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森水学園 用務員・杜用治さんのノート

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森水学園第三分校( https://nikko.city/morimizu/ ) の中のコーナー「用務員・杜用治さんのノート」から選んだものをこちらにも載せています。 Kindl…
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「現実」とは何か?

「現実」とは何か?

森水学園本校校舎がまだあった当時、校舎には杜 用治(もり・ようじ)さんという用務員さんが常駐していました。
用治さんがどういう経緯で森水学園本校校舎に住み込むようになったのか、今となっては事情をよく知っている者がおりません。学園長の森水生士は、「特に雇ったということはないんだがなあ……」と、のんびりしたことを言っていたようです。
森水学園は私塾ですから、普段、生徒が通ってきているわけではありません

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『神は成長する』進捗状況(2)

『神は成長する』進捗状況(2)

日々劣化速度を増していく我が脳みそと馴れ合いながら(?)、『神は成長する』は現在400字詰め換算で(古いな)百数十枚といったところ。
そのうちのごく一部をここに転載して、自分へのゴール前鞭としておきます。

「意識世界」と「物理世界」の関係

 ここからは、一つの意識が生成する個々の世界を「意識世界」、意識世界が多重に重なり合った世界の総体を「物理世界」と呼ぶことにする。
 この思考モデルをさらに

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ぷちぷちサミットがアサブロでも読めるようになりました

ぷちぷちサミットがアサブロでも読めるようになりました

noteだと、すぐに冒頭にウザイ警告が自動的にくっつくので、ぷちサミはhttps://jomon.org/ の他に、アサブロの「アラン・イシコフの備忘録」でも読めるようにしました。

「別の世界」での生活が始まっていた

「別の世界」での生活が始まっていた

今まで漠然と、あるいはあたりまえだと感じていた世界観、というか「社会」感が、この3年でガラッと変わってしまった。
SNSでのおつきあいも、どんどん表面的になり、あたりさわりのない話題や写真、動画をUPして、ときどき「いいね」が押されるだけの場になった。
思考を鍛える方向の文章は敬遠され、あるいは最初の数行で「またか」と無視される。
というわけで、これからは大切なことは「日記」にしか書かないことにし

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『用務員・杜用治さんのノート』を書籍化

『用務員・杜用治さんのノート』を書籍化

もう5月も後半戦。連休後のこの時期は軽く遠出するのにいちばんいい季節なのだが、歳のせいか、社会情勢のせいか、気持ちが盛りあがらない。無理して出かけることもないしなあ……と思っていたら、お仕事の話が舞い込んできて、ちょっと驚いた。
秋には食料・エネルギー危機やら物価高騰、あらゆるものの品不足、物流停滞やらなにやらで、世の中えらいことになっているだろうし、これから気持ちをしっかり持つだけでも大変だなと

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そして私も石になった(23) 目覚めと眠り

そして私も石になった(23) 目覚めと眠り

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目覚めと眠り
 Nの言葉に出てきた「祈り」という言葉には、ある種の優しさが感じられた。
 俺は素直な気持ちでこう訊いた。
「そろそろ教えてくれないか。あんたらは一体何者なんだ? 神ではない。人間やGのような生物でもない。確か肉体を持っていないと言っていたような気がするが」

 Nは穏やかなトーンで答えた。
<そうだね。きみたちが言う「肉体」は持っていない。でも、きみたちがイ

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そして私も石になった(22) 宗教は「複層的世界観」を持てるか

そして私も石になった(22) 宗教は「複層的世界観」を持てるか

宗教は「複層的世界観」を持てるか

「今あんたが言った『説明できない何かを感じる能力』とか、それを求める精神というのは、『祈り』という行為につながっているんじゃないのか?」
 俺はNにそう問いかけた。

<祈り……か……>
 Nはその後の言葉を言いよどんだ。珍しく、考え込んでいるようだった。
 しばらくして、Nは再び語り始めた。

<「祈り」という言葉は、人間の歴史の中では宗教というものと深く結び

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そして私も石になった(21) 「終末」の迎え方 ~個人として、社会として

そして私も石になった(21) 「終末」の迎え方 ~個人として、社会として

「終末」の迎え方
「人間社会が終わることは仕方がない、というのは分かった。でも、その最後が、Gの思惑通り、計算通りというのが気に入らないな」

<悔しくて、死ぬに死にきれないか?>

「そうだな。俺はどっちみちもうすぐ死ぬから、この世の終末とやらは見届けないで済むだろうよ。でも、あんたの話を聞いたことで、穏やかな気持ちで死ねなくなったじゃないか。さっき、あんたは、俺が人生の最後の時間を、新しい感覚

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そして私も石になった(20) AIが地球の未来を決める?

