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誰かの人生に出会うこと

京都に行ってきました。バースデーランウェイを見るために。

ずっと応援してきたイベントをようやく見ることができました。

『バースデーランウェイ』とは?

ファッションではなく
夢を追う人の人生を表現するランウェイショー。
バースデーランウェイは、諦めきれない夢を持った七人が新しい自分に踏み出すためにランウェイを歩くプロジェクト。当日までの一年間で、自分自身に向き合い、叶えたい夢への決意を表現する。それぞれが「思い描く未来」をテーマに、衣装やヘアメイク、照明、映像などの舞台演出を制作し、その演出の中でランウェイを歩く。

バースデーランウェイ2022より

2022年12月17日開演18:00 終演19:00
たった一時間のために、一年間をかける人たち。
そんな舞台を私は見たことがありません。

それが一体どういうものなのか? 実際に見てみたいと思ったのです。

◇ ◇ ◇

私が興味を持ったのは2年前。優花さんの記事に出会ったのが最初です。

想いの強さだけで書き上げたような記事に惹かれました。優花さんはバースデーランウェイを本格的なイベントにするために挑戦していました。

一年間自分に向き合って得たものをランウェイでどうやって表現するのか?
その想いを受け取ることができるのか?どんな舞台なのだろう?
この挑戦を応援したい。バースデーランウェイをいつか見てみたい。

あれから2年。ようやくその舞台を観ることができました。

バースデーランウェイでは、ランウェイを歩く方を表現者と呼んでいます。
今回のテーマは「諦めきれない夢があるから」。
約60名近くの応募の中から3度の選考を経て決定した表現者7名。

このイベントがユニークなのは、当日のランウェイショーだけではなく、それまでの約一年間も含めてバースデーランウェイとしていることです。

ワークショップなどを通して夢や未来に向き合うのですが、そのためにはまず自分自身と深く向き合わなければいけません。それがつらい思い出を呼び起こすこともあります。悩み、立ち止まり、自分をみつめる一年間。
その姿はnoteやInstagramで発信し続けられました。

バースデーランウェイの良さはスタッフの温かさとその情熱にあります。
表現者さんそれぞれに担当マネージャーがいたそうです。いわば二人三脚の伴走者として寄り添っていたのではないかと思います。
主催者の優花さんを始め、企画運営、映像制作、衣装制作、ヘアメイク、ウォーキング講師、音響、照明、舞台監督など様々な人たちがひとつのチームとなって、このイベントを成功させようと努力していました。

noteを読めば分かるのですが、自分と向き合うのは表現者さんだけではありません。スタッフの方も同じテーマで記事を書いていることがありました。きっとワークショップでも同じようにされてたのでしょう。同じ目線に立って「思い描く未来」を探そうとしている姿勢に心を打たれます。

バースデーランウェイは、新しい自分に踏み出すためのプロジェクトです。
それは表現者さんだけではなくスタッフの方も同じなんだなと感じました。

◇ ◇ ◇

このバースデーランウェイを見るのに、ためらいもありました。
関係者でもない自分が見てもいいものか? そう思ったのです。
みんなが大事につくりあげたものを、私が見てもいいのだろうか?

それでも優花さんから、ぜひ見に来てください!と言ってもらえて、見に行くことを決めました。このイベントを見るために京都に行く計画を立てたのは、それからすぐのことです。

◇ ◇ ◇

バースデーランウェイのnoteをあらためて読むことにしました。スタッフの方が、バースデーランウェイをエンタメと表現してるのを見つけて、このイベントは楽しんでいいんだ!と気がつきました。どこか堅苦しく考えてたけど、表現者もスタッフの方も、エンタメを届けようとしている。それを当日のショーで受け取ってみたくて、noteに書いてある記事を全部読みました。
そのほうがより楽しめると思ったからです。

バースデーランウェイのnoteを読んで感じたことを列記してみます。
(以下バースデーランウェイをBDRと呼びます)

・『コーラスライン』が好きな人は、BDRも好きかもしれない
 舞台に立つまでのそれぞれの人生模様が描かれる点が共通している。

・演劇集団キャラメルボックスのファン層とBDRは親和性が高そう
 キャラメルボックスの演劇は "人が人を想う気持ち" がテーマ。
 役者だけでなくスタッフも含めてひたむきに作品に向き合うところ。
 役者・スタッフ・ファンとの一体感や温かさを感じられるところ。

・時間を注ぎ込む。情熱を傾ける。そこに価値を見出せる人たちが集う場所

・人生の一時期をBDRで過ごして通過(卒業)していく
 当日のランウェイは卒業式のような特別な時間になりそうな予感。

・自分を好きになること。自分を大切にすること。それが大事だと思える

バースデーランウェイのnoteを読んだ感想です。
いろんな人たちが登場する一冊の本を読むようにnoteを読み終えました。
この続きが当日のランウェイかと思うとワクワクしたのを覚えています。

◇ ◇ ◇

バースデーランウェイ当日。
あれこれ予想して臨んだのに、いい意味で驚きの連続でした。

会場のロームシアター京都ってこんなに大きかったのか!
メインホールではないけど、それにしてもすごい。
こんなに本格的なイベントを今まで応援してきたんだ。全然知らなかった。

結論を先に書くと、予想をはるかに上回ってすべてが本格的でした。
ランウェイを歩く表現者さん。スクリーンの映像も、音楽も、照明も。
「思い描く未来」を表現するために。全力で。
そのすべてがカッコ良かった。

