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哲学のかけら

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哲学も少しはかじっています。なにもそんなこと考えなくてもいいんじゃない、と言われるところも、でもさ、と考えてみる、それが哲学。独断と懐疑に終わらずに常に自分の至らなさを認めるあた…
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#芸術

音楽について考えるひとつの入口

音楽について考えるひとつの入口

息子たちが、私のできなかったことをやろうとする。それを見るのは、頼もしくもあり、ありがたくもある。哲学に興味をもっており、とくに音楽というものについて、関心が強いようだ。同時にそれは、芸術や文化というものについて、思いを懐いているということでもある。
 
音楽は、時間と共に成立する。絵画のように、静止画像でそこにある性質のものではない。もちろん、静止画でも、それを眺める側には時間が発生している。が

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齋藤亜矢『ルビンのツボ 芸術する体と心』より

齋藤亜矢『ルビンのツボ 芸術する体と心』より

何気なく迎えているつもりの朝だが、考えてみれば、目覚めるという保証はどこにもない。たぶん、目覚めるだろう。だが、睡眠中に命を失うケースもあると聞く。分からない。一寸先は闇とは思わないが、人間が決めてしまうことはできないのである。
 
「恐怖」という心的現象をもとに、それが「美」へとつながることを、芸術と感覚というテーマで記した人の文章が、中三生の模試に出題された。レベルの高い生徒たちのクラスのため

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『「美味しい」とは何か』(源河亨・中公新書)

『「美味しい」とは何か』(源河亨・中公新書)

サブタイトルの「食からひもとく美学入門」は、まだよかった。帯に「ラーメンは芸術か?」と書いてある。これが一冊を貫いているところにまでは、読む前には気づかなかった。とにかく、ラーメンで話を押し通すのである。ラーメンに関心のない人は、読むのが辛かっただろうと思う。
 
議論は読みやすい。何が論点であるか、それに対して自分はどう思うか、これについて明確に打ち出していくからだ。新書もここまできたかと思わせ

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