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これからの雇用は「熱中」がカギ

column vol.431

昨日は起業副業といった「社員の自立」についてお話しさせていただきましたが、最近は雇用のカタチ自体も以前と変わってきています。

今、話題の中心にあるのが「ジョブ型雇用」ですね。

ジョブ型雇用とは、企業が人材を採用する際に職務勤務地時間などの条件を明確に決めて雇用契約を結び、雇用された側はその契約の範囲内のみで働くという雇用システム。

そのため別部署への異動や他拠点への移動転勤はなく、昇進降格も基本的にはありません。

ジョブ型においては、「昇進」「採用」は本質的には同じ。

今より上のポストに移りたいならば、そのポストが空くのを待って自分から手を上げなければならないのです。

世界ではスタンダードの雇用形態ですが、日本でも採用され始めた主な理由を4点挙げさせていただきます。

(1)専門的な人材の不足
(2)「終身雇用制度」「年功序列型の賃金制度」の維持が難しい
(3)テレワークの普及
(4)「同一労働同一賃金」の導入

従業員側には「決められた業務に専念できる」「転勤や異動がない」「スキルを伸ばせば、報酬も高められる」というメリットがあります。

しかし、「ジョブ型雇用=会社に頼らない生き方」という覚悟が当然必要になります。

ジョブ型雇用の「現状」

まずは、ジョブ型雇用の現状を確認してみましょう。

パーソル総合研究所の調査(2020年12月25日〜2021年1月5日)によると、ジョブ型人事制度をすでに導入している企業は18%導入を検討している(導入予定含む)企業は4割近くに。

特に企業規模が大きいほど導入検討企業が多く、従業員1,000人以上では40%を超えています

〈BUSINESS INSIDER JAPAN / 2021年9月24日〉

働く人の支持率も高く、エン・ジャパン「『ジョブ型雇用』実態調査」(2021年8月6日発表)によると、この制度に対し76%「良いと思う」と回答。

ただし、ジョブ型雇用という言葉と意味を知っているのは14%にすぎなかったそうです。

つまりは、何となくポジティブな側面だけで判断しての76%だったということですね。

「安住なき世界」

しかし当然、ジョブ型雇用になれば、長期雇用の保証はなくなります

さらに、新卒一括採用でOJTや研修で社員を育てるという環境から、自分のスキルやノウハウは自身で磨くことになっていきます。

年齢を重ねた社員が一見優位に見られますが、もちろん能力が陳腐化していけば、生き残ることはできません

非常に「自律型(自己研鑽型)」雇用制度なのです。

当然、経営者側としても、優秀な人材はバンバン引き抜かれますし、今までよりも組織の一体感をつくるのが難しくなります。

いずれにせよ、「ジョブ型雇用は移行したい」というより「移行せざるを得ない」というのが本音でしょう。

従業員側だけではなく、経営者側も今までは従業員のロイヤリティに甘んじていた部分があったわけですので、双方ともに甘えが許されない状況になっているのです。

ジョブ型雇用というのは現状の社会(経済)の表層を表しているのに過ぎず、本質的には企業も個人も「自立(律)」が求められているという認識が必要となります。

「個人事業主化」の現在地

「自律型キャリア」ということで、5年前、センセーショナルな話題をさらったのがタニタの「社員の個人事業主(フリーランス)化」制度です。

〈NIKKEI STYLE / 2021年9月17日〉

希望した社員が一旦退職して、個人事業主として会社と業務委託契約を結び直すことで、働く人の「主体性」を高めることを目的としています。

働き方改革というと「時間」にフォーカスされがちですが、「働きがい」を主役に考えていくというのが同社の狙い。

つまり、被雇用者ではなく、自分自身が経営者として自己裁量の権限を創出する機会をつくるということですね。

もちろん、社外の仕事も積極的に行うことができます。

初年度8人からスタートし、5期目の今年は31人と個人事業主契約をしているとのこと。

ジョブ型雇用個人事業主契約について個人的に感じる一番重要な点は、社内ではなく「社会」を見るようになるということです。

今までの雇用形態は、ただただ目の前の仕事に専念すれば良かったと言えますし、同僚との比較だけで済みました。

しかし、自律型キャリアは「社内で生き残る」から「社会で生き残る」に変わります。

それだけ視野は広く視座は高くなるので、より時流を意識し、時代に即した人材が育まれていくのではないかと思っています。

「社内起業」に一番必要なこと

会社に属していながら「社内起業家」として活躍するというのは、1つの大きなやりがいでしょう。

ロート製薬では、ユニークな社内ベンチャー制度を採用。「社会課題を解決したい」という社員の想いを具現化し、実際に事業化に挑戦する機会を与えています。

〈ITmediaビジネスオンライン / 2021年6月25日〉

「明日ニハ」と呼ばれるこの社内ベンチャー制度は2つの特筆すべき条件があります。

1つは、会長や役員だけではなく全社員が審査員であること。

もう1つは、賛同した社員から社内通貨による出資を得られなければプロジェクトが成立しない、というクラウドファンディング形式であること。

プロセスは

(1)「エントリー」
(2)「プレシード」
(3)「シード」を通して熱意や事業の実用性、収益性、計画の詳細に対すして明日ニハ事務局の審査を受る
(4)「ピッチ」で全社員に向けプレゼンを行う
(5)「アーリー」へと進んで会社設立
(6)「ファースト」で事業の継続判断
(7)「セカンド」で黒字化を目指し運営をスタート

という7ステップ。

カギを握るのは(4)「ピッチ」で、ここでいかに全社員に熱意を伝えられるかが大切になります。

結局最後は、熱意

今まで個人としても、会社としてもやったことがないことに挑戦するわけで、上手くいかなくて当たり前

五里霧中の中、試行錯誤しながら成果を生み出していくためには、よっぽど「叶えたい気持ち」がないと続きません。

明日ニハのリーダー市橋さんも熱意を持って社外チャレンジワークに挑戦し、クラフトビールの醸造所を創設。

土日に全勢力を注いだ「ゴールデンラビットビール」は、17年インターナショナルビアカップ銅賞18年大阪府知事賞、市長賞のW受賞獲得という快挙を達成しています。

土日の努力が実を結び、世界3位になっているのは凄いこと。その原動力「面白い」と感じる“想い”だったそうです。

夢中になれる人のパワーってめっちゃ大きいんですよ。だって『好き』を仕事にしているんですから」

市橋さんの言葉に触れていると、結局、これからの仕事に一番必要なことは仕事に「楽しさ」を重ねていくことのように感じます。

ただただ自律型キャリアと言われても、ちょっとジンドイ…。

それよりも、趣味や遊びのように「夢中」をどうつくれるかが、これからの仕事において何よりも大切になりそうです。

自分自身もnoteで毎日夢中に「時流」を語っていることが、日々のマーケッターとしての仕事に好影響を与えていると感じています。

さらに夢中になれるトリガーをどう意図的につくり出すか、引き続き前向きに夢想してみたいと思います。

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