ビジネス起点の「やさしい街」
column vol.1189
本日は、「インパクト投資」を行っている支援機構の方に明日お会いするため、業界について情報収集を行いました。
その中で興味深い企業を見つけたので、共有させていただきます。
ゼブラ企業に投資と経営支援を行う「株式会社ゼブラ アンド カンパニー」です。
〈Forbes JAPAN / 2024年1月4日〉
という方もいらっしゃると思いますので、まずはそちらの簡単なご説明をさせていただきます。
まずインパクト投資とは、財務的リターンと社会的リターンの両立を目指す投資のカタチ。
そしてゼブラ企業とは、事業を通じてより良い社会をつくることを目的とした企業のことです。
経済的利益と社会的利益の両輪経営を、2色の組み合わせであるゼブラに喩えています。
評価額10億ドル以上・設立10年以内の未上場ベンチャーであるユニコーンとは一線を画しているわけです。
そして、ゼブラ企業を支える同社が昨年、地方の不動産開発を中心とした街づくりを行う「株式会社ニューローカル」に出資。
この2社の街づくりに、未来へのヒントがあるのです。
「地方の成功」を「未来の成功」に
ニューローカルは、不動産の開発・運営をベースに、地方のプレーヤーと一緒に会社をつくって、街づくりを実施。
現在は長野県野沢温泉・御代田町、秋田県男鹿市の3つの地域で活動しており、今後5年間で10地域、総額100億円程度の規模を目指しています。
収益は宿や飲食店の売り上げから、コンサル、住宅の販売に至るまで多岐に渡るので、ディベロッパーに近いビジネスモデル。
というミッションを掲げ、人口減少が進んでいく中、どうやって未来に対して希望を持つのかというシナリオを描いているのです。
逆にいえば、地方で成功モデルを生み出すことができれば、日本だけではなく世界各国にとっても希望の光になります。
次に、ゼブラ アンド カンパニーについて。
同社が投資するカタチを欧米では「プレイスベースドインベストメント」または「プレイスベースドインパクト投資」と呼んでいます。
こちらは、地域においてさまざまなステークホルダーとビジョンを共有しながら必要な投資を行い、地域内で相乗効果を生み出しています。
そんな2社のコラボなわけです。
フォーブスジャパンの上記のリンク記事で、ニューローカル代表取締役の石田遼さんが、1つの理想的な街の在り方としてこのように仰っています。
幸福を追究した、成長ではなく成熟に軸を置いた街。
その起点をビジネス(企業)が担っている。
この石田さんのメッセージを読んで、ある記事を思い出しました。
ビジネスは「最大の自分事化」
それが、スーモジャーナルの【コンビニが撤退危機だった人口減の町に、8年で25の店がオープン。「通るだけのまち」を「行きたいまち」に変えたものとは?】という記事です。
〈SUUMOジャーナル / 2023年11月6日〉
こちらでは、長崎県東彼杵町にある交流拠点「Sorrisoriso(ソリッソリッソ)」の事例が紹介。
こちらの交流拠点は8年間で50人以上の移住を受け入れており、新しいお店が約25店舗オープン。
Sorrisorisoは今、年約2万7000人が訪れる場所として注目を集めているのです。
こちらの施設は森一峻さんが代表理事を務める一般社団法人「東彼杵ひとこともの公社」が運営しています。
そして、森さんはこのような考えを持っていらっしゃいます。
自営業者にとって、街に活気があるかどうかは自分の店の経営にダイレクトに影響します。
だからこそ、街のことも自分事として捉えることができる。
同じベクトルを持てる自営業者同士がコミュニティをつくれば、街の活動が盛んになると思ったというわけです。
Sorrisorisoでは、起業したい人が小さく自営業を始めることのできる仕組み「パッチワークプロジェクト」を実施。
お店が成功するか否かはやってみないと分からない部分がありますので、開業のハードルを下げるべく、まずは施設内のスペースを貸して商いを始めてもらい、お客さんがついたら独立してもらう。
いわば「開業養成所」というわけです。
このプログラムがあることで、多くの成功が生まれ、ここから巣立ったお店が街の中で新しく開業し、パッチワークのようにつながっていきます。
そして、地元の自営業者はというと、先ほどお話しした通り、「自分事」として新規参入者を支援する。
空き物件を紹介したり、情報発信をしてお客さんとつないだり。
店名やロゴを一緒に考えるなどしているそうです。
無償で支援するは、魅力的な店が増え、街が活性化すれば、多くの人が集まり、利益の好循環が生まれるからです。
実際、街の噂を聞きつけ、佐世保市内で営業していた飲食店が、こちらへ移転してくるということがあるとのこと。
さらに、お店だけでなく、ライターやフォトグラファーなどクリエイティブな仕事をする人たちも集まってくる。
どんどん街の魅力が高まり、その魅力が発信されていくわけです。
小さなスケールを大切にする
冒頭にご紹介したゼブラ アンド カンパニーの代表取締役、田淵良敬さんの話に戻りますと、このようなコンセプトを掲げています。
今までファイナンスの分野では、ユニコーン企業のような会社に投資して、大きくスケールさせることが理想のゴールとされてきたわけですが
小さくてもビジョナリーでソーシャルインパクトを強く意識した投資の在り方が未来を変える可能性を示しています。
この言葉は、私は街づくりそのものにも言えるのではないかと感じたのです。
街づくりは大きなスケールで考えるものという固定観念がありました。
しかし、たった一人の「こんな素敵な店が街にあったら良いな」をつなぎ合わせ、パッチワークのように街をデザインする。
そうした小さなスケールを組み合わせることで生まれる大きなインパクトもあるのでしょう。
例えば、困っている友達のために店をつくった方もいらっしゃいます。
〈FNNプライムオンライン / 2023年12月6日〉
札幌市中央区にあるカフェ「byme」のオーナー、水野莉穂さんは1歳の子を持つ友達のためにお店をオープン。
友達はお子さんを保育園に預けて社会復帰をしようと考えていたそうですが、まだ離れたくないという思いが強くなり、悩んでいました。
そこで水野さんは「子供を連れて働けるカフェ」をつくることにしたのです。
このお店は働き手に嬉しいだけではなく、地元のママさん(お客さん)の「心の居場所」にもなっています。
水野さんのこのような想いが詰まったカフェなのです。
私は以前、大阪にある高槻阪急の子育て世帯のコミュニティスペース「たかつきけやきパーク」のコンセプトづくりのお手伝いをしたことがあったので
〈高槻阪急 / Webサイト〉
その時に「心の居場所」の大切さを実感することができました。
今後は単身で暮らすご高齢の方など、さまざまな方々にとってのオアシスがこれまで以上に必要な社会になっていくでしょう。
そんなヒントになる本日の事例記事でした😊
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