そして私も石になった(20) AIが地球の未来を決める?

AIが地球の未来を決める?
<ところで、地球型生物が本来持っている本能的な感覚と対極にあるものはなんだと思う?>
 Nはそう振ってきた。

「本能と対極にあるもの? データや方式に基づいた計算……かな」
 俺はほとんど即答した。

<その通りだ。理詰めの計算。間違えることのない計算。それを可能にするものがコンピュータだね。
 Gはもちろんコンピュータを使っているわけだけど、機械はいつかは劣化して使

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そして私も石になった(19) 唯物論的世界観と「複層的世界観」

そして私も石になった(19) 唯物論的世界観と「複層的世界観」

「複層的世界観」を呼び覚ませ
 量子論のことを思い出したことで少し冷静さを取り戻した俺は、Nにこうリクエストした。
「複層的な世界観とか、単相の物質世界とか……あんたの言いたいことはなんとなくは分かる。いや、分かる気がするが、もう少し分かりやすく説明してくれないか」

 俺が拒絶の壁を取り外したと感じたのか、Nも心持ちゆったりした調子で話を続けた。

<今の人間社会は唯物論的世界観に支配されている

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そして私も石になった(18) 「優秀な人間」に従うという集団自殺?

そして私も石になった(18) 「優秀な人間」に従うという集団自殺?

緩やかな集団自殺?
 ここまできて、俺はもはやいちいち反論する気力も理由も失っていた。
 ただただ虚しさを感じるだけだ。
 黙り込んだ俺を哀れに思ったのか、Nはこう言った。

<そんなに落ち込むことはないよ。
 人が人を殺すという歴史は太古の昔から今まで、延々と続いてきた。今に始まったことじゃない。
 この計画には、殺す側と殺される側の関係が見えてこないという巧妙な仕組みがある。
 ウイルスやワク

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そして私も石になった(17) 「常識バイアス」とは何か

そして私も石になった(17) 「常識バイアス」とは何か

「常識」とは何か
「大体のところは分かった。でも、にわかには信じられないな」
 俺としては、そう言うのが精一杯だった。

<信じる必要はない。いや、簡単に信じてはいけない。とことん考えてみてほしいんだよ。
 人が信じる信じないという言葉を使うときは、背後に「常識」というものが存在している。疑いようのないこと、あるいは疑ってはいけないと認識されている情報や解釈。
 でも、この世界に「常識」と呼んでい

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そして私も石になった(16) 計画を悟られず、ゆっくり進めるための仕掛け

そして私も石になった(16) 計画を悟られず、ゆっくり進めるための仕掛け

計画を悟られず、ゆっくりと進めるための仕掛け
<さて、ここからが問題だ。
 ただインフルエンザウイルスを使うだけでは、計画が完璧に進むかどうか分からない。
 というのは、ウイルスは絶えず変異するが、その変異の仕方をGも完全には計算しきれないからだ。
 ウイルスが環境中に放出された瞬間から、ウイルス自身がまるで意志を持ったように変化していく。その変化の仕方は、気温や湿度といった自然環境だけでなく、感

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そして私も石になった(15) これから起きること

そして私も石になった(15) これから起きること

これから起きること
「10年後くらいに起きる『本番』について、もう少し具体的に知りたいものだな」
 俺はNに言った。

<そうだねえ。我々は神ではないから、未来が見えるわけじゃない。でも、今までの人類史を見てきたから、Gが考えること、仕掛けてくることを予想することはできる。
 今から話すことは競馬の予想のようなもので、その通りになるかどうかは分からないという前提で聞いてくれ。もちろん、競馬の予想よ

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