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「ブランド・アクティビズム」が差をつくる

column vol.680

来週の月曜日に全社ミーティングで今期の方針を語ることになっているので、今週は経営者モード全開なのですが、企業を導いていく上でふと頭に浮かぶ事例があります。

2018年、ナイキ「JUST DO IT」30周年キャンペーン広告についてです。

アメフト選手コリン・キャパニックさんを起用したことで話題になったあの出来事です。

キャパニックさんは2016年、試合前の国歌斉唱中に人種差別の抗議を行ったことで、NFLを事実上追放されることになったのですが、同社はその行動に賛同を示し、広告モデルを依頼したのです。

当然、ナイキは当然多くの批判を受けました…。

しかし、同社はこの批判をもちろん予想していたでしょう。そして、ここに時代のキーワードが見えてくるのです。

消費者は企業を「正義」で選ぶ時代

広告では「何かを信じろ。たとえ、それで全てが犠牲になるとしても(Believe in something, even if it means sacrificing everything)」という強力なメッセージを発信。

〈HUFFPOST / 2022年6月5日〉

保守派を中心にナイキの商品を燃やすなど過激な行動に出る人もいたのですが、やがてナイキを支持したミレニアル世代を中心に「買い」が優勢となり、ナイキ史上最高値の株価を記録。

この広告は、マーケティング誌「アドバタイジング エイジ」の最優秀マーケティング賞にも選出されました。

この現象から何が見えるのか?

重要なキーワードとなるのが、本日のテーマである「ブランドアクティビズム」です。

ブランド・アクティビズムとは、企業がそれぞれの信念パーパス価値観に基づいて、社会が直面している最も緊急の課題の解決に必要な変化を促すために、自らの立場を明確にすることを指します。

上述の通り、消費者は企業それぞれの正義に共感し、商品を購入する傾向が強まっています。

人種問題の繋がりで言えば、最近の代表する事例が2020年のBLMを発端にした「バイコット運動」でしょう。

買い物で「支持」を表明

バイコットの「バイ」は「Buy」「買う」ことを意味しています。

つまり、「ボイコット」の反対の意味を表す造語です。

当時、BLMに賛同し、行動した企業に対して、消費者は「買い物は投票だ」と、運動を支持する企業の商品を購入することで自らの意思を表明しました。

Instagram上では消費者が「#blackowned」「#BuyBlack」といったハッシュタグをつけて投稿。

黒人経営のブランドや店舗をリストで示した投稿につけられることが多く、このような店やブランドで買い物をして支援をしようという動きが見られたのです。

一方、生半可な気持ちで企業姿勢を示すと、逆に叩かれてしまいます。

「真正性(本物であること)の担保」が必要であり、長期的なコミットメント(約束)が求められます。

「発信だけではなく、行動で示し、インパクトを生み出しているのか」「矛盾した行動はないか」など、敏感な消費者によって吟味されることになるのです。

これは世界的に見て、その傾向は年々強まっている感じ、日本でも徐々にその兆しは見えてきています。

コトラーが示す根拠

ブランド・アクティビズムの重要性は、近代マーケティングの父、フィリップ・コトラー博士も示唆しています。

全ての企業は「Common Good(全ての人にとって利益になること)」を追求する必要があり、「Value Proposition(自社にしか提供できない顧客に対する価値)」だけでは消費者の心は掴めないと語っております。

自社の企業活動以外に「(世の中を良くするために)何をしているのか」を積極的に世の中に伝えていくことも、マーケティング戦略の視点においても重要視されると指摘しているのです。

ナイキの事例の際、触れましたミレニアル世代についても、コトラーさんは「社会意識の高い世代」と評価。

日本でも同様の傾向があると言われており、ミレニアル世代とその次のZ世代労働人口の過半数を占めるようになる2025年は一つのターニングポイントになるという意見も聞かれます。

ここ最近の事例として挙げられるのは、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の前会長が女性軽視発言について。

スポンサー企業のコメントは早い段階でSNSメディアを通じて可視化されたことは記憶に新しいところ。

パラダイムシフトは近づいていると感じます。

ブランド・アクティビズムの6つの要素

ちなみに、コトラーさんはブランド・アクティビズムへの取り組みについて、6つの要素を挙げていらっしゃいます。

図1

Social(社会)」、「Legal(法律)」、「Business(ビジネス)」、「Economic(経済)」、「Political(政治)」、「Environmental(環境)」。

「Social」は、LGBT、人種、年齢など平等などの社会問題について。

「Business」「Economic」は近しい印象を持たれると思うのですが、前者「企業のガバナンス」に関する問題についてで、後者は貧富の差など「社会全体で共有する課題」を指しています。

6つ全てに取り組めという話ではなく、自分たちがどんな社会を目指したいかを明らかにし、その関連する項目に力を注いでいくということが望ましいとされています。

先ほど日本でもブランド・アクティビズムの傾向は見られると話したものの、まだまだ全体で見れば、センシティブな問題として扱われているのも現状です。

しかし、4年前ナイキが示す覚悟を見て、何かを感じとった方も多かったのではないでしょうか?

「戦わない」ブランドは選ばれなくなる

ハフポストが示す世の中は確実に近づいているのかもしれませんね。

経営を考える度に、いつも考えさせられます。



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