「若気の至り」を愛す
column vol.634
気がつくと来週はもうゴールデンウィーク…。
新入社員の入社式を行ったたのが昨日のようで、月日が進む早さに恐れすら感じます…(汗)
あっという間の1ヶ月でしたが、連休に入るとそろそろ新人の人たちは理想と現実のギャップを冷静に感じ始める時期なのかもしれません。
俗に言う「五月病」です。
鬱々した想いの根源は、それぞれの方で違うかもしれませんが、今日は「自分が良いと思った企画・アイデア・意見が全然通らないぞ」と思っている方のための回にしたいと思います。
株式会社学研ホールディングス代表取締役・宮原博昭さんは新入社員に求める「3つの素養」の一つに「とんがった人間になる」ことを挙げています。
〈東洋経済オンライン / 2022年4月4日〉
宮原社長といえば、約20年続いた同社の経営低迷期に社長就任し、そこから苦難の道を経て、同社を12期連続増収、7期連続増収増益へと導いた敏腕経営者さんです。
どんな教えがあるか気になりますね。
新入社員は「とんがれ」
とんがるよりも、丸くなった方が協調しやすく、摩擦も起きにくい。しかし、それゆえの危うさをこのように語っています。
それでは市場で戦って勝ち進むことはできないし、真にクリエーティブな仕事も望めない。そのままでいたら、会社ごと路頭に迷うことにもなりかねない。
だから、もっと強く自分を主張してほしい。
コラムで何度もお話しするように今は予想不能な「VUCA」時代です。
過去の成功体験を踏襲していては企業は衰退のリスクに直面するはずです。「前例主義」からの脱出。
新入社員もさることながら、我々大人も新人が持つイノベーションの芽を摘み取っては命とりです。
私が新人に一番何を求めたいかと問われるならば、「新しい風」となって欲しい。固定観念がない真っ新な視点で理想を語り、行動して欲してもらいたいのです。
上司は職位を権威と見ず、新しい芽を大切に育む役割であると捉え、なるべく風通しの良い環境をつくり出し、新旧のそれぞれの良さを融合していく。
そのことでイノベーションが促進されるので、VUCA時代においてはその方が得策です。
当然、「若気の至り」を起こせばフォローする。
失敗を許容し、次の糧にするよう導いていくことが上司の果たすべきことだと私は感じています。
上司は「壁」を操ること
ちなみに、宮原社長はカマスについての興味深い実験を行っています。
大きな水槽を透明なガラス板で仕切り、片方にカマスを、もう一方に小魚を入れると、どうなるのか?
当然、カマスは小魚を食べようと迫ります。
しかし、ガラス板があるので小魚には届かず、何度か阻まれているうちにカマスは小魚を食べることを諦めてしまう。
興味深いのは、その後ガラス板を外しても、カマスは小魚を食べようとはしないのです。
宮原社長はこのカマスの姿に、30代以降の既に「諦めてしまっている人材」の姿を重ねています。
上司(組織)は諦め人材をつくってはいけません。
一方で、何でも好き勝手させるわけにも当然いきませんので(笑)、クライアント(お客さま)への第一関門としての壁の役回りもしないといけません。
ただ、それはその部下の力量を見定めて、ギリギリ乗り越えられる壁である必要があります。
つまり、部下の本気と限界を引き出す。
運動でも優秀なトレーナー(インストラクター)は、「スピード遅いよ」など時に煽り、「まだまだイケるよ」と時に励まし、この本気と限界を引き出すのが上手い。
部下一人では引き出せなかった力を引き出しつつ、同時に企業の信頼を守るためのケアも行う。
しかし、気をつけなければならないのが「必ず超えられる壁」であることです。最後まで突破させないと部下はカマスになってしまう。
十分、本気と限界を引き出したら、それがまだまだ未完であっても、必ず最後はクライアント(お客さま)にぶつけさせることが重要です。
そこで上手くいなかったら、またフォローする。そうすることで部下は最大限成長し、自分自身も上司としての器が大きくなっていく。
相互成長の理想形です。
何歳になってもありたい「若気の至り」
ある意味、常に新しいことに挑戦する人は、初めてのことに挑戦する以上、失敗はつきもので「若気の至り」と後に呼ばれる可能性は高いと言えます。
しかし、前例主義からの脱却が必要な昨今において、いくらキャリアを重ねても常に「若気の至り」を引き起こしてしまうような挑戦を行っていなければ企業は衰退していくでしょう。
もはや、「若気の至り」が標準化モデルとなった時代とも言えるのではないでしょうか?
ちなみに、アメリカの人材市場調査会社「Monster Intelligence」の2022年最新調査で導かれたこれからの時代に必要なソフトスキルは「コミュニケーション」「問題解決能力」「自立・信頼性」の3つが挙げられています。
〈AMP / 2022年4月5日〉
これらは常にチャレンジし続ける人にしか磨かれない能力であると感じます。
社員全員が年相応の「若気の至り」を繰り返しながら、支え合う組織をつくることが柔軟に時流と併走し、魅力的な提案を世に届けられる企業であり続けられるではないでしょうか?
私個人も、50代になっても、60代になっても、人生を全うするまで、振り返ればどの年代の自分に対しても「あの頃は若かったなぁ(笑)」と笑って話せる自分でありたいと思う今日この頃です。
新人の皆様、若気を胸に挑戦を楽しんでくださいませ。
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