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【なぜ倒産】失敗にも法則なんて無いと思う

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆

〜「失敗の定石」を引き出す事を目指す〜

この本は、倒産した23社の失敗事例を紹介する事で「失敗の定石」を引き出す事を目的としている。
本書の「はじめに」にはこんな文章がある。

成功事例は、再現性が低いものです。なぜなら、成功はいろいろな条件の組み合わせだからです。
(中略)
対して、失敗事例は再現性が高い。
(中略)
成功はいくつかの要因の組み合わせですが、失敗は究極的には一つの判断ミスによるもの。
(中略)
失敗は原因を特定できる分、ダイレクトに役立つのです。

つまりは、成功の原因は特定しにくいけど、失敗の原因は特定しやすいのであり、失敗にはパターンがある、という事なのだ。
そして、本書は様々な事例からその失敗パターンを炙り出す事を目的としている。


〜運や偶然を度外視している?〜

しかしながら、前述の引用文も含め本書全体として大事な要素が抜けていると僕は思う。
それは「運」や「偶然」の存在である。

僕は、失敗や成功は運や偶然に大きく左右されるものだと考えている。
同じ決断をしても、成功する人と失敗する人がいて、その違いは運や偶然にあると思う。
成功者と同じやり方をして同じように成功しないと思うし(個人的に成功者の体験談や伝記を読むのがあまり好きでは無い理由はここにある)、同様にある人の1つの決断が失敗に繋がったとしても、時とタイミングによっては別の人の同じ決断が成功に繋がることもあり得る。

例えば、本書で紹介される事例として、ある新製品に狙いをつけ、売上のほとんどを工場の設備投資にあてた事をきっかけに資金繰りが上手くいかなくなり倒産に追い込まれた企業の話があったが、「Amazon」は利益のほとんどを設備投資や新規事業の開拓にあてた事でモンスター級の大企業に成長している。
ギリギリの資金繰りを指摘されている企業もあったが、「SHOE DOG」の著者でありNIKEの創業者であるフィル・ナイトは、著書によるとかなり杜撰な資金繰りを行なっていたが、世界的に成功した起業家である。

ある決断で失敗したとしても、それは時とタイミングによるかもしれないし、運と偶然も大いに関係する。
結局のところ、失敗にも法則なんてものはないのではないかと、僕は思うのだ。


〜やっぱり経営者はすごい〜

しかしながら、メディアでは「経営者」といえば、「大成功してるお金持ち」というイメージで取り上げられる事が多いが、本書のような失敗した経営者の話を知るのは非常に興味深い。
経営は難しくておおきなリスクと常に隣り合わせである、という事を改めて感じさせられるし、そんな経営の道に進む経営者たちには尊敬の念を抱かずにはいられない。

そんな経営者たちに対して「この時の決断がダメだったんだろう」というような物言いで取材した本書の記者たちに少し不快感を持ってしまった。

失敗には法則なんて無い、と思う。
僕は経営に携わった事なんて無いが、常に恐ろしいほどのプレッシャーと責任感に晒されている経営者たちに敬意を表したいし、例え失敗に繋がった決断だったとしても、それは決して稚拙な発想から出た決断では無いはずだ。
多分、運や偶然が味方しなかっただけなのだろう。

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