見出し画像

スポンサー付き読書

当時ブログに書いた文章をnoteに載せてみたくなりました。

=2004.02.23の記事=

「スポンサー付き読書」

2月17日付の読売新聞に面白い記事が載っていました。「活字文化推進フォーラム」の講演で、井上ひさしが「ことばの誕生と読書」というテーマで話した一節です。ヨーロッパで流行っている「スポンサー付き読書」について紹介してます。

山本麻子さんの「ことばを鍛えるイギリスの学校」(岩波書店)によると、長期休暇の前に子供が「私はこの休みに『ドン・キホーテ』を読みます」という宣言をし、近所のおじさんおばさんと 読み終わったらお金をくれという契約をする。

休みが終わった後、本当に読んだかどうか試験する会が開かれる。町のおじさんとか司書さんとかいろんな人が並ぶ机の前に『ドン・キホーテ』を読んだという子供が入ってくる。そしてその子に 読んでいないと絶対に答えられない質問をどんどんしていく。

試験官が確かにこの子は読んでいると判断した場合には紙にサインをして、この子は約束した人々からお金を集めることが出来る。でもその子がもらうのは一部で、残りは病院に入院している同じ年ごろの子供たちの治療費に回される。

この記事を読んだときおもわず唸ってしまいました。考えれば考えるほど良く出来た仕組みだと思います。この記事を読んで、お金目当てに本を読ませるなんて!と思う方もいるでしょう。

でも考えてください。お金をいっさい子供に渡さないで育てるなんてできません。金銭感覚というのは社会生活を送るうえで必要なものです。それなら子供への上手なお金の渡し方を積極的に考えてみる価値はあるのではないでしょうか?

お小遣いというのもひとつの手です。計画的にお金を使うことを学べます。しかしなんでこんなにお小遣いあげるの?と疑問符を付けたくなる親もいます。そう考えると「スポンサー付き読書」があってもいいと思えませんか?読書という何がしかの対価としてお金がもらえるわけですから。読書というのはそういう意味では安全で健全な労働だと捉えることもできます。

この「スポンサー付き読書」は別に大金が手に入るわけではありません。その子の手に入るのは一部で、残りは寄付されるわけですから。

これに参加する大人もただ子供にお金を出すだけではなく寄付することにつながり、社会的に意義のある活動ができます。そしてもうひとつのメリットは地域の活動に参加できること。近所の子供たちとコミュニケーションを取ることができます。

今の時代に不足しているのは、世代間を超えたコミュニケーションです。小中学校でお年寄りと交流を持つ取り組みが少しずつ始まってますが「スポンサー付き読書」も面白い試みになるのではないでしょうか?

コミュニティとコミュニケーションを同時に実現するユニークな発想です。

それよりなにより私がやってみたいのです。近所の子供たちが緊張で顔を真っ赤にしてカチンコチンになってる姿はきっと微笑ましいだろうし、質問に答え終わってホッとした表情や無事に成し遂げた誇らしげな顔は見ていてこちらも嬉しくなるはず。そのために使うお金なら惜しくありません。

その子たちが未来を明るく変えてくれるなら、その一助になるならこれ以上の幸せはないと思えました。

※「スポンサー付き読書」はあくまでも読書に興味を持つためのきっかけ。子供も大人も本を手にするきっかけになるし、そこから会話も広がってゆくことでしょう。

この記事が参加している募集

#おうち時間を工夫で楽しく

95,494件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?