当日まで私には分からないことがありました。ずっと疑問だったことです。
ランウェイを歩く人を見るだけで果たして感動できるのだろうか?
叶えたい夢を表現しても、それをどれだけ理解できるだろう?
そう思っていたのです。実際にこの目で見るまでは。

心配は杞憂でした。スクリーンに上映される映像パートがそれを補ってました。インタビューを中心にまとめられた映像はいわばドキュメンタリー。それがあってから表現者のランウェイが始まる構成になっていました。
なるほど。これならそれまでの一年間を舞台で表現できるわけだ。

前半の映像パートと後半のランウェイパート。それをつなぐのが「未来コンセプト」。バースデーランウェイの核と呼べる部分です。

 "思い描く未来"を言葉で表現したそれぞれの「未来コンセプト」

誰かと比較する自分を変えて
「今の私」を越えていく

|夢|きっかけを与える役者になる|さきさん|

誰かに愛情を注ぐように
自分の心にも癒しと愛を

|夢|心理カウンセラーになって幸せを感じながら生きる人を増やす|tamaさん|

過去の自分を切り離し、
寄り添う中で、私が何者かを知っていく

|夢|家庭環境で苦しむ子どもの未来を創る|まことさん|

私の世界はドラマチック
もっと私は自由になる

|夢|多彩に表現する女優になる|はるかさん|

夢を叶えるための新しいステージ
挑戦を重ねて理想の私へ

|夢|イメージコンサルタントになる|ゆかこさん|

今持っている力を信じて
みんなを私の世界へ
巻き込んでいく

|夢|2.5次元の舞台俳優になる|みのりさん|

完璧じゃなくても大丈夫
私らしい正解を見つけて
ワクワクする人生を歩む

|夢|自分のことを好きになる|かえさん|

バースデーランウェイは「言葉」を大事にしています。
言葉の力を信じている。そこが大きな特徴だと思います。

"思い描く未来"を言葉で表現することの難しさ。
自分と向き合うことで見えてくるもの。それを言葉に紡ぐこと。
簡単にできることではなかったと想像できます。

ワークショップや担当マネージャーとの面談を通して未来コンセプトをつくるまでが前半パートなら、それをどう表現するかが焦点となる後半パート。
当日のランウェイショーは、そんな一年間を再現したかのようでした。

ドキュメンタリー映像の前半パートが終わると、
「未来コンセプト」の言葉がスクリーンに表示されて、
表現者が舞台にあらわれてランウェイを歩く後半パートへ。
7名のターンそのすべてが目をみはる出来栄えでした。

たった一時間で、表現者7名のそれぞれの一年間が表現されている。
これはまさしくエンタメです。

もうひとつ。私が当日驚いたことを書きます。
noteに書かれた表現者さんとスタッフの顔・名前やプロフィール、そして記事の内容も読み込んで、当日のランウェイショーに臨んだわけです。
準備は万端。どんな舞台になるだろう。自分なりに想像をめぐらしました。

会場で配られた、「未来コンセプト」を表現する衣装やヘアメイク、照明・演出のモチーフの説明を読みながら、さらに想像をふくらませたりして。

ところが、表現者さんたちは私の想像をはるかに上回って登場しました。
これには本当に驚かされました。

どうしたらこんなに堂々とランウェイを歩けるんだろう?
どうしたらこんなにいい表情ができるんだろう?
自分が自分でいるためにここにいる。
この感動をどうすれば他の人に分かってもらえるだろうか。

noteを読んで覚えたその人のイメージ、ドキュメンタリーで流れる映像。
本番はそのどれとも違って、そのギャップに驚かされました。
それまで抱いてたイメージを飛び越えてくる感覚というのか、
そんな経験めったに出来るもんじゃない。圧倒されました。

バースデーランウェイ最大のエンタメ要素はきっとここにあります。

いっぽうドキュメンタリーの映像パートには泣かされました。
それぞれが抱えている事情があって、それでも前を向こうとしていて。
口から発する言葉には、その人のそれまでの人生が反映される。
インタビューで表現されていたのは、自分と向き合った時間の深さです。
それを感じられたのは、とても貴重な経験でした。

… 熱く語ってしまいました。すみません。

◇ ◇ ◇

公演終了後、ロビーで優花さんと少しだけ話すことが出来ました。
noteで知り合った方と会うのは、これが初めてです。緊張しました。
感想もうまく言えなかった。情けない。
「みんなカッコ良くて、きれいで…」そう言うのが精いっぱいでした。

◇ ◇ ◇

【 後日談(翌日の話)】
自分にとってこのバースデーランウェイとは何だったのか、公演が終わってからずっと考えていたけど、そのときはよく分かりませんでした。
来てよかった。すごいものを見た。それは間違いないのだけど。

その答えは、翌日意外なところで見つかりました。
京都現代美術館で開催されていた「エリオット・アーウィット展」で。

美術館長の寄稿文に思わず立ち止まって何度も読み返しました。
私を惹きつけたのはこんな言葉でした。

シェイクスピアの「人生は舞台、人はみな役者である」という名言のように、一人一人が、自分の人生という舞台の中に生きている。その一瞬と永遠を、ドラマティックにファインダーに収めるエリオットは、時代に生きる全てのものの生命を、見つめ続けている写真家に違いない。写真に写された物語に耳を傾けることは、見知らぬ誰かの人生に出会うことである。

京都現代美術館長 梶川 芳友 寄稿文「一瞬の劇場」より

そうか、私は昨日、誰かの人生に出会ったのだな。
その場限りであったとしても、その人の人生の一瞬に触れたと感じられた。
そのことがとても嬉しかったのでした。

◇ ◇ ◇

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