ミーティングを開催しても出席してくれません。多分、当時の若手社員から見ると「うわ〜バラバラだよ、この人たち」と思われていたでしょう。

それで、まずは幹部メンバーと対話ができる状況をつくるため、会社の収支を細かい部分まで全社員に公開。さらに、旧体制の体質を引きずったままだと数年後には厳しい未来が待っていることを伝えました。

その上で、決してヒエラルキーをつくらず皆の意見を尊重し、その上で全ての責任を我々二人でとる覚悟を伝えました。その証の1つとして、プロジェクトの人事権は、職種ごとにリーダーをたてて一任。我々も副社長とはいえ、プレイヤーとしてチームに所属しているので、もちろん自分がリーダーを務めるチームのメンバーも職種リーダーに決めてもらいます。

とにかく、まずは会社全体の利益を考えて行動することを訴えかけ、その代わり、各プロジェクトの全責任を我々で引き受けることにしました。当然、成果が出たチームはそのリーダーの手柄、上手くいかなかったチームは我々が責任をとる形で。

そうやって自分が思いつく誠意と覚悟をぶつけながら、そして、傷ついた心を毎日浴びるように飲むお酒で癒しながら、社員の心を一つにする努力をしました。

2019年度の決算賞与は自己最高掛け率に

そのかいあったか、なかったかは分かりませんが、2019年度の決算賞与は私が入社して以来最高の掛け率である3.5倍に(月給×3.5)。皆で喜びを分かち合うことができました。

今年度は御多分に洩れず、当社も新型コロナウィルスの影響で大幅に利益を落としています。正直、相当苦しい状況です…(涙)。

ただ、みんなが経営に対して自分ごと化しているのは痛いほど分かりますし、それは幹部だけではなく、社員一人ひとりから感じることができています。

昨日も決して営業が得意ではないデザイナーの幹部が新しい仕事を受注したと聞いてとても嬉しい気持ちになりました。

自分自身、この1年半で分かったことは、やれるだけのことをやるしかないということ。そして、そのやれることを増やすために自己研鑽をするしかないということです。

ですから、最近では傷ついて浴びるようにお酒を飲んでいる暇があったら、勉強やnoteの記事を読んで1mmでも成長するように努力、そしてまた努力。そのかいあってか、お酒に逃げ込まずにいられています(笑)

そして、これからも一緒に戦ってくれる仲間に尊敬と期待、そして感謝を伝え続けたいと思っています。皆さまもコロナの影響で大変かもしれませんが、ぜひがんばってくださいませ。

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