「市民の声を活かす」の一歩先
column vol.1126
昨日は、電鉄各社の「地域共生」についてご紹介させていただきました。
小田急電鉄が開発した自治体専用SNSの事例では、「孤立社会」の解消への期待が膨らみました。
地域の情報をリアルタイムで共有できる。
さらに考えを一歩進めると、「地域の声を市民みんなで共有できる」ことにつながっていくのではないかと期待しています。
よく「市民の声を活かした街づくり」というスローガンを耳にしますが、なかなか市民としてそれを実感することはありません…
(…私がちゃんと調べてないのもあるのですが…汗)
一方、日常的にスマホで自分たちの声が、どのように行政に届き、どのように反映されているのかが可視化できるとしたら、いかがでしょうか?
そんな理想のカタチを実現している海外の事例があります。
それは、インドネシアのジャカルタで州政府が推し進めている「スマートシティ構想」です。
市民の声を官民で共有化
このプロジェクトに欠かせない民間企業があります。
同国のスタートアップ企業の「クルー(Qlue)」です。
クルーが市民に提供するスマホアプリでは、交通渋滞やごみ問題などの市民の困りごとを気軽に政府へ報告できるようになっています。
例えば、市民が破壊された道路を見つけた場合、クルーのアプリに画像をアップロードすれば、簡単に州政府に伝えられるのです。
そして、報告内容は関連する地方公共団体に自動的に転送され、その後の対応状況を追跡することも可能。
州政府の担当者は対応状況を画像とともにシステムにアップロードすることが求められ、対応状況は他の市民もモニタリングできる仕組みになっています。
つまり、「市民の声→政府のアクション」というプロセスを官民共に共有できるというわけです。
ザ・透明性のある行政と言えますね😊
また、この透明性は市民の多面的で柔軟な考え方を磨くことにつながるでしょう。
なぜなら、何かを改善するにあたって、改善することでハッピーになる人もいる一方、アンハッピーになる人が生まれる可能性もあるからです。
さまざまな立場と考えを知る
例えば
という悩みがあったとします。
事故を起こした当事者は、「歩道に余裕があるのだから、もっと自転車がすれ違いやすいように車道を広くしろ!」と怒り混じりに言ったとします。
しかし、今まで歩道が広いかったことでベビーカーを手にしてても安心して歩けていた子育て夫婦にとっては、アンハッピーな状況になってしまいます…
キャッキャッと友達とふざけながら登校する小学生たち対してもリスクが高まるでしょう…
何か都合をつけると、何か不都合が生まれてしまう…
しかも、大体のことは、こんな分かりやすい二者択一ではなく、さまざまな都合・不都合が複雑に絡み合います。
当然、調整して結論づけるには時間がかかる。
時間がかかれば、改善要求をした人(事故当事者)からすれば
と、また別の不満が生まれてしまう可能性もある…(汗)
これだと、行政の方がなるべく不満が出ないように解決しようと思うほど悲しい話になりますね…
ということが見える化できれば、改善要求者の視野(理解)を広げることにもつながるが期待できます。
もちろん、改善のプロセスがオープンになることで、行政側の短絡的な決断を防ぐことにもつながるでしょう。
日本でもより包括的な街づくりへ
今後、AIの力で、同じような問題に対しての他事例(解決事例)の共有や、最適解の提示など、さまざまな利害を内包した結論も出しやすくなっていくことが予想されます。
行政だけで結論がまとまり切らなければ、市民による投票もデジタル上でスムーズにできるようになってもいくでしょう。
もちろん、そんなに簡単なことばかりではないですが、少なくとも、さまざまな立場、さまざまな意見に触れることで、より多面的なものの見方や柔軟な考え方が磨かれていく。
実は、日本でも愛知県南知多町でクルーを活用した住民活動の促進に向けた実証実験も行われています。
これは、人口減少や空き家率の高さなど、多種多様な地域課題に頭を悩ませている同町をスマートタウン化して解決していくというもの。
ドライブレコーダーの映像をAIで解析し、道路などの公共インフラの破損箇所を検出するというような、効率的かつ低コストのインフラ管理モデルを構築しています。
また、日本企業によるバックアップの動きも見られます。
例えば、2021年に「KDDI」が「KDDI Open Innovation Fund 3号」を通じてクルーに出資。
翌年には、グローバル展開する経営コンサルタントファームの「ICMG Partners」が出資を行っています。
クルーのデータソリューションを使えば、リアルタイムで渋滞情報を可視化できるので、データをもとに配送業者が配送計画をつくることが可能に。
より効率的な配送を実現することができます。
また、人流データをもとに小売企業が出店計画を立案し、より効果的な立地に出店をすることもできます。
アプリで集めた市民の声を活かすことは、ビジネスにおいても大きな力になってくれるわけです。
ということで、本日はDXの推進により一歩進んだ「市民の声を活かした街づくり」についてご紹介させていただきました。
テクノロジーの力を使いながらも、多面的な視点と柔軟な考えを人間が磨いていくことで、より包括的な街をつくっていけるかもしれません。
そして、そんな社会を支えてくれそうなスタートアップが日本にも数多生まれてくれたらと期待しています😊
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