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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2021年7月の記事一覧

『哲学の女王たち』

『哲学の女王たち』

(レベッカ・バクストン+リサ・ホワイティング編・向井和美訳・晶文社)
 
正直、私もひたすら頭を垂れるほかない。女性哲学者の名を挙げてみよ。片手の指にも満たないのだ。情けない。本書から刃を突きつけられているまさにその一人となってしまった。
 
ここには20人挙げられている。徹底的にフェミニズム精神に満ちた本、というような先入観をもつ人には、「まえがき」で先制攻撃が始まる。プラトンの『国家』に女性の

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『疫病の精神史』(竹下節子・ちくま新書・2021年6月)

『疫病の精神史』(竹下節子・ちくま新書・2021年6月)

カトリックでの宗教文化とくればいま一番脂ののった論者かもしれない。パリ在住で、ヨーロッパの今にも詳しい。キリスト教文化についての分かりやすい著作が近年多く、信頼性も高い。このちくま新書からも、『キリスト教の真実』と『女のキリスト教史』が先に出されており、興味深く読ませてもらった。ズバッと言い切ってくれるところなど、むしろ清々しい印象すら与えるものである。
 
この新型コロナウイルスで日本もだが、欧

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『100年前のパンデミック』(富坂キリスト教センター・新教出版社・2021年6月)

『100年前のパンデミック』(富坂キリスト教センター・新教出版社・2021年6月)

こんな本を求めていた。新教コイノーニアシリーズの1冊である。2020年に世界に広がった、新型コロナウイルスの嵐の中で、医療関係のことを常々思うと共に、教会というもののあり方や方向性を考えなければならないと考えていた。そのとき、やはりひとつ気になるのは、過去の経験である。以前の似たような体験のときに、人々は、教会は、どう反応し、どう対処したのだろうか。それは大いに参考になるし、知恵となると思ったのだ

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『老い』(ボーヴォワール・100分de名著2021年7月)

『老い』(ボーヴォワール・100分de名著2021年7月)

関心のない人には気持ちが向かわないテーマかもしれないが、高齢化社会となっては、関心のある人のほうが多いだろうとも言える。しかも講師が上野千鶴子氏。女性問題についてのみならず、社会問題への発言力からしても、最高度のレベルを提供してもらえそうな期待ができる。これを「過激」だなどというと、むしろ、ではあんたは何をしているのか、と問われそうな気もする。
 
ボーヴォワールに戻ろう。そもそもボーヴォワールが

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