昨今の「異業種転職」と注目の「新職種」
column vol.433
コロナで社会が変化する中、転職を考えている人が多いというのは、以前のコラム記事でもご紹介させていただきました。
では、どの業界に人材が流れていくのか?
転職サービス「doda」を運営するパーソルキャリアが異業種転職について調査した結果がとても参考になったので、共有させていただきたいと思います。
4年間で伸びた異業種転職とは?
パーソルキャリアが転職求人倍率の平均が高かった2016年度とコロナ禍であった20年度における「異業種転職」と「異職種転職」の実態を調査。
4年間で比較すると、異業種からの転職受け入れ率が最も上昇した業界は「IT/通信」でした。
〈ITmediaビジネスオンライン / 2021年9月22日〉
20年度における異業種からの転職は57.5%で、16年度と比較し9.9ポイント増加。予想通りではありますが、その理由の1つに「未経験採用枠を増やしている」ことも上昇率アップの要因になっているようです。
それにより、プログラミングスクールなどで基本スキルを体得後、未経験での転職を目指す人が多くなっています。
続きまして、上昇率2位は「金融」。
20年度の異業種からの転職は60.2%で、16年度の51.4%と比較して8.8ポイント増加。「金融」の中でも「生命保険、保険代理店」が最も異業種からの転職を受け入れ、全体の53.0%を占めました。
「生命保険」はストック型のビジネスモデル(サブスクリプション型)で、景気後退局面で安定的な収入が得られる特徴があります。
そして上昇率3位は、「メディカル」でした。
20年度の異業種からの転職は65.2%となり、16年度の58.1%と比較して7.1ポイント増加。この分野もコロナがあってますます注目されましたね。
そして、「100年人生」「超高齢化社会」ということを考えても、先行き人材が求められることは間違いなさそうです。
コロナ禍で「ミドル層」が増加
異業種転職について、気になってdodaのサイトを覗いてみると別の調査では、30歳以上の異業種転職が増えていることが分かりました。
〈doda Webサイト / 2021年8月30日〉
こちらは、2020年7月~2021年6月の間にdodaエージェントサービスを利用して転職した約30,000人のデータから「異業種転職の実態」を明らかにしたもの。
それによると、「30~34歳」「35~39歳」「40歳以上」の3つのカテゴリーで、前回調査(2019年7月~2020年6月)から割合が増えています。
doda Webサイト
3つのカテゴリーの前回との比較を見てみたいと思います。
「30~34歳」…(前回)22.1% → (今回)23.0%
「35~39歳」…(前回)12.0% → (今回)12.4%
「40歳以上」 …(前回)14.5% → (今回)15.8%
全年代で「異業種からの転職」の割合は高まっていますが、そのなかでもミドル層以上の増加幅がひと際大きかったことが、この結果につながったと予想されています。
また、転職成功者の平均年齢自体が高くなってきていることも結果と関連していると示唆されております。
転職を考えてなかったとしても、ミドル層の人間としては若干ニンマリしてしまいます。
これから人材の流動化、多様化が進めば、異業種の経験値は貴重だと捉えられていくかもしれません。
最近、経営を司る自分の中でも、イノベーションを起すためにも異業種の風は欲しいと感じております。
今後の転職業界の動向はますます気になりますね。
注目の新職種「ソートリーダー」とは?
最後にマーケティングに従事する方には、特に知っていただきたい新たな職種(役割)があります。
その名も「ソートリーダー」。
ソートとはThought(考え)、つまり「特定の分野において、ある考えを提唱し、リーダーシップを発揮していくこと」を生業にしています。
〈NIKKEI STYLE / 2021年9月12日〉
そのときに提唱する考えが、「新しい」ものであることがとても重要で、まだ世の中に知られていないことを先駆者として発信し、新しく大きな市場を作って先行者利益を得ることが仕事になります。
例えば、コロナでテレワークが普及したことでソートリーダーはこんな働きをします。
テレワークが普及
→ 多くの企業が情報セキュリティー対策を強化しなければならない
→ 企業にセキュリティー対策の重要性を訴え、ビジネスチャンスを生み出す
今までも商品マーケティングにおいて、まだ顧客が気づいていないニーズを発掘するという考えはありました。
それを商品ではなく、より大きな範囲で実践するのがソートリーダーシップということになります。
「市場」を創り出すのが次世代マーケティング
今までも既存市場から新市場がたくさん生まれてきています。
DVDのレンタル → ストリーム再生の配信サービス
NetflixもかつてはDVDレンタルサービスからスタートした会社だったことは有名な話です。
その新市場を創るということを戦略的に専業として行うわけです。
ソートリーダーの業務プロセスは4つあります。
①経営部門とソートの分野を決める → ②取材や調査を通してソートに関する知見や情報を収集 → ③コンテンツをつくり発信 → ④社内のステークホルダー(利害関係者)と連携し、ビジネス化
続いてソートリーダーに求められる能力を確認してみましょう。
(1)コンテンツを作成する力
(2)メディアやイベントを通じてコンテンツを発信する力
(3)プロジェクトマネジメントを行う力
一歩先を読む力と(1)〜(3)を組み合わせたら次世代マーケターです。
いずれにせよ、今までのマーケティングは既にある市場の中で顧客のエンゲージメントを高めることが主でしたが、「市場を創ること」によりシフトしていると捉えていただければ良いかと思います。
もちろんコロナで大きく社会が変化したこともありますが、その前からもVUCA時代、つまり予測不能な時代と呼ばれていました。
それだけ変化の激しい時代。
嵐のようにうねりを上げる社会の荒波の中で、いかに最適なルートを見つけ、船を進めて行けるか。
より時流を読む目が求められる時代とも言えます。
でも実はこれはマーケターだけではなく、デジタル技術を身に付けるのと同じように「先を読む力」という能力を身に付けると誰もが時代に求められる人材に成長できるという気がしてきました。
そもそも、SNSの発達で誰もがコンテンツを作成し、発信していく世の中になりました。
マネージメント力はどの組織にいても磨くことができます。
あとは時流を読む力です。
例えば、飲食関係の方も、今までは素敵なお店を運営することが生業でしたが、ソートリーダーに求められているエッセンスを組み込むことで、より飲食プロデューサーとして活躍の場が広がるかもしれません。
全ての「今の仕事」にソートリーダーシップをプラスすることで、次世代人材にトランスフォーメーションできるのかもしれない。
…と、期待しちゃう今日この頃です。