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【365日のわたしたち。】 2022年5月20日(金)

さっきから、何もしていない。

パソコンを開いて、温かい飲み物を横に置き、準備は万端なはずなのに。

頭に何も浮かんでこないのだ。


物書きをしていると、時々このようなことが起こる。

いつもは、パソコンの前に座った瞬間、頭の中で登場人物が勝手に動き出す。

俺はその人物の行動をなぞって文章に落とし込んでいく。

俺の仕事は、そういう仕事。



しかし、今日は全く何も起こらない。

頭の中の登場人物が動かないのではない。

頭の中に登場人物さえも浮かばないのだ。



何も生み出さない時間が無駄だというのなら、

俺はこんな無駄な時間をこれまで何度となく繰り返してきた。


そして、言い知れない恐怖に襲われるのだ。

明日も、

明後日も、

明明後日もこの状態が続いたらどうしようか、と。

そしたら俺はきっと、物書きをやめなきゃいけなくなるんだろう。

そしたらどうしようか。

俺はもう30年近く、この仕事しかしてきていない。

今から、どこかの企業に就職することはできるのだろうか。

できて、アルバイトだろうか。

いや、50も過ぎた未経験のおっさんを雇ってくれるアルバイトなどあるだろうか。



そんなことを妄想していると、50歳を過ぎただらしないおっさんが、頭の中にポンと登場した。

そして、必死で履歴書を書いている姿が浮かんできたのだ。

しわくちゃで、汚れのついた履歴書。



お、いいぞいいぞ。

その調子だ、頑張れ。


俺はパソコンのキーボードの上の指をぱちぱちと動かし始める。

おじさんの行動を文章でなぞっていくのだ。



こうして俺は今日も、命拾いする。


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