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リーダーこそ逃れたい「忙しい」の呪縛

column vol.428

「池、お前は良いリーダーになりたいなら、忙しいと絶対に言うなよ

20代の頃、当社の社長から言われた一言なのですが、考えてみると社長が「忙しい」と言っているのを見たことがありません

どう考えてもパツパツに見える時でも、常に余裕の雰囲気を醸し出している。

私はまだその境地には立てていませんが、とても重要なことだとは思っています。

それを表す事例があったので、記事に合わせて語らせていただきます。

なぜ、忙しいと言ってはいけないのか?

『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』では、1万8000人のビジネスパーソンをAIが分析し明らかになった、優秀なリーダーに共通する習慣を紹介。

著者であり、働き方改革の支援会社であるクロスリバー社長の越川慎司さんが113名のトップ5%リーダーにヒアリングしたところ、衝撃的だったのは、誰一人として「忙しい」と発言しなかったそうです。

〈東洋経済オンライン / 2021年9月17日〉

もちろん、リーダー中のリーダーの方々が忙しくないはずなんてありません。実際、スケジュールを15分刻みの設定にしている方も多い状況。

しかし、過密なスケジュールの中でも、打ち合わせが入らない時間をわざとつくり出している方が多いそうです。

この理由は、メンバーから「気軽に話しかけられる時間」をつくっているとことが分かったそうです。

話しかけやすい雰囲気が良いチームワークを生む。

自分から積極的に話しかけることよりも、話しかけられやすい雰囲気をつくる方が大切で、そのためにはいかにメンバーの前で余裕を見せるかが重要というわけですね。

冒頭の当社社長の話が繋がります。

リーダーは忙しくあってはならないワケ

もう少し「リーダー×忙しさ」を掘り下げていくと、なるべく忙しさから逃れる意識が重要だと思います。

アメリカやアイルランドの経営大学院で講師も務めているリーダーシップ分野のコンサルタント、ジャン・ラザフォードさんは、リーダーにとって「忙しいことは良くないこと」だと明言しています。

〈Forbes JAPAN / 2021年9月20日〉

ラザフォードさんは、陸軍の中尉に昇格したあるエンジニアの方の事例を紹介しています。

中尉が橋の建設を監督することになった時のこと。

その方は模範を示すことで部下を率いることができると考え、すぐに部下と一緒に泥と汗にまみれ、現場作業を始めました。

しかしそこに現れた上司は、中尉を高台の木陰に連れて行き、作業を見るよう言ったそうです。

「ただ見ているだけなんて、部下からサボっていると思われちゃう」

中尉はそう思ったかもしれません。

しかし、高台の木陰から現場を眺め、驚愕の事実を知ることになります。

橋、、、間違った場所に建ててるやん……

自分にしかできないことをする

この逸話を見て、前職時代の上司であるMさんを思い出しました。

Mさんは私が所属していた部署の営業部長だったのですが、とにかく本職の方のように怖い…。

そのMさんは私たち制作チームが作った版下を手にすると、私たちが何度も見直した紙面から、いくつもの誤字脱字、罫線ズレなどを見つけ出すのです。

しかし、Mさんはクライアントからの修正指示や資料などを一切見ていないのに、あまりにも的確に見つけ出し、私たちを怒鳴りつけました。

「何で、時間も労力もかけていないはずなのに、こんなに間違いを的確に見つけるんだろう」

新人の頃の私はとても不思議に思っていました。

何か校正の極意があるのかもしれません。ただ…聞きたいけど、怖くて聞けない…。

しかし、飲み会の席で思い切ってMさんにその極意を聞いてみることにしました。

すると、Mさんは私を睨みつけ、このように答えたのです。

「あぁぁ、アレね…。適当に眺めているからだよ」

思わず絶句する私にMさんは

「お前たちは全員一生懸命確認している。だから俺は適当に眺めるようにしている」

要は我々は集中するあまり視野が狭くなったり、不安になり何度も読み直す度に思い込みで読んでしまうことがあるのです。

だからこそ、適当に見る。

このことが別の視点をつくり出し、結果として私たちが見落としていたものを見つることに繋がっていたのです。

メンバーの足りていない部分を補足し、あとはリーダーならではの仕事に集中する。

まさに、集中と選択

リーダー(上司)の仕事は、なかなかメンバーからは理解されません。だからこそ、メンバーが分かる「忙しさ」に逃げ込んでしまう…。

忙しくないと思われても、いかにリーダーならではの仕事に時間を費やせるか。それがリーダーとしての心構えとして重要ですね。

「働かない部下」への苛立ちから逃れる

今度はメンバー側の話に移してみたいと思います。

2:6:2の「パレードの法則」のように、組織には働かない社員が少なからずいるものです。

パレードの法則を象徴するアリの世界では、なぜ働かないアリが生まれるかが判明されてきています。

〈YAMAKEI ONLINE / 2021年9月13日〉

理由は、ズバリ「組織としての余力」を残しているから。

アリの世界も、予期せぬ事態が起こり、その対応をしないとコロニーにとって大きなダメージになることもあるのです。

このことを生物学では「予測不可能性」と言います。

突然現れたエサに対しても余力部隊がいてこそ回収できる。突如壊された巣の修繕も同じです。

会社でも働き者だけが集まり100%の力で仕事を回していたら、新規の仕事は受けられないですし、そこで無理に頑張ったところで、力を十分には注げなく既存も新規も落としてしまうかもしれません。

アリの世界にも、ほとんど一生の時間を働かず、ふらふら歩いているアリもいるそうです。

会社でも「あの人、ふらふらしていて、何してるんだろう?」と思われている人がいますよね?

しかし、そんな人も何かの偶然で新規の繋がりをつくったりもする。皆と行動を共にせず、ふらふらしているからこそ出会うチャンスもあるのです。

だからこそ、リーダーは組織を総和で考える。そして「忙しい」信仰から逃れて本質的な成果にコミットしていく。

忙しさが美徳になりがちな社会だからこそ、常に確認しておきたいことですね。